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第13話 朗報
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そして注目の給料日が来た。
例年11月の給料袋の中には冬のボーナスの支給月数が書いたお知らせが入っている。
今年のボーナスは例年の半分と噂されていることもあって、例年以上にすぐ給料袋を手にしたいところだ。
しかし派遣先に常駐の我々のところには、数日遅れで給料明細が届くことが普通だった。
給料は銀行振り込みなので明細が遅れて届いても困るわけではないが今月ばかりは別だ、ボーナスがどうなるのかを早く知りたい。
あれこれ理由をつけて会社に戻る口実を考えはみたが、仕事が立て込んで戻る時間はなかった。
盟友ポンちゃんに聞きたいところだが、彼も派遣に出ているので我々同様すぐに手には入らないだろう。
しかたがない、上司の業田課長に聞くか。
俺とこの人は昔からそりが合わず、俺はこの人を見下し気味の目で見ていたし、向こうも俺が嫌いな様子だった。
だから半年ほど前にこの人が俺の上司になった時は、本当にうんざりしたものだ。
今思えば、派遣嫌いの俺が派遣に出る気になったのも、この人から距離を置きたい気持ちがあったからなのかもしれない。
だからこういったことを聞きやすい相手ではないが、仕方がない。
嫌々ながらかけた電話の向こうで、業田課長は言いにくそうに言った。
「ボーナスか、うーん、昨年の半分だ、寂しいけど。
それと支給日は例年より1週間遅れで12月第2週になるから、そこんとこもよろしくな」
半分と聞いて俺はホッとしたが、横で聞いていた畑田君は「やっぱり半分か…」とがっかりしていた。
俺は半分出れば会社はかなり頑張った結果だと思っていたが、この辺りの受け止め方は人それぞれだ。
畑田君は俺より若く、新卒でこの会社に入ったから俺より社会経験は浅い。
俺のような転職組と違って純粋培養のような面があるから、少し甘さがあるのかもしれない。
俺たちの中で一番情報を持っている浜口課長は、自分の持っていた悪い情報が外れてホッとしていた。
「そうか、山地君は私より会社に戻る回数が多いから、私より新しい情報を持っていたんだね。
半分出るって言った山地君の方が正しくて、私の情報は古かったんだ」
浜口課長はそう分析しながらホッとした表情を浮かべていた。
畑田君はともかく、俺と浜口課長は久しぶりに少しだけ笑顔になれた。
ボーナス半減は痛かったが、でもまあ半分出してくれればありがたい。
しかし、その笑顔は長続きしなかった。
例年11月の給料袋の中には冬のボーナスの支給月数が書いたお知らせが入っている。
今年のボーナスは例年の半分と噂されていることもあって、例年以上にすぐ給料袋を手にしたいところだ。
しかし派遣先に常駐の我々のところには、数日遅れで給料明細が届くことが普通だった。
給料は銀行振り込みなので明細が遅れて届いても困るわけではないが今月ばかりは別だ、ボーナスがどうなるのかを早く知りたい。
あれこれ理由をつけて会社に戻る口実を考えはみたが、仕事が立て込んで戻る時間はなかった。
盟友ポンちゃんに聞きたいところだが、彼も派遣に出ているので我々同様すぐに手には入らないだろう。
しかたがない、上司の業田課長に聞くか。
俺とこの人は昔からそりが合わず、俺はこの人を見下し気味の目で見ていたし、向こうも俺が嫌いな様子だった。
だから半年ほど前にこの人が俺の上司になった時は、本当にうんざりしたものだ。
今思えば、派遣嫌いの俺が派遣に出る気になったのも、この人から距離を置きたい気持ちがあったからなのかもしれない。
だからこういったことを聞きやすい相手ではないが、仕方がない。
嫌々ながらかけた電話の向こうで、業田課長は言いにくそうに言った。
「ボーナスか、うーん、昨年の半分だ、寂しいけど。
それと支給日は例年より1週間遅れで12月第2週になるから、そこんとこもよろしくな」
半分と聞いて俺はホッとしたが、横で聞いていた畑田君は「やっぱり半分か…」とがっかりしていた。
俺は半分出れば会社はかなり頑張った結果だと思っていたが、この辺りの受け止め方は人それぞれだ。
畑田君は俺より若く、新卒でこの会社に入ったから俺より社会経験は浅い。
俺のような転職組と違って純粋培養のような面があるから、少し甘さがあるのかもしれない。
俺たちの中で一番情報を持っている浜口課長は、自分の持っていた悪い情報が外れてホッとしていた。
「そうか、山地君は私より会社に戻る回数が多いから、私より新しい情報を持っていたんだね。
半分出るって言った山地君の方が正しくて、私の情報は古かったんだ」
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畑田君はともかく、俺と浜口課長は久しぶりに少しだけ笑顔になれた。
ボーナス半減は痛かったが、でもまあ半分出してくれればありがたい。
しかし、その笑顔は長続きしなかった。
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