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前期

  妹とわたし

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 今までわたしはずっと妹の側にいた。みんなは妹のことばかり見ていて、わたしの存在には気づかない。

 だから、わたしに話しかけてくれる人なんていない。  

 妹が話しかけられることによって、かろうじでわたしは存在していた。

 わたしとわたしを無視する世間を妹が仲介役として繋ぎ止めてくれていたんだ。

 しかし、一ヶ月前、頼りにしていた妹が死んだ。

 妹って言っても双子だから同い年なんだけど。
 死に顔は、毒リンゴ食って死んだのかってくらい穏やかだった。
 妹はそれはもう可愛くて可愛くて、生まれてこの方、世界の注目の的だった。
 歩くだけで周りに花がふわりと舞って、視線を独り占めしていた。
 人々の恋心と信頼はすべて妹のモノだった気がする。


“わたしなんかよりお姉ちゃんの方がすごいんですよ”

 これは妹が誰かに褒められたときに決まって言う台詞だ。
 人気者なのに姉へのリスペクトを忘れない。

 こんな絵に描いたような妹、きっと裏では性格悪いんだろうなって思うだろう。
 しかし、妹は性格も一級品で誰にでも平等で優しかった。
 例えるならば、彼女は西洋のお伽話に出てくるプリンセスのような人間だった。


“……お姉さんなの? 全く似てないね”

 これはわたしが人生で500回言われた台詞。本当に心臓をえぐられる。
 耐えられなくなったわたしは、高校に入学するとき、わたしとは他人のふりをしてと妹に頼んだ。
 わたしのことを好いてくれていた妹は残念そうだった。

 こんな身も心も可愛い妹を悲しませて、わたしは本当にブスだ。

 だから、こんな透明人間のわたしが少女マンガのヒーローさながらの王子様に声をかけられるなんておかしいのだ。

 こんなことが起きるあたり、きっともうすぐ地球が滅びてしまう。
 もし、滅びないのだとしたら何か普通のJKには頼めない、世間から外れた人間にしか頼めない不吉なお願いごとでもされるのかもしれない――。

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