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第一章 シーブリーズサンクチュアリの姉妹
第14話~漆黒の女~ (挿絵動きあり)
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怪しい女性:「あーあ、やっちゃったわね。」
フィリア:「誰!?」
フィリアは呆然とした表情で立ち尽くした。目の前の光景を受け入れることができなかったのだ。彼女の周囲には、まるで時間が止まったかのような静寂が広がっていた。その時、背後から低く冷たい声が聞こえた。
フィリアは驚きと警戒心を抱きながら、その女性を見つめた。彼女の周囲には、まるで空気が重くなるような圧迫感が漂っていた。漆黒のドレスは、まるで夜の闇をまとっているかのように光を吸い込み、彼女の存在を一層際立たせていた。黒髪は艶やかで、まるで絹のように滑らかに流れていた。少し赤い瞳は、まるで深い秘密を隠しているかのように輝いていた。
彼女はこの女性がただ者ではないことを直感的に感じ取った。何か得体の知れない力が、この女性から発せられているように思えた。フィリアは一瞬、逃げ出したい衝動に駆られたが、その場に釘付けにされてしまった。まるで見えない鎖に縛られているかのように、足が動かなかった。
女性は黒い扇子を優雅に広げ、ゆっくりと仰ぎ始めた。その動作はまるで舞踏の一部のように滑らかで、見る者を魅了する力があった。扇子の動きに合わせて、周囲の空気が微かに揺れ、焼け焦げたぬるい風がフィリアの頬を撫でた。口元に浮かぶ不敵な笑みは、まるで全てを見透かしているかのようだった。
フィリア:「あなたは誰なの?」
フィリアは震える声で問いかけた。彼女の声はかすかに震え、緊張と恐怖が入り混じっていた。女性は答えず、ただ微笑みを深めるだけだった。その微笑みには、何か底知れぬ恐怖を感じさせるものがあった。まるで全てを見透かしているかのようなその表情に、フィリアの心はさらに乱れた。フィリアは、自分のせいでマルトスが変わり果てた姿になり、茫然となっていた。しかし、それ以上に一部始終を見られていたかも知れないという背徳感と恐怖心とが彼女の心を支配していていた。
女性は扇子を閉じると、静かに言った。その動作は優雅でありながらも、どこか冷酷さを感じさせた。
フィリア:「あなたは何者?どうやってここへ?」
フィリアは叫んだ。その声は部屋中に響き渡り、恐怖と怒りの感情を表現していた。しかし、女性は動じることなく微笑を浮かべたままだった。その微笑みは、まるでフィリアの叫びが全く意味を持たないかのように冷たかった。
怪しい女性:「あら怖い。でも安心してくださいな、私は別に危害を加えるつもりはありませんわ。ただ、その子を助けてあげたいだけなんですのよ。」
フィリア:「え?どういうこと……?」
怪しい女性:「そのままの意味です。私はその子を助けてあげたいだけですわ。」
フィリアはその言葉に戸惑った。この女は何を言っているのだろう?マルトスを救う方法を知っているとでもいうのだろうか?彼女の言葉には一抹の真実味が感じられたが、信じることはできなかった。しかし、今は藁にもすがる思いだった。もし本当に彼女を信じることができるのであれば……、と一瞬、ためらった。
フィリアは覚悟を決めて問いかけた。
フィリア:「この子を助けられるのですか?」
すると、女性は扇子を開きながら答えた。その仕草はまるで彼女の自信を象徴しているかのようだった。扇子の動きに合わせて、微かな風がフィリアの顔に当たり、その感触が彼女の緊張をさらに高めた。
怪しい女性:「ええ、、でもその前に・・・あなたは、その子がサイボーグだって分かった上でこの治療をしたのかしら。」
フィリア:「え?何を言っているの?」
怪しい女性:「では、あなたはこうなった責任を取る覚悟があるのかしら。」
フィリアは一瞬戸惑ったが、すぐに答えた。
フィリア:「ええ、もちろんですわ!私はこの子を助けたい一心で治療をしましたもの!」
しかし女性はさらに続けた。
怪しい女性:「なるほどね・・・でもあなたは知らないでしょうけど、サイボーグっていうのは普通の人間とは少し違うのよ。だから、その子を助けるにはその子にあった治療をしなければいけない。でも、あなたはそれを知っているのかしら。」
フィリアは困惑して、言葉を失った。確かに自分はマルトスの体のことについては、ハーダ様に勝手に行動をするなと釘を刺されていた。この女性に何を言ったところで、信じてもらえないだろう。どうすればいいのだろうか?
フィリアが考えを巡らせていると、怪しい女性が再び口を開いた。
怪しい女性:「良いわ。教えてあげる。サイボーグっていうのはね、機械でできているのよ。」
フィリア:「知っていますわ!それぐらい。」
怪しい女性:「あら、そうなのね。なら話は早いわ・・・じゃあ聞くけど、サイボーグは機械で出来てるのだけど、その構成要素自体から進化したものもいるの。」
フィリアはその言葉に驚きと疑問を抱いた。女性の言葉はまるで謎めいたパズルのようで、フィリアの頭の中で様々な考えが交錯した。
怪しい女性:「電気微生物って知っているかしら。電気微生物はね、電子を食べたり捨てたりすることでエネルギーを得る微生物のことで、その微生物の電気合成生態系を人間に移植させ、構成要素ごと進化した人間もいるのよ。それがこの子ってわけ。」
フィリア:「え!?そんなことが……」
怪しい女性:「あら、そうなのね。じゃあ改めて言うけど、この子の体の構成要素は電子機械で出来てるの。あなたの体は細胞ってもので構成されているわよね。構成要素が違うのだからあなたを治療した方法ではだめなのよ。電気合成生態系のこの子はね。でも、あなたは人間系の治療を彼に施してしまった。だから、こんなになっちゃったの。かわいそうに。」
フィリア:「そんな……。」
フィリアはその言葉に打ちのめされた。自分の行動がマルトスにどんな影響を与えたのか、今初めて理解したのだ。彼女の心には深い後悔と悲しみが広がった。
怪しい女性:「あらあら、そんな顔しちゃって。大丈夫。私が何とかしてあげるから安心してね。」
フィリアは唖然とした表情で女性を見つめた。女性は微笑みながら続けた。その微笑みには、どこか冷酷さと優雅さが混じり合っていた。
怪しい女性:「さてと・・・じゃあまずあなたの記憶を消しましょう。そのほうが手っ取り早いしね。」
フィリアは、その言葉の意味を理解するのに時間がかかった。「記憶を消す?」彼女の声は震え、恐怖が滲み出ていた。
女性は構わず続けた。冷たい笑みを浮かべながら、フィリアに近づいた。彼女の目は冷酷な光を放ち、まるで獲物を狙う猛禽のようだった。
怪しい女性:「そうよ、あなたの記憶を消しましょう!そうすれば何も問題なくなるでしょ?」
フィリアは恐怖に震えながら、慌てて首を振った。顔は涙で、全身は冷たい汗で濡れていた。しかし、彼女はすでに後戻りできない状況に追い込まれていた。
怪しい女性:「大丈夫だって・・・痛くないようにするから安心して。」
フィリアは必死に抵抗したが、その力は次第に弱まっていった。視界がぼやけ、意識が遠のいていく中で、彼女の心には絶望が広がっていた。
怪しい女性:「何も知らないっていうのは、どんなに幸せなことでしょう。
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怪しい女性:「メリッサ」
フィリア:「あぁ、あなただったのね…」
そして、フィリアは意識を失った。彼女の体は力なく床に崩れ落ち、静寂が辺りを包んだ。
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