7 / 53
第7話 派遣と社内開発
しおりを挟む
ウチの会社の業務形態は客先に常駐する派遣と、社内で作業する社内開発に大別される。
この業界は派遣が主流になっているが、派遣は固定収入が得られるし残業分も支払われるから赤字になる心配はない。
大儲けこそできないが、進捗管理なども派遣先が行うので、会社としては手がかからずリスクも少ない。
ソフト屋なんて机と電話があれば開業できる商売だと揶揄されることも多かったが、実際にマンションの一室で営業している会社なんて山のようにある。
たいしたノウハウもなく設備投資もいらないのでから開業のハードルは低く、成長を続ける業界はいつも人手不足感に溢れていたので、独立して開業したという話もよく聞いたものだ。
しかし派遣にはデメリットも多い。
派遣先から貰える金額は派遣する人の学歴や経験年数で決まってしまうので、生産性向上やスキルアップが収入増に結びつきにくいからモチベーションは上がりにくい。
また会社が単なる派遣先紹介屋になってしまうので社員の帰属意識は高まらず、離職率が高くなりがちだ。
技術の蓄積も個人レベルで止まってしまうから、組織としてのノウハウの積み上げや伝承が難しい。
また勤務時間は派遣先に合わせるので、いくらフレックスタイムを導入しても派遣先がそれを受け入れてくれなければ意味がない。
ウチの会社は派遣体質だったが、俺が入社したころには派遣体質から脱して社内開発を主力にする方向を目指していた。
俺が入社して数年後、会社は本格的に社内開発を中心にする方向に舵を切り、開発用大型コンピュータを2台導入するという思い切った設備投資をした。
このおかげでこれまでよりもいい人材が入社するようになったし、単に人材派遣をするだけの同業他社より一歩先を進んだ会社になった。
会社は派遣をゼロにするつもりはなかった。
儲からないが安定している派遣を残すことでリスク分散する意味もあっただろうし、派遣の方が気が楽という人もいたので、その人を繋ぎ止めておく意味もあったのだろう。
またウチの派遣先は大手電気メーカーだったので、派遣先から色々な情報を入手できるのも魅力だった。
そういった事情もあって、ここ数年は全体の2割が派遣、残りは社内開発という比率になっていた。
しかし、この不況で社内開発の仕事が激減、派遣比率を高めざるを得なくなってきたようだ。
俺は派遣というイージーなやり方に頼ることには反対だったし、仕事のたびに通勤場所が変わるのはまっぴらだった。
派遣が嫌だからこの会社に転職してきたのだし、仮に派遣で働くのなら人材派遣専門会社の方が幅広い業種から派遣先を選べるし、社員のフォロー体制もウチよりはましだろう。
当時すでに派遣専門で業績を伸ばしている会社がいくつかあった。
ウチが自社開発中心に舵を切った理由の一つに、いまさら派遣に特化しようとしても派遣専門会社に大きく遅れをとっていて勝てないという判断もあったはずだ。
それなのに今になって派遣比率を高めるというのは苦肉の策という証拠だろうし、この策は一時しのぎでしかないことは会社も分かっているはずだ。
しかし、それしか選択肢はないのだろう。
俺がこの会社を選んだのは、社内開発に力を入れるという方向性を聞いたからだ。
もちろん面接では派遣は嫌だとはっきり伝えたうえで入社した。
でも入社して1年も経たずに派遣に出されるという笑えないオチが待っていたが、俺は事あるごとに派遣は嫌だと主張し続けていた。
それもあってか、入社早々に派遣に出された以外は社内開発ばかり担当していた。
運が良かったこともあるのかもしれないが、会社が俺の希望を汲んでくれたのだろう。
それは俺の技術力をそれなりに評価してくれたことの証拠だと思うし、また社内開発をメインにしていく会社とと俺の意向が一致していたことも大きいだろう。
しかし俺と会社の蜜月時代は、どうやら終わりを迎えたようだ。
この業界は派遣が主流になっているが、派遣は固定収入が得られるし残業分も支払われるから赤字になる心配はない。
大儲けこそできないが、進捗管理なども派遣先が行うので、会社としては手がかからずリスクも少ない。
ソフト屋なんて机と電話があれば開業できる商売だと揶揄されることも多かったが、実際にマンションの一室で営業している会社なんて山のようにある。
たいしたノウハウもなく設備投資もいらないのでから開業のハードルは低く、成長を続ける業界はいつも人手不足感に溢れていたので、独立して開業したという話もよく聞いたものだ。
しかし派遣にはデメリットも多い。
派遣先から貰える金額は派遣する人の学歴や経験年数で決まってしまうので、生産性向上やスキルアップが収入増に結びつきにくいからモチベーションは上がりにくい。
また会社が単なる派遣先紹介屋になってしまうので社員の帰属意識は高まらず、離職率が高くなりがちだ。
技術の蓄積も個人レベルで止まってしまうから、組織としてのノウハウの積み上げや伝承が難しい。
また勤務時間は派遣先に合わせるので、いくらフレックスタイムを導入しても派遣先がそれを受け入れてくれなければ意味がない。
ウチの会社は派遣体質だったが、俺が入社したころには派遣体質から脱して社内開発を主力にする方向を目指していた。
俺が入社して数年後、会社は本格的に社内開発を中心にする方向に舵を切り、開発用大型コンピュータを2台導入するという思い切った設備投資をした。
このおかげでこれまでよりもいい人材が入社するようになったし、単に人材派遣をするだけの同業他社より一歩先を進んだ会社になった。
会社は派遣をゼロにするつもりはなかった。
儲からないが安定している派遣を残すことでリスク分散する意味もあっただろうし、派遣の方が気が楽という人もいたので、その人を繋ぎ止めておく意味もあったのだろう。
またウチの派遣先は大手電気メーカーだったので、派遣先から色々な情報を入手できるのも魅力だった。
そういった事情もあって、ここ数年は全体の2割が派遣、残りは社内開発という比率になっていた。
しかし、この不況で社内開発の仕事が激減、派遣比率を高めざるを得なくなってきたようだ。
俺は派遣というイージーなやり方に頼ることには反対だったし、仕事のたびに通勤場所が変わるのはまっぴらだった。
派遣が嫌だからこの会社に転職してきたのだし、仮に派遣で働くのなら人材派遣専門会社の方が幅広い業種から派遣先を選べるし、社員のフォロー体制もウチよりはましだろう。
当時すでに派遣専門で業績を伸ばしている会社がいくつかあった。
ウチが自社開発中心に舵を切った理由の一つに、いまさら派遣に特化しようとしても派遣専門会社に大きく遅れをとっていて勝てないという判断もあったはずだ。
それなのに今になって派遣比率を高めるというのは苦肉の策という証拠だろうし、この策は一時しのぎでしかないことは会社も分かっているはずだ。
しかし、それしか選択肢はないのだろう。
俺がこの会社を選んだのは、社内開発に力を入れるという方向性を聞いたからだ。
もちろん面接では派遣は嫌だとはっきり伝えたうえで入社した。
でも入社して1年も経たずに派遣に出されるという笑えないオチが待っていたが、俺は事あるごとに派遣は嫌だと主張し続けていた。
それもあってか、入社早々に派遣に出された以外は社内開発ばかり担当していた。
運が良かったこともあるのかもしれないが、会社が俺の希望を汲んでくれたのだろう。
それは俺の技術力をそれなりに評価してくれたことの証拠だと思うし、また社内開発をメインにしていく会社とと俺の意向が一致していたことも大きいだろう。
しかし俺と会社の蜜月時代は、どうやら終わりを迎えたようだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。



会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる