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EP2. 爛れた彼女たちと生徒会長争奪戦
第三六話 牙を折る
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――はっ!?
……いつから意識を失っていたのだろうか。
俺はソファの上で眠っていたようだ。
いや、転がされていたという表現のほうが正しいのかもしれないが……。
体が重い――と、思っていたら、どうやら俺の上で夏樹先生が寝そべっていたようだ。
いったい、いつからいたのだろうか。
夏季先生は仰向けになったまま顔の前に掲げたスマホを弄っていた。
「んー? 起きたの?」
俺の起床に気づいたようで、先生が首だけ捻ってこちらを振り返ってくる。
ぐるっと室内を見渡してみても、他に人はいないようだった。
シャワーの音はしているが、おそらく姉貴だろう。
壁に掛けられている時計を見ると、22時を示していた。
最後に意識があったときから少なくとも二時間以上は経過しているようだ。
「なんで夏樹さんがいるんですか」
またスマホを弄りだした夏樹先生の頭頂部を眺めながら、俺が訊く。
というか、この人、俺をベッドか何かだと思ってんのか……?
「あら、先生、明日はここから出社するつもりよ?」
答えになってねえ。というか、マジで言ってんのか……。
確かに他の女の子たちと違って先生は親の心配がないので帰宅する必要はないのかもしれないが、教師が生徒の家から登校というのはいささか爛れすぎではなかろうか。
「別にいいでしょ? もう着替えも持ってきてるし、今さら帰るのも面倒よ」
さいですか。
まあいい。どのみち、俺も先生に少し確認しておきたいことがあった。
「なあに? また先生に何か教えてほしいの?」
夏樹先生が俺の上でモゾモゾと体を回し、俺の上でうつ伏せになる。
互いの息がかかりそうな距離感もそうだが、何よりも腹に当たる胸が気になった。
ブラウスごしでも二つの突起が分かる。なんでブラしてないんだよ……。
——いやいや、しっかりしろ、俺。まずは解決すべき問題からだ。
「高橋咲彩のことについです」
「あら、また高橋さん? 随分とご執心みたいね」
まあ、処理すべき問題はまだ残っているからな。
「夏樹さんは、高橋咲彩の交友関係について何か知りませんか?」
俺が訊くと、先生はニヤッと口の端を歪めた。
その瞳の奥には扇状的な輝きが蠢いているように見える。
「先生に頼みごとをするときは、分かってるわよね?」
容赦ねえな、この人は……。
俺は観念して上半身を持ち上げると、夏樹先生の顔に手を添えてそっと口づけをした。
すると、間髪入れずに唇の隙間を縫って熱く柔らかいものが口腔に侵入してきたので、俺は前歯でそれをブロックしつつ大慌てで顔を離す。
「なによ、ちょっとくらい良いでしょ?」
唇の間からピンク色の舌先を覗かせたまま、不満そうに先生が言った。
マジで油断も隙もねえな……。
「こっちのほうは嫌がってないわよ?」
や、やめろ、触るんじゃない。
ひとまず俺がやるべきことはやったと思うので、先に知っていることを話してください。
「仕方ないわね……」
そう言いながら、夏樹先生はつまらなそうに膨れ面をしながら俺の胸に頬を押しつける。
聞けるときにさっさと話を聞いておかないと、どうせまた姉貴が戻ってきたら面倒なことになる。
「それで、高橋さんについて、今回は何が知りたいの?」
「交友関係です。できれば男関係について」
「あなた、今度は高橋さんを堕とすつもり?」
そんなわけないだろ。
マジで最近の俺は女誑しとしか思われてないな。
「別に恋人とかじゃなくて、何か悪そうなやつとつきあってるとかって話はないですか?」
「悪そうなやつ? そうねえ……」
先生が難しい顔をしながらスマホを弄りはじめる。
何かメモのようなものでもあるのだろうか。
「セイジロウくんが高橋さんについて妙に知りたがるから、いちおう調べられる範囲でいろいろと調べておいたのよ」
マジかよ。先生、教師より探偵が向いてるんじゃないか?
「そのときは助手をお願いね」
謹んでお断りいたします。
「まあそうか。探偵と助手よりも、今みたいな関係のほうが依頼料をダシに体の関係に持っていけそうだものね」
どういう基準だ……?
「あー、そういえば、高橋さんって同じ学年に彼氏がいたんだったわ。富川くんっていう、わりとイケメンなんだけど、いわゆるチャラ男っていうのかしら。ちょっとヤンチャな子」
チャラ男? ——ヤンキー崩れみたいなものだろうか。
「そんな感じね。少し前に、芦田くんを怖がってなりを潜めているヤンチャな上級生たちがいるって話はしたわよね? その筆頭みたいな子よ」
なるほど……。
しかし、そんな男と高橋がつきあってるというのは、少し意外な気もするな。
ああいった手合いは同級生なんかよりもまとまった金を持っている社会人なんかと交際していそうなイメージだが……。
「実はビジネスカップルなんじゃないかって噂もあるわよ」
ビジネスカップル? こんな高校の中で?
「そ。学生ヒエラルキー上位の二人がつきあってるって状況は、やっぱりはたから見ると輝かしく見えるじゃない? 実際、裏じゃ富川くんは女にだらしないって噂だし、高橋さんも学外に本命がいるって話よ」
つまり、学校内での地位のために表向きだけつきあっていることにしているわけか。
確かに、高橋は少なくとも今回の文化祭があるまでは、学生ヒエラルキーにおける頂点に近いところにいたと言えるかもしれない。
ミスコンの優勝者かつ生徒会長であり、多くの女子の憧れである雑誌モデルをやりながらちょっとヤンチャなチャラ男を飼い慣らしている——そういう女を演じていたわけだ。
「ありがとうございます。とても良い情報でした」
俺は素直に礼を言った。今回もまさに俺が知りたい情報だった。
高橋にはまだ武器が残っている。
使われる前に、その武器を折っておく必要がある。
「良いわよ。代金はしっかり払ってもらうから」
夏樹先生はそう言って蠱惑的に笑うと、こちらの返事はまたずにそのまま腕を伸ばして俺の頭を抱え込み、今度は無理やり唇を押しつけてきた。
さすがにもう前歯の抵抗も虚しく、熱い吐息とともに強引に口腔内をねぶられる。
諦めて好きにさせておくと、やがて満足したのか夏樹先生は顔を離し、舌先で唇をペロリと舐めながら俺の胸に手をついて上体を起こした。
「ほんと、まだまだ元気ねぇ……」
扇状的な瞳で俺を見下ろしながら、夏樹先生がゆっくりとその腰を持ち上げた。
——今日も長い夜になる。
……いつから意識を失っていたのだろうか。
俺はソファの上で眠っていたようだ。
いや、転がされていたという表現のほうが正しいのかもしれないが……。
体が重い――と、思っていたら、どうやら俺の上で夏樹先生が寝そべっていたようだ。
いったい、いつからいたのだろうか。
夏季先生は仰向けになったまま顔の前に掲げたスマホを弄っていた。
「んー? 起きたの?」
俺の起床に気づいたようで、先生が首だけ捻ってこちらを振り返ってくる。
ぐるっと室内を見渡してみても、他に人はいないようだった。
シャワーの音はしているが、おそらく姉貴だろう。
壁に掛けられている時計を見ると、22時を示していた。
最後に意識があったときから少なくとも二時間以上は経過しているようだ。
「なんで夏樹さんがいるんですか」
またスマホを弄りだした夏樹先生の頭頂部を眺めながら、俺が訊く。
というか、この人、俺をベッドか何かだと思ってんのか……?
「あら、先生、明日はここから出社するつもりよ?」
答えになってねえ。というか、マジで言ってんのか……。
確かに他の女の子たちと違って先生は親の心配がないので帰宅する必要はないのかもしれないが、教師が生徒の家から登校というのはいささか爛れすぎではなかろうか。
「別にいいでしょ? もう着替えも持ってきてるし、今さら帰るのも面倒よ」
さいですか。
まあいい。どのみち、俺も先生に少し確認しておきたいことがあった。
「なあに? また先生に何か教えてほしいの?」
夏樹先生が俺の上でモゾモゾと体を回し、俺の上でうつ伏せになる。
互いの息がかかりそうな距離感もそうだが、何よりも腹に当たる胸が気になった。
ブラウスごしでも二つの突起が分かる。なんでブラしてないんだよ……。
——いやいや、しっかりしろ、俺。まずは解決すべき問題からだ。
「高橋咲彩のことについです」
「あら、また高橋さん? 随分とご執心みたいね」
まあ、処理すべき問題はまだ残っているからな。
「夏樹さんは、高橋咲彩の交友関係について何か知りませんか?」
俺が訊くと、先生はニヤッと口の端を歪めた。
その瞳の奥には扇状的な輝きが蠢いているように見える。
「先生に頼みごとをするときは、分かってるわよね?」
容赦ねえな、この人は……。
俺は観念して上半身を持ち上げると、夏樹先生の顔に手を添えてそっと口づけをした。
すると、間髪入れずに唇の隙間を縫って熱く柔らかいものが口腔に侵入してきたので、俺は前歯でそれをブロックしつつ大慌てで顔を離す。
「なによ、ちょっとくらい良いでしょ?」
唇の間からピンク色の舌先を覗かせたまま、不満そうに先生が言った。
マジで油断も隙もねえな……。
「こっちのほうは嫌がってないわよ?」
や、やめろ、触るんじゃない。
ひとまず俺がやるべきことはやったと思うので、先に知っていることを話してください。
「仕方ないわね……」
そう言いながら、夏樹先生はつまらなそうに膨れ面をしながら俺の胸に頬を押しつける。
聞けるときにさっさと話を聞いておかないと、どうせまた姉貴が戻ってきたら面倒なことになる。
「それで、高橋さんについて、今回は何が知りたいの?」
「交友関係です。できれば男関係について」
「あなた、今度は高橋さんを堕とすつもり?」
そんなわけないだろ。
マジで最近の俺は女誑しとしか思われてないな。
「別に恋人とかじゃなくて、何か悪そうなやつとつきあってるとかって話はないですか?」
「悪そうなやつ? そうねえ……」
先生が難しい顔をしながらスマホを弄りはじめる。
何かメモのようなものでもあるのだろうか。
「セイジロウくんが高橋さんについて妙に知りたがるから、いちおう調べられる範囲でいろいろと調べておいたのよ」
マジかよ。先生、教師より探偵が向いてるんじゃないか?
「そのときは助手をお願いね」
謹んでお断りいたします。
「まあそうか。探偵と助手よりも、今みたいな関係のほうが依頼料をダシに体の関係に持っていけそうだものね」
どういう基準だ……?
「あー、そういえば、高橋さんって同じ学年に彼氏がいたんだったわ。富川くんっていう、わりとイケメンなんだけど、いわゆるチャラ男っていうのかしら。ちょっとヤンチャな子」
チャラ男? ——ヤンキー崩れみたいなものだろうか。
「そんな感じね。少し前に、芦田くんを怖がってなりを潜めているヤンチャな上級生たちがいるって話はしたわよね? その筆頭みたいな子よ」
なるほど……。
しかし、そんな男と高橋がつきあってるというのは、少し意外な気もするな。
ああいった手合いは同級生なんかよりもまとまった金を持っている社会人なんかと交際していそうなイメージだが……。
「実はビジネスカップルなんじゃないかって噂もあるわよ」
ビジネスカップル? こんな高校の中で?
「そ。学生ヒエラルキー上位の二人がつきあってるって状況は、やっぱりはたから見ると輝かしく見えるじゃない? 実際、裏じゃ富川くんは女にだらしないって噂だし、高橋さんも学外に本命がいるって話よ」
つまり、学校内での地位のために表向きだけつきあっていることにしているわけか。
確かに、高橋は少なくとも今回の文化祭があるまでは、学生ヒエラルキーにおける頂点に近いところにいたと言えるかもしれない。
ミスコンの優勝者かつ生徒会長であり、多くの女子の憧れである雑誌モデルをやりながらちょっとヤンチャなチャラ男を飼い慣らしている——そういう女を演じていたわけだ。
「ありがとうございます。とても良い情報でした」
俺は素直に礼を言った。今回もまさに俺が知りたい情報だった。
高橋にはまだ武器が残っている。
使われる前に、その武器を折っておく必要がある。
「良いわよ。代金はしっかり払ってもらうから」
夏樹先生はそう言って蠱惑的に笑うと、こちらの返事はまたずにそのまま腕を伸ばして俺の頭を抱え込み、今度は無理やり唇を押しつけてきた。
さすがにもう前歯の抵抗も虚しく、熱い吐息とともに強引に口腔内をねぶられる。
諦めて好きにさせておくと、やがて満足したのか夏樹先生は顔を離し、舌先で唇をペロリと舐めながら俺の胸に手をついて上体を起こした。
「ほんと、まだまだ元気ねぇ……」
扇状的な瞳で俺を見下ろしながら、夏樹先生がゆっくりとその腰を持ち上げた。
——今日も長い夜になる。
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