サイバーオデッセイ - バーチャル都市の守護者と精霊たち - (挿絵アニメ)

寄代麻呂人

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第二章 サイボーグたちのバーチャル都市

第10話~テンペランティア~

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二人は老人に感謝し、古い教会の方向へと向かった。教会の周りは静まり返り、薄暗い雰囲気が漂っていた。風が木々を揺らし、葉のざわめきが静寂を破る唯一の音だった。遠くには、未来都市のネオンがぼんやりと輝いている。

フィリル:「ここで待ってみよう。きっとテンペランティアが現れるはずだわ。」

フィリア:「そうね。少し怖いけど、頑張りましょう。」

二人は教会の近くで待ち続けた。時間が経つにつれ、夜の闇が深まり、冷たい風が二人の頬を撫でた。フィリルは不安そうに周囲を見回し、フィリアは手を握りしめていた。やがて、暗闇の中から一人の僧侶の姿が現れた。彼は静かに近づき、二人に声をかけた。

テンペランティア:「私を探しているのか?」

そこに、若いサイボーグの僧侶が立っていた。
未来都市の古い教会のネオンが脈打つ中、彼はそこに佇んでいた。彼の衣装は古の物語を紡ぐような繊細な模様が施された和装というものであろうか、しかし最新の技術が織り込まれている。
その姿は、見る者に無限の想像をかき立てるようだった。都市の喧騒が遠くから聞こえてくる中、彼は静かに立ち尽くしている。まるで時間が止まったかのように静かでありながら、同時にとても強い意志の力を感じる。
彼の衣装には、微細な回路が織り込まれており、光の加減でそれがちらちらと輝く。
袖口や襟元には、古代の文様がデジタル化されて刻まれている。これらのディテールが、彼の存在を一層神秘的なものにしていた。
よく見ると、フィリルやフィリアより見た目は若い。いや若すぎるという印象であった。
しかし、彼の若さは、まるで時間の流れを超越した存在であるかのようにも感じられる。
彼の目は見えていないようだった。彼の目は見えないが、その視線の先には何か見えるのだろうか。

フィリア:「はい、テンペランティアさんですか?」

テンペランティア:「そうだ。」

フィリア:「私たちは、あなたの力を求めてここに来ました。どうか、私たちに力を貸してください。」

テンペランティア:「私の力?私には何も力はない。」

フィリア:「でも、あなたは節制の守護者だとお聞きしました。」

テンペランティア:「確かに私は節制の守護者と呼ばれている。しかし、それは私個人の存在ではない。」

フィリア:「どういうことですか?」

テンペランティア:「私は、この都市の未来を見守る存在だ。」

フィリア:「未来を?」

テンペランティア:「そうだ。私はこの都市の行く末を見守り、必要な時にだけ力を貸す存在なのだ。」

フィリア:「では、なぜ私たちに力を貸してくれるのですね?」

テンペランティア:「いいえ。私が、あなたたちに力を貸すのではない。あなたたちが私に力を与えるのだ。」

フィリア:「私たちが?」

テンペランティア:「そうだ。私が与えるのではない。」

フィリル:「言っていることがよくわかりません。」

テンペランティア:「わからないのも無理はない。君たちは何も見えていないし、何も見ていないのだから。」

フィリル:「意味が分かりません。」

テンペランティア:「私が節制の守護者であることを理解しているのであれば、君たちは七元徳について聞いているとは思う。しかし、守護者の属性アトリビュートについては知らぬようだ。」

フィリア:「アトリビュートって何ですか。」

テンペランティア:「それが分かるようになったら、また私の所にきなさい。そうすれば、君たちはもっと多くのことを知ることができるだろう。」

フィリア:「どうすれば分かるようになるのですか?」

テンペランティア:「では、ヒントを与えよう。その古びた教会を訪ねてみなさい。」

フィリル:「どういうことですか?」

テンペランティア:「それ以上は言えない。自らで考えなさい。それが、君たちに与えられた使命なのだから。」

フィリア:「わかりました。もう一度教会を訪ねます。そこで何かわかるかもしれないわ。」

テンペランティアは、静かにその場を去った。
彼の背中が闇に溶け込むように消えていくのを見送りながら、二人は彼の言葉の意味を考えていたが、何もわからなかった。しかし、彼らは再び教会を訪れることにしたのだった。
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セレステ編
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