唾棄すべき日々(1993年のリアル)

緑旗工房

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第9話 若手の仕事

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ウチの会社はソフトウエアの開発だが、技術者はシステムエンジニアとプログラマに大別される。

社内開発の場合、顧客である大手電気メーカーやその子会社がまとめた要件定義書を基に、ウチのシステムエンジニアが概要設計書や詳細設計書に落とし込む。
プログラマは詳細設計書を見てプログラムを製造して単体テストまでを行う。

一つのシステムにはプログラムが数十本から数百本必要で、それぞれが関連しあって動くことでシステムの目的を達成する。
単体テストが終わったら複数のプログラムを組み合わせる結合テストを行い、さらに全体を動かす総合テスト、客先でのテスト運用などの順で進んでいく。

ソフトウエアの怖いところは、直接目で見ることができないことだ。
品質を確認するにはテストをするしかないのだが、単体テストが甘くてプログラムがまともに動かないことも珍しくない。
プログラマの力量不足もあるが、単体テストを始めてから設計ミスが判明することもある。
また単体では問題なく動いても結合テストで問題が出たり、総合テストで設計ミスが判明したりもする。
途中で仕様変更があることも多いので、それがミスを増やす要因になったりもする。
単純なミスならともかく、根の深いミスが出ることも珍しくない。
こういったことが重なって、納期直前は残業、休出、徹夜のコンボとなるのが常態化していた。

当然だが、設計をするシステムエンジニアの方が上流工程であり技術力も必要だ。
ウチの場合、まずはプログラマとして経験を積み、3年から5年ぐらいでシステムエンジニアとして設計する側に回る。

1人のシステムエンジニアの設計分は、数人から10人ほどのプログラマで製造する。
つまり中堅社員が1人いれば、数人から10人程度の若手に仕事が発生して若手の飯のタネになるのだ。

しかし不況で社内開発の仕事がほぼなくなたので、若手プログラマたちの仕事が一気に無くなった。
中堅以上は設計だけでなくプログラム製造もできるので潰しが効くのだが、若手はプログラム製造しかできない。
設計からプログラム製造まで1人でやるような小規模な仕事はあったが、若手は設計ができないのでそんな仕事を割り当てることもできない。

不況になる前は若手でも派遣で受け入れてくれるところがあって、派遣先に育てられて一人前になった人も多い。
また中堅とセットで若手を受け入れてくれる派遣先もあり、これまではそうしてでも人手を確保したかったのだ。
しかし不況になってからは派遣需要自体が大幅に減り、中堅どころかベテランでも派遣先探しに苦労する状態になった。
当然、若手を引き受けてくれるような余裕のある派遣先はなくなり、若手に与える仕事がなくなってきた。
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