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後期
冬のスキンケア
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「まずスキンケアは季節ごとにかえなくてはいけない」
お決まりの窓際の一番後ろの席、となりには西洋人のように長い足を組んだ梓さん。
「どうしてですか。
自分に合ったスキンケアを一年中使い続けるのが良さそうに思います」
「お前は夏用のスキンケアを冬も続けて、肌トラブルが起きなかったか?」
「……皮がむけてしまいました」
あまり気にしていなかったが今思えば本格的に寒くなってきた10月下旬ごろから、ぷるぷるのこんにゃくゼリーのような感触が失われたいたような気がする。
梓さんはしてやったりといった表情で足を組み直した。
梓さんに話によると、肌を取り巻く環境で自分の肌は変化していく。
例えば夏は、一般的に暑さにより皮脂が出やすい。
反対に冬は、寒さによって皮脂分泌は控えめになることにより肌の蓋が薄くなるので、外の空気に水分を持っていかれやすい。
だからわたしは、季節的に皮脂が少ないのにスキンケアで油分を補わなかったから、水分が蒸発して乾燥したことになる。
「だから、もうニキビは見当たらないし、冬に合わせて保湿重視のスキンケアを紹介する。
教室は暖房がきいているし、お前はもともと頬の部分の毛穴が小さくて、皮脂分泌が少ないから、スキンケアの最後クリームで締めるべきだ!
あとは乳液も油分の多い、もう少しこってりしたものにしよう」
「クリームって必要なのでしょうか……?
勿体無いので乳液を多めにつければ許される気が……」
します。そう言おうとしたとき、梓さんが鬼の形相で睨みつけてきた。
あまりの迫力に耐えられなくなったわたしは思わず狼狽えて一歩引いた。
「それならクリームはこの世に存在しない!
いいか? クリームと乳液は油分の密度が違うんだよ!
乳液をいくらべたべたに塗ったってクリームの密度には敵わない。
お前のように皮脂が少ない奴は、冬は黙ってクリームだ!」
コツン、と音を立てて、クリームと乳液が机に置かれていく。
「あと化粧水は冬はとろみのあるもの使いがちだが、とろみのあるものはさらっとしたものに比べて粒子が大きくて肌表面にとどまってしまうから、引き続きさらっとしたもので浸透させるのがオススメだ。
ま、とろみ化粧水の利点としては肌正面をさらっとしたものより整えてくれる。
あと、今はニキビできてないけど、できやすい体質ではあるから引き続き拭き取り化粧水で角質ケアしてニキビ予防な」
わたしの机に、拭き取り化粧水と化粧水、乳液、クリームが揃った。
瓶に入っているアイテムが多いせいか、前くれたスキンケアセットよりも高級感が漂っている。
割れ物である瓶に入っているあたり、物を落とさないおしとやか人間用に作られた気がする。……少し前までスキンケアをほぼしていなかった人間が使って許されると思えなくて、「こんな身分不相応なものいただけません」と言った。
「前も言ったがお前が使わなきゃゴミ箱行きだ。
それになにより、お前が使って綺麗になってもらわないと美容部が困る」
そう言われるともらわないわけにはいかない。
前回と同じように、某有名ブランドの紙袋にスキンケアセットを入れてもらって、なんだか後ろめたい気持ちになりながら片道400円の電車に乗って家まで帰るのだ。
(お値段以上に綺麗になってみせます)
お決まりの窓際の一番後ろの席、となりには西洋人のように長い足を組んだ梓さん。
「どうしてですか。
自分に合ったスキンケアを一年中使い続けるのが良さそうに思います」
「お前は夏用のスキンケアを冬も続けて、肌トラブルが起きなかったか?」
「……皮がむけてしまいました」
あまり気にしていなかったが今思えば本格的に寒くなってきた10月下旬ごろから、ぷるぷるのこんにゃくゼリーのような感触が失われたいたような気がする。
梓さんはしてやったりといった表情で足を組み直した。
梓さんに話によると、肌を取り巻く環境で自分の肌は変化していく。
例えば夏は、一般的に暑さにより皮脂が出やすい。
反対に冬は、寒さによって皮脂分泌は控えめになることにより肌の蓋が薄くなるので、外の空気に水分を持っていかれやすい。
だからわたしは、季節的に皮脂が少ないのにスキンケアで油分を補わなかったから、水分が蒸発して乾燥したことになる。
「だから、もうニキビは見当たらないし、冬に合わせて保湿重視のスキンケアを紹介する。
教室は暖房がきいているし、お前はもともと頬の部分の毛穴が小さくて、皮脂分泌が少ないから、スキンケアの最後クリームで締めるべきだ!
あとは乳液も油分の多い、もう少しこってりしたものにしよう」
「クリームって必要なのでしょうか……?
勿体無いので乳液を多めにつければ許される気が……」
します。そう言おうとしたとき、梓さんが鬼の形相で睨みつけてきた。
あまりの迫力に耐えられなくなったわたしは思わず狼狽えて一歩引いた。
「それならクリームはこの世に存在しない!
いいか? クリームと乳液は油分の密度が違うんだよ!
乳液をいくらべたべたに塗ったってクリームの密度には敵わない。
お前のように皮脂が少ない奴は、冬は黙ってクリームだ!」
コツン、と音を立てて、クリームと乳液が机に置かれていく。
「あと化粧水は冬はとろみのあるもの使いがちだが、とろみのあるものはさらっとしたものに比べて粒子が大きくて肌表面にとどまってしまうから、引き続きさらっとしたもので浸透させるのがオススメだ。
ま、とろみ化粧水の利点としては肌正面をさらっとしたものより整えてくれる。
あと、今はニキビできてないけど、できやすい体質ではあるから引き続き拭き取り化粧水で角質ケアしてニキビ予防な」
わたしの机に、拭き取り化粧水と化粧水、乳液、クリームが揃った。
瓶に入っているアイテムが多いせいか、前くれたスキンケアセットよりも高級感が漂っている。
割れ物である瓶に入っているあたり、物を落とさないおしとやか人間用に作られた気がする。……少し前までスキンケアをほぼしていなかった人間が使って許されると思えなくて、「こんな身分不相応なものいただけません」と言った。
「前も言ったがお前が使わなきゃゴミ箱行きだ。
それになにより、お前が使って綺麗になってもらわないと美容部が困る」
そう言われるともらわないわけにはいかない。
前回と同じように、某有名ブランドの紙袋にスキンケアセットを入れてもらって、なんだか後ろめたい気持ちになりながら片道400円の電車に乗って家まで帰るのだ。
(お値段以上に綺麗になってみせます)
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