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第4章:【BATTLE】イツキ vs ナナ

第38話:イツキ vs ナナ

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 <がこんっ!>
 <ぴかっ!!>

 最初に当たりを引いたのは、先に打ち始めていたイツキの"ジャグリング"だった。

(おしっ! にしても、このLUCKYランプはいつ見ても綺麗だよなぁ。これ考えた人は天才だなぁ。)

 そんなことを思いながらのイツキの目押めおしは「77BAR」(目押しの精度で結果が変わるわけではない)。レギュラーボーナスの獲得となった。どうせなら、ビッグボーナスの方がよかったが、とりあえず当たりを引けたことにイツキはホッとした。

 レギュラーボーナス後も無駄なくテンポよく回転数を重ねていくイツキ。

 <ぴかっ!!>

 ボーナス後65回転。早い当たりだ。

 次はビッグでお願いしますよ!と願いながらの2回目の目押しはまたも「77BAR」。

(またレギュラーか…。でも、早く当たるのはいいこと、いいこと。)

 イツキはリールを回す手を一時も止めない。

 2回目のあたりの後、少し間が空いて、216回転目。

 <がこんっ!>
 <ぴかっ!!>

(よしよしよし! 今度こそビッグで!)

 リズミカルな目押しで「777」。見事に初ビッグボーナス。イツキはようやくまとまった枚数の獲得に成功した。

 ーーナナの方は、"ドキドキ!"を初打ちながらも、江奈に言われた通りとにかくぶん回していた。

 ちょうど、この台ってハイビスカスとかナナちゃんランプとかデザインが可愛いなーっと台を眺めているとき、ハイビスカスが光った。

 <ちかちか、ちかちか!>

(わーっ!当たった! てかっ、これ光り方めっちゃ綺麗じゃん!)

 ナナはゆっくりとリールを止め「777」。

(最初からビッグだっ! ラッキーっ!)

 と、わりかし好調な滑り出し。

 ただ、問題はその後だった。最初のビッグボーナス後には"天国モード"へ移行しなかったようで、32回転以内には当たらず。イツキの打っている"ジャグリング"に比べ、コインの飲み込みスピードが早い"ドキドキ!"は通常時にどんどんコインがなくなっていく。気づけば、さっきのビッグボーナス分の出玉も全ノマれ。苦しい展開に入ってきていた。

 ナナは伸びをする代わりに体をねじると、少し離れたところにあるジャグリングコーナーにイツキが座っているのを発見した。詳細までは見えないが、当たりを引くとデータパネルが"ピカピカ"光る仕様であったため、ナナのいる位置からでも、当たっているか否か程度は判別ができた。

 そして、まさにそのイツキの台のデータランプは"ピカピカ"と光っていた。

 ーーようやっと引いたビッグボーナス後もリールを回す手をゆるめないイツキ。台の方もいい波がやってきたようだ。

 <ぴかっ!!>
「777」

 <ぴかっ!!>
「777」

 <ぴかっ!!>
「777」

 <ぴかっ!!>
「777」

(おぉ、また当たった! やっぱ、ジャグリングは何回当たっても楽しいもんだなぁ。)

 ボーナス後、100回転以内にビッグボーナスを4回も引くという怒涛の攻めを見せているイツキ。もはや完全に、ナナに勝ったらどうとか、負けたらどうとかは置いておいて、ただパチンカーとしてシンプルに勝負に勝ちたいという思いで、超純粋に楽しんでいた。

 ーーイツキのデータランプが頻繁に光るなか、ナナは当たりを引けない現状に次第に焦りを感じ、手にはじんわりと汗をかいていた。

 普段のナナはなかなか当たりが引けないからといって、こんなに焦ったりすることはない。しかし、イツキと勝負しているとなると、ここまでヒリつき、勝ちたいという気持ちでいっぱいになるんだなとナナは思った。

 ナナが手に汗まで握っているのは、もちろんイツキとの勝負に勝ちたいというのもあったが、併せてこれまで眺めているだけだった"いつも出している人"と勝負をしているという状況に興奮していたからでもあった。

 イツキのデータランプがまた光るんじゃないかと、ナナが遠くに視線をやったとき、光ったのはハイビスカスのランプだった。

 <ちかちか、ちかちか!>

 よしっ!ナナは心の中でガッツポーズをしながら、リールを止めるが、「77BAR」。がっかりのレギュラーボーナスだが、ボーナス後32回転までは希望があるのが"ドキドキ!"のいいところ。

(残り時間もそう多くない。ここでなんとしてでも天国モードに入れないと・・!)

 ナナは祈りながら、レバーを叩いた。

 <ちかちか、ちかちか!>

 ボーナス後7回転で、ナナのハイビスカスが再び点灯。よしっ!!いけるっ!!ナナはもう一度心の中でガッツポーズをキメた。

 見事、"天国モード"への移行を成功させたナナは、ここから怒涛の追い上げをみせた。32回転以内に、チカりまくるハイビスカスは5連目を数え、乗ってきた"ドキドキ!"とナナは、誰にも止められないように見えた。

 しかも、ナナが天国にいれたあたりから、イツキのデータランプが光っている気配がない。

(これは、追いつけるっ! 追い越すんだっ!)

 どんどん心拍数が上昇するドキドキな心で、ナナは"ドキドキ!"を回し続け、着実に出玉を伸ばしていった。

 ーー閉店時間まで、あと5分。

 最初はイツキが好調に飛ばし、後半からナナが"天国モード"で追い上げを見せる展開。勝負終了時間が見えてきたところで、イツキのデータランプが再び光ったのをナナが確認した。

(さっすが、イツキっ…! 5分前でちゃんと当ててくるかーっ! あれが"ビッグ"か"レギュラー"かでも、勝敗は変わりそうっ! くぅ~~、勝ちたいけど、その前にこの勝負楽しいーっ!)

 ナナがこの時間を"まだ続けたい"と願った次の瞬間だった。

 <ぴきぃぃぃぃん!!!>

 ナナの気持ちに応えるかのように、ここまで沈黙を貫いてきた"ナナちゃんランプ"が弾けるような音と共に輝き、ボーナス中の音楽もナナちゃんが歌う楽曲、"私☆アップグレード"に変化した。

(しゃーーーっ! 最後の最後にナナちゃん光った!! わたし、天才じゃんっ! いやいや、天才なのは江奈ちゃんかっ! 江奈ちゃん、やっぱすごいわっ!)

 "ナナちゃんランプ"が光った喜びと江奈への感謝を噛み締めながら、ボーナスを消化したナナは約束の時間となったため、コインをまとめはじめた。

 この台、まだ当たってるのに置いていくのもったいないなぁ、とナナが困っていると後ろから声がした。

「ナナさん、"ナナちゃんランプ"光らせられましたね。残りの10分はあたしが打ちます。」

 ナナが振り向くと、お店の会員カードを指ではさんだ江奈が立っていた。基本的に22:40が閉店時間だが、だいたいのパチンコ屋はそのお店の会員カードを持っていると10分の延長が可能となっている。

「江奈ちゃんーっ! まじで、この台よかったっ!! 江奈ちゃん、ガチでプロいっ! 多分勝てたと思うし、ほんとありがとっ! 外で待ってるから、後でねっ!」

「一応、狙い通りにいきましたね。よかったです。」

 江奈はナナの打ったデータを確認しながら、台に着席すると会員カードを突っ込み、綺麗で無駄のないフォームで打ち始めた。

 ナナはコインを流し、獲得枚数が記載されたレシートを大切に握りしめると、イツキとの集合場所である景品カウンターへと向かった。江奈との新しい出会い、当たらない焦り、追い上げる興奮、ナナにとっていろんなものが詰まった2時間だった。
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