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トイレの痴女

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  ベテラン女優の、年齢を感じさせない20代のような張りのある肌は、余程気持ちよかったのか、その余韻を味わうようにビクビクと震えていた。彼女は腕を男の首に回した状態でただ放心しており、息を弾ませながら、トロンとした甘い目つきで男の顔を見つめていた。
 今、一心に私が見つめている目の前の女優は男性、特に年がそこそこいった大人の男性たちに人気があると聞いたことがあるが、それは女性の私でもすごく理解できた。彼女をテレビや雑誌などで見ていると、美しさをいつまでも保つために並々ならぬ熱意と集中力を持って毎日努力しているのだろうということが、実際に言葉として彼女自身の口から聞かずとも、ひしひしと伝わってくるからだ。単純に私も、最近二十歳を超えた一人の大人の女として、彼女は尊敬できると思っていた。
 ただ、こうして彼女の「裏の顔」を見てしまった今、彼女の髪の毛、肌、身体のラインなどは、違ったふうに見えてしまう。これまで色気の滲み出る「大人の女性の完璧な象徴」としての、最高の身体を形作ってきたのは、こういった決して健全だとは思われない、秘密のみだらな行為の積み重ねなのだという現実をまざまざと知ったような気がしたし、彼女がその美貌にもかかわらず長らく未婚である理由も分かったような気が、なんとなくした。
 しかし、私はそれにふしぎと失望感はなかった。むしろより憧れが強まったような気すらしていた。


「あ~~~~~」
 人の群れの中から熱気を裂くような一際高い喘ぎ声が聞こえ、私はそちらを向いた。
 相変わらずいやらしい単純な動きを繰り返すだけの一枚の絵のように見え、先程まで身体が堪えきれないほどの強い興奮にいたたまれなくなっていたが、いくらか慣れてきたようで、その光景をある程度、冷静に見つめていた
 男の下のモノが女の下のソレに入り、その女の口に別の男のモノ、もしくは女のソレを口にしており、何人もの人間がお互いに肉体の一部を常に飲み込んで全員が繋がり合っているように見えた。またその集団は、鳴り響く音楽の連続的なリズムに身体を任せつつ、一個の生き物として、性の高みに向かおうと汗を流しながら努めているようにも見えた。


 一方、彼女の友人はトイレにおいても「セックス」に悩まされていた。
 彼女が入った個室の隣から、明らかに男女が息を弾ませながら励んでいる声が聞こえてくる。しかも女性の方の声は、特別際立って聞こえた。トイレの狭い空間いっぱいに染み渡るような、透き通るように綺麗な声。それでいて同性の彼女でも興奮してしまうような、アニメに出てくる典型的な痴女のキャラクターのような、露骨な色気に満ちていた。
 そんな誰が聞いてもすぐに声優だと分かるような声が、肉と肉が弾く音に合わせて聞こえて来ていた。もはやトイレだからと言って抑える気のない、快楽にそのまま従ったような声だった。
 彼女は全裸で便座に座りながら、何かに耐えるように口を一文字に結び、ただされるがまま、聞かされるがままだった。
 普段であれば、彼女はボーイッシュでクールな印象を持たれることが多く、よく同性から「かっこいい」とか「イケメン」などと言われている。しかし、今彼女の身体は、まぎれもなく女だった。その証拠に、すでに用は足し終えたはずの彼女の肉と肉のはざまからは、まだ何かが滴り続けていた。
 ほんの数年前の高校の頃まで、一心に部活動に打ち込んでいたおかげで形作られた、程よい固さと、程よい隆起を帯びた筋肉質の身体は緊張と興奮のために別の意味で引き締まっていた。
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