魔導人形は今日も不機嫌

無為

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不機嫌の裏側

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ねぇ、お願い。
もし別れる時が来たら……その時は、俺を「愛してる」って言って、嘘ついて。
俺は、君に愛されたままいきたい。君を愛したと信じたままいきたい。
幸せだった記憶だけ持っていきたいから。

◇◇◇◇

「えっとぉ、随分変わった……魔道具ですね?」

ギルドの受付嬢が、やや引きつった目でこちらに視線を向けた。
声も明らかにドン引いているようで、歯切れが悪い。
「あ、これですか?遠い異国に代々伝わるヤツなんですよ」

アヤナが、手元に抱えた物をギルドの受付机にトンと置いた瞬間、
ヒィっとギルドの受付嬢が飛び上がっただけでなく、
ギルド内にいた冒険者たちも、おぞましい物でも見たかのように身をすくませた。
まるで化け物を見た時の反応だ。
いや、でもそんなに間違ってはいないのだが……

しかし、想定通りの反応に、怯むアヤナではない。
どこに行っても、大体同じようなリアクションだからだ。もはや見飽きてもいる。

この国で一般的とされている人形は、それはもう美しい芸術品だ。
金色に波打つ髪は、人間の髪と言われても信じてしまうくらいソックリで、
ガラス玉をはめ込んだ青い瞳は、綺麗な宝石のようだ。
睫毛も人工繊維を一本一本丁寧に植毛されている。
人形が着ている服は、もちろんドレスが一般的。
高級な物となれば、一流の仕立て屋がわざわざ人形用にオーダーで作る徹底ぶり。
白い肌は、塗料のシミなんて一つもなく、美しく磨き上げられている。
精工な作りで、まさに芸術品と言える。

子ども、特に女の子が憧れる人形。
そして大人は、骨董として愛でる嗜好品。
コレクターも数多く存在するくらい、美術品としての価値も高い。
それがこの国での一般的な人形だ。

けれども、アヤナが机の上に置いた人形は、それとはまったく異なっていた。
金やブロンド、亜麻色の波打つ豊かな髪ではなく、真っ黒で、まっすぐに伸びた髪。
前髪もハサミでバツンと切られていて一直線。
目は鮮やかな色のガラス玉……ではなく、黒曜石のような漆黒。
やや黒目が大きすぎて、こちらがじっと見られているような不気味さも漂う。

着ているのはドレスではなく、不思議な衣服だった。
柄もこのあたりの地域では見たこともない、布を何重にも重ねたような、不思議な着物。

そして何より不気味だと感じるのは、その顔だ。
真っ白な顔の左半分に、不思議な文様がタトゥーのように描かれている。
呪いでも受けているのか、と思わずにはいられない。

人の感性はそれぞれ。

中には美しいと感じる人もいるだろが、じっと一点、虚空を見ている人形は、今にも瞬きをしそうなくらい、底知れぬ妖しさと、気味の悪さが漂っていた。

「……はい、これで登録完了です。
依頼はそこのボードに掲示してありますので、何か気になる依頼があれば、こちらに申し出てください」
「わかりました。ありがとう御座います」

ひょいっと人形を抱えると、アヤナはギルドの掲示板へと向かった。

黒髪を肩口で切り揃えた女は、このあたりではあまり見かけない民族だ。
豊満な胸をはじめとする、ダイナマイトなボディが好まれるこの国では、やや貧相な体とも言えた。
そんな女が、自身の上半身ほどもある大きさの人形を抱えている様は、異質としか言いようがなかった。
腹話術をする大道芸人にも見える。
多くの冒険者が興味深そうに、けれども遠巻きにチラリと視線を向けた。

(まぁ、いつものことだしね)

アヤナは気にせず、掲示板に張り出されている依頼を吟味する。

(これは……ランクA以上か。あー、でも2チーム6人以上って書いてあるから、合同で請けるやつか……合同は無理そう……)

クエストは、小さな薬草の収集から、大型の討伐まで無数にあるが、意外としっくり来るものがない。
それもそうだ。アヤナたちにも、最低限の条件はある。

「お。ねぇねぇ、この街は初めてなんだよね?冒険者?変わった人形持ってるね」

アヤナが依頼のボードを見ていると、果敢にも男が声をかけてきた。
珍しいなと思いつつも、特に無下にする理由もなかったので、男と顔を合わせる。

「あ、そうです。さっき着いたばっかりで……どうぞよろしくお願いします」
「っ、ああ、よろしく」

ニヤニヤとした笑顔を浮かべていた男は、振り返ったアヤナ、そしてアヤナが抱えている不気味な人形を見た途端、挙動不審になった。声がうわずっている。
アヤナが抱えていた人形は、いつの間にかやや上を向いていて、じっと男を見つめているかのようだ。
男も、人形と目が合ったような錯覚を覚えて、たじろいだ。

「もし良ければ街を案内してやろうか?」
少し離れたところから、男の仲間と思しき男も声をかけてきた。

どちらも、いかにも冒険者といった風体で、中々立派な肉体をしている。
固そうな髪質の金髪、そして少し生えた無精ひげ。腕は太く、いかにも逞しい。
腰には立派な剣を佩いている。

「そうそう。女の子ひとりで、だなんて危ないだろ?俺らは、ずっとこの街で冒険者やってるんだ。だからなんでも知ってるよ」
「それに、冒険者ランクもAだしな」
男たちは、腰の袋に着けているバッジを指さした。

この国では、受注できる依頼はランクによって異なる。
C、B、A、S、SS、UR、という6段階だ。
一般的に大多数を占めるのはCとBで大体登録者の7割、それからAが2割、そして1割に満たない割合でSがいる。URは国内、いや世界でもほとんど見かけることはない。

冒険者ランクAは誇って良いランクとも言える。
実際、掲示板に貼り出されているAランク以上は、どれも報酬が高い。

「あー、そうですね、街を案内して頂けるのはありがたいんですけど……」

アヤナは困った様子で、言葉を濁した。
街を案内するというのは恐らく言葉通りではない。
しかし何だかギルド内にいる他の冒険者も、野次馬根性というのだろうか……でこちらの様子を静観している。

(どうしようかな……)

この街に着いて早々、あまりコトを大きくしたくないというのもあった。
どうやって上手く躱すか悩ましい。
人とのコミュニケーションは人並みだと思うが、こういった輩への対処は得意ではない。
不気味な人形を持った女、というだけで、大体の人は声すらかけてこないし、
何よりも……

「なんなら、一緒に組むか?」
「お、それいいねぇ!こんな可愛い子なら、大歓迎だよ!な、どうだろ?」
「え、っと……それは……」
盛り上がっている。人の話を聞かずに勝手に、それはもう盛り上がっている。
そもそも、男たちは酒を飲んでいたらしく、大分テンションが高い。
拒否の対応次第では、暴漢になり得る危うさもある。

「にしても、嬢ちゃん。キレーな髪だな。ここいらじゃ見かけねぇ黒だ」
「あっ……ちょっと……!」

男がアヤナの髪を一房すくった。
まずいとアヤナの危機感が警鐘を鳴らし、手を払い除けようとした。

――その時。

「ねぇ、俺のツレに何か用なの?」

あ!と思った時には既に時遅し。
突如現れた男が、男の腕を捻りあげていた。

「イテテテテテ!」
「お、おい! お前!!」
いきなり現れた男に、腕を強く掴まれ、冒険者の男たちが憤りの声をあげる。
しかし、その憤りは、突如現れた男の比ではない。

「俺のツレに触らないで。困ってるじゃん」

威嚇するように、低く唸るような声を上げている男――イチを見やる。
こちらに視線に気付いたイチは、その長身でアヤナを見下すと、ゾっとするような侮蔑の視線を向けてきた。

「わかったわかった。とりあえず離せって」
「……ったくよォ!」
イチはチッと舌打ちをすると、渋々といった様子で男の腕を離した。

「なんだよ、相棒いるんじゃねぇか。しかも、女みたいな男だなァ?」

男たちは、イチの容姿をまじまじと眺めるなり、嘲笑を浮かべた。
それもそうだろう。
身長こそ冒険者の男たちより少し高いものの、いかんせん冒険者としては細すぎる。
スラっとした長身、真っ白で傷一つない肌は、今まで日に焼けたことがないような、箱入りを思わせる。
そして端正な顔立ちは、冒険者というよりも、どこぞの貴族だ。
細い鼻筋、小さな顎、薄く色づいた唇。
アーモンド型の目には、びっしりと睫毛が綺麗に伸び生えている。
容姿の繊細さは、中性的でもあった。
少し伸びた真っすぐな黒髪とも相まって、女性と言われても信じてしまいそうだ。

ただし、喉仏はしっかりと出ていて、声は声変りを経ているのだろう。
女性にしては低い。

「なぁ、嬢ちゃん、こんな細っこい女みてぇな男で大丈夫か?まとめて襲われちまうぞ」
「はははっ、違いないね。実は本当に女だったりしてね」
「ハァ?」

冒険者の男たちがケタケタと笑う。
イチは青筋を浮かせ、男たちを睨みつけた。
殺気を隠そうともせず、今にも飛びかかろうとしている。
イチが暴れたら、アヤナにも手に負えない。

「あーあー!!しばらくこの街でお世話になりますけど、特にご迷惑はかけないんで!よろしくお願いします!さ、行こうイチ!」
「ッ……! 次アヤナに触ったら殺すから覚悟しといて、わかった?」
「あーあー、す、すみません。ほんと!何もしないんで、ほら!行くよ……!」

アヤナは、暴れ出しそうな勢いでキレ散らかしているイチをぐいぐいと引っ張って、ギルドを後にした。

ギルド内にいた冒険者たちは、突然始まった面白い寸劇を見たと笑い、そしてまたそれぞれの作業を再開したのだった。


◇◇◇◇


「ねぇ、イチ。機嫌直してよ」
「無理」

イチは、滞在する宿に着くなり、ベッドの上にぼすっと寝ころんだ。
そして、ずっと天井を見ている。
先程から、アヤナとは視線すら合わない。

「街に着いて、ギルドへ登録しに行くだけなのに、なんで男に絡まれてんの?もしかして男と遊びたかった?俺には飽きたってこと?」
「いやいや、そんなわけないでしょ」

街に着いたら、アヤナはギルド登録を済ませる。
そしてイチはしばらく滞在する宿を探すため、二手に別れた。
各々の用事が終わり次第、合流する予定だった。
しかし、アヤナの方が思いの他時間がかかってしまい、心配したイチがギルドへと様子を見に来て……先程に至る。

ギルドを出た後、適当に食料を買い出して、宿へと向かった。
部屋に入り、荷解きをしている(とは言ってもそんなに荷物もないのだが)アヤナをよそに、
イチはベッドに横たわると、目を瞑って寝てしまった。
半刻ほど過ぎ、目を覚ましても、露骨に不機嫌な様子を見せた。

ちなみに部屋にベッドは一台しかない。
どこの国でも、街でも、庶民の冒険者が泊まれる宿は、大体こんなもんだ。
そして貴重な一台のベットは、イチの長身が占領していた。

「明日から請ける依頼も、ひとりでやって」
「え――!それは困る」
「じゃあどっかのパーティに入ればいいんじゃない。
でも、女のとこ限定ね。男が1人でもいるチームはダメ」

フイと顔を背けて、そっけなく言う。
アヤナは手にしていた人形をイチの枕元に置いて、ベッドに腰かけた。
不貞腐れるイチの頭を、そっと撫でる。

「イチ、ごめんって。さすがに今日明日でどっか他のパーティーを見つけるのは難しいよ。
でも稼がないと旅の資金も尽きちゃうし……イチが依頼を手伝ってくれないと困るよ」
イチは頭を撫でられて、少しだけ満足そうに目を細めた。
基本的に文句や不満が多いが、猫みたいな可愛さを、純粋に気に入っていた。
少しだけ機嫌が落ち着いたのか、イチはようやく、アヤナの方を向いた。

「アヤナ、魔力補給―――えっち、させてくれたら、許す」
「……はいはい。しょうがないな」

いつものことだから特に驚くことはなかった。
アヤナは、ちゅっとイチに口付けた。それが合図となって、手を取られ、強引にベットへと押し付けられる。鮮やかな身のこなしは、さすがと言ってもいい。全てが軽やかだった。

「や、ちょ、ちょっと……」
「させてくれるんでしょ?俺の好きにさせてよ」

イチは、いとも簡単にアヤナの服を脱がしてしまう。慣れているのが憎々しい。
冒険者ということもあり、着ている服は簡素だ。すぐに肌が露わになった。
双丘にそっと手を添え、優しい手つきで触れられる。
先程の口の悪さからは想像もつかないくらい、丁寧な愛撫だった。

「柔らかい、んっ、……」

アヤナの情欲を引き出すように、肌をさすっていく。
ツンと硬さを持ち始めた乳首を、イチの綺麗な指がつつく。
ゆっくりとした動きで、感触を楽しむように愛でると、その形の良い唇で食んだ。
「アヤナのここ、もう立ってて可愛いね。コリコリしてて美味しい……」
「んっ……ぁ……」
イチは嬉々とした様子で、アヤナの胸を楽しむ。
ちゅ、ちゅぱ、と吸い付いて、音を立てる。

そうしているうちに、段々とそういった気分にさせられて、思わず足をすり寄せた。
アヤナがほぼ全裸なのに対して、イチはきっちりと服を着こんだままだ。
抱き合っているのに、素肌のぬくもりを感じられないのは、ただ空しい。

「や、だ、イチ……」
「はいはい。分かってるよ」
舌なめずりして、アヤナを見下ろしながら、衣服を脱ぎ出す。
真っ白な肌で、比較的細身の体ではあるが、先程ギルドで出会った冒険者たちが言うように、
決して女らしい体ではない。

うっすらどころか、ちゃんと筋肉がついていて、男らしい体だと思う。
着瘦せするタイプなのだろう。
イチの上体を見た人は、きっと驚く。
確かに顔は整っていて美しいが、こんなにしっかりとした肉体を持っているなんて、想像もしないだろう。
それはアヤナだけが知っていることだ。

イチは、アヤナの視線に気付くと、胸に顔を埋めて、心臓のあたりに耳を当てた。

「んっ、アヤナ……あったかい……」
乳首に吸い付きながら、そっと下肢に手が伸ばされる。
股の間に、イチの手が差し込まれて、思わずビクリと体を震わせた。
「アヤナ、もうここ、大分グズグズになってるね。そんなにしたかった?」
「ちが……」
「はいはい。いいから。ほら、ちゃんと舐めてあげる」

イチはスルリと下の方に体をずらして、アヤナの下腹部あたりに顔を寄せた。
そしてそっとアヤナの足を左右に開き、膝を立たせて開脚させる。
空気に晒された秘所は、イチの言う通り、きっとグズグズに溶け出しているだろう。
イチがふっと息を吹きかけると、ぴくぴくと脈動する。

イチは、その肉襞をそっと優しく指で広げてから、舌を伸ばした。
「んっ……ぁ……!」
控えめに触れた舌を差し込んで、膣口から漏れ出す愛液をかきだすように舐め取る。
アヤナの反応を見ながら、遠慮気味に動いていた舌は、次第に大胆へとなっていき、
じゅる、じゅると吸い出す動きへと変わっていく。

「美味しい……アヤナの愛液、すごくおいしいよ」
イチは美酒を嗜むかのように、アヤナの愛液を舌でかき出しては、そのまま飲み込まず、
舌の上でしばらく味を楽しんでから、喉を鳴らした。
レロ、レロ、と見せつけるようにして、時折アヤナに情欲の籠った視線を寄越してくるものだから、タチが悪い。
次第に体が熱を持ち始め、下腹部がじくじくと疼き出す。
それを当然知っているイチは、夢中でアヤナへと奉仕を続けている。

「や……いち、だめ、もう……イかせて」
「ふふ、もちろん。いいよ。イって」
アヤナが懇願すれば、イチは愛撫の矛先を秘裂から、その上のクリトリスへと変えた。
すでに膨れて、赤く充血しているそこは、とても美味しそうに熟れている。

イチは、舌先でクリトリスをちょんと突いて、熱い唾液をまぶし、それから指でスリスリと扱き出す。
「あっ、ぁ……う……それ、イっちゃう……」
「アヤナはクリ、弱いもんね。ほら、シコシコしてあげるから、もうイきなよ」
小さい芽を器用に擦られて……体に大きな快楽が走る。

「はぁ、最高。アヤナ可愛い……」

まるでイチ自身が達したかのように、はぁ、はぁと荒々しい息を上げている。

チュっとアヤナの唇に自身のそれを重ねた。
至近距離で見つめ合う。
美しい黒曜の瞳に、肩で息をしながらぐったりとしている自分が映っていた。
羞恥から視線を逸らして、イチをぼんやりと眺めた。

シミも傷もない白い肌は、生娘のような薄赤へと染まり、下がった目尻は、赤らんでいる。
欲を隠そうともせず、嬉しそうに妖しげな笑みを浮かべている。
これで男だというのだから、女泣かせでもあった。
ついでに、イチがアヤナに向ける、可愛いという誉め言葉も、何も知らない他人からしたら、嫌味を言われていると思ってしまいそうなものだが、アヤナだけが、イチの言葉に嘘偽りがないことを知っている。

「アヤナぁ、もう、入れていい?」
お伺いを立てておきながら、ちゅっ、ちゅっと欲望の先を秘所に擦り付けていた。

「……入れて」
アヤナの方も限界を迎えていた。
欲しくて欲しくてたまらなくなっている。

「んっ――――!」
許可を得て、イチの陰茎がずりゅと押し込まれる。その質量に思わず息を詰めた。

イチとの性行為は、これが初めてではないが、いつやっても慣れる日が来ることはなさそうだ。
それはイチも同様だったようで、苦悶の表情を浮かべながら、腰を押し付けている。
「あぁ……ぁ、アヤナ、最高……すごくいい……」

最奥に先端が当たり、ずっぽりと納まったことで、イチは、はぁと嬌声交じりの息を吐く。
アヤナの肉襞は、イチを離さないとばかりに、ギュっと締め付けている。
悦に浸りながら、イチはゆっくりと腰を揺らし始めた。

「ぁ、はぁ……アヤナ……んッ……」
「んっ、あ……あぁ……イチ……」
アヤナはギュッとイチの背中に手を回して、イチから与えられる快楽に身を委ねる。
陰茎が抜けそうなくらい腰を引いて、それからドチュと勢いよく押し込まれる。

子宮を押し上げるように先端が強く刺激したかと思えば、カリ高の笠部分が、膣壁をこそぎながら、ずるずると、引かれている。
アヤナが快感を得られる場所を熟知して、的確に刺激してくる動きに、早くも膣はキュウと蠢動し始める。

「くっ、あ……アヤナ、それ、やばい……イキそう」

長い時間、この交合を楽しんでいたい、アヤナの体を堪能していたい、そして彼女と繋がっていたいと思う反面で、早く達して、中に吐き出したいという欲望もある。

「イチ、っ……ぁ……んっ……」

息も絶え絶えに、イチは激しく腰を押し付けて、陰茎を出し入れする。
「んっ、あ、出る、出る、俺の子種汁で孕んで、アヤナ……!!」
「や、イく……」
「イッて!」

ギュッと抱き寄せて、身体を隙間なくぴったりと密着させる。
そのまま勢いよく中を穿たれ――ドピュドピュと熱い奔流が流れ込んだ。
「んっ……ぁ……」
「あ、ぁ。アヤナ……アヤナ……すごい……あったかい……」

そのまま横に倒れ込んだイチは、幸せそうに微笑んだ。
目からは、つぅと一筋の涙が流れて、線を描いている。

アヤナは、その涙をそっと拭ってやったのだった。



◇◇◇◇


「………………」

アヤナは、少し離れた場所から漂ってくる不機嫌なオーラを直に受けて、何も言葉を発することが出来ずにいた。

「お兄さん、すごくかっこいいですね!」
「えー、どこ出身なんですか?年はいくつです?」
「身長もすごく高いし、顔小さい…!スタイル良い~!」
「…………どうも」

黄色い声に囲まれているイチを見るのは、一度や二度の話ではない。
行く先々で、よく見られる光景と化していた。
イチは、取り囲む女性の冒険者たちとは一切目を合わさず、遠くを見つめている。

大型の依頼を請けることになったはいいものの、他のパーティーと一緒になってしまった。
男2人に女2人で構成された2チームと、男3人のチームが1つ。それにアヤナたち2人を加えて、計13人で臨む依頼だ。
内容は、森に出没する中級モンスターの討伐だった。

集合場所であるギルドに着くなり、瞬時に状況を理解したイチは、アヤナを冷ややかに見下ろした。
そしてそれ以降、一切口を聞いてくれなくなった。

大所帯での移動中も、基本的にはアヤナの隣を離れないものの、視線はじっと虚空を見つめている。
冒険者の女性たちに色々と話しかけられているが、全く興味を示さず、ただ、うん、だとか、ああ、というような当たり障りのない相槌しか打たなかった。

しかし、アヤナが男の冒険者に話しかけられると、即座に手を繋ぎ、グイっと引き離しにかかる。
そのため、女性からは妬みのような視線をぶつけられ、男性からは、「カップルで冒険者とかよくやるよなぁ」と冷やかしの言葉をかけられた。

けれども、この一連の流れも慣れたものだった。

「お、おい‼ 出たぞ!」

森を進むこと半刻程。
モンスターが出現するとされている地点に着くなり、先を進んでいた冒険者が声を上げた。
「ひぇ、ひぇ、あんなデカイなんて……」
冒険者の一人は弓を構えたが、その手は明らかに震えている。

(想定よりも、かなり大きいね……)

アヤナは、空を黒く覆いつくすそれを見上げた。
大きいトロールのような姿をしたモンスターは、なんと有翼の怪物だった。
ギョロリと大きな目が地上にいる人間たちを見下ろしている。

「飛べるだなんて聞いてないわ、コレ……SS以上の案件じゃないの? ど、どうすんのよ?」
「弓は小さすぎて当たりません……!」
冒険者たちは、一様に慌て出した。有翼と聞いてはいなかったものの、普通の弓では到底太刀打ちが出来ない。
弓矢が刺さっても、モンスターにとっては小さい針が刺さるようなものだろう。
当然だが、近接武器は為す術がない。

「ぎゃ――!!」
トロールの吐き出した粘液が、地面へと降り注ぎ、硝煙を上げている。
躱し損ねて、飛沫を浴びてしまった男は、肌が焼けたようで、あたりには焦げた匂いが漂う。

「お、おい、まじかよ……」
「あれに捕まったらひとたまりもないぞ!!」

女性の冒険者が、モンスターを魔法で麻痺させて墜とそうと詠唱を始めたが、
トロールの羽ばたきが突風を起こして、吹き飛ばされる。

ドスンと叩きつけるような鈍い音が響いたのと、高い悲鳴が上がったのは同時だった。

(まずい……さすがにそろそろ何とかしないとまずいんじゃ……)

「イチ……」

どうしようかと、隣を見るものの、イチは興味なさそうに空を見上げていた。
不機嫌を隠そうともせず、視線が合うことはない。
アヤナは、手にした人形をギュッと抱きしめた。

「撤退するしかないわ……!」
「そうだな、これは俺たちの手には負えない…」
「何とか時間を稼がないと……きっとすぐに追いつかれてしまう」

負傷した仲間を担ぎ、じりじりと後退をする。
イチが一切手を出さないというスタンスである以上、アヤナに出来ることもない。
こればかりはしょうがないと、アヤナは負傷した人を助けようと動き出した、――その時。

「……はぁ」

イチから離れようと歩き出したアヤナの腕を、イチが掴み、引き寄せた。
大袈裟に、そして周囲にも聞こえる様に、わざと大きな声で溜息をつく。
「アヤナ、やるよ」
「え、いいの?」

イチに顔を向ければ、ようやくイチと視線が合った。今日はじめてのことだ。
無視されるのは頻繁にあることだが、今回は随分と長い間、イチと会話してなかったような気がして、自然と嬉しさがこみ上げてきた。

イチは、身体をポキポキと鳴らしながら、気だるげな様子を隠さない。

「だって仕方ないでしょ。使えない冒険者ばかりだ。このままだと全滅するよ。まぁ、俺は俺たち以外全員死のうが、アヤナだけ生きてれば構わないけど。アヤナは、嫌でしょ?そんなの」
「それはそうよ。さすがに寝覚めが悪すぎる……! まだ町に来たばかりだし……」
「じゃあするしかないよ、っと…………」

降り注ぐトロールの飛沫を軽快に避けながら、イチは綺麗な顔を微動だにしないで、淡々と言う。

「え、アンタら、どうする気? まさかあんなのと戦うの?」
「おいおい、本気かよ……撤退するのもやっとだぞコレ……状況分かってんのか」
「でも退路を取れる余裕があるかね……有翼のオーガだぞ。秒で追いつかれちまう。こっちには負傷者もいるってのに」

冒険者たちは一様に余裕がない。
その中で、何も動じないアヤナとイチに苛立ちさえ感じるようだった。
イチはゾッとするような冷たい視線を向けると、アヤナを突然抱き寄せた。

「アヤナ」

周囲がギョッと目を見開く。

「ちょ、ちょっとこんなときに何してんのよ!」
「おい、ピンチで性欲が爆発しちまったのか?」

イチが、アヤナに口付けている。
非常時とは思えないほど、しっかりと舌を絡めたキスだ。
イチはウットリと微笑んで、蕩けた笑みでアヤナだけを見つめた。黒曜石の瞳が、爛々と輝いている。

親愛ではない。
端から見ても、明らかに性的さを感じられる口付けは、この非常事態において、明らかに常軌を逸した行動だった。

アヤナは唇が離れると、腕に抱えている人形にチュッと口付けた。

「――――魔導人形イチト。その真の姿で、敵を討って」


アヤナの声が拡声器を通したかのように、あたりに響き渡る。
その声に呼応したイチが、静かに目を瞑れば、彼の姿は黒い闇に飲み込まれていく。

その闇が晴れた時――イチの姿は、綺麗な男性から一変していた。

側頭部から鹿のような形状の角が生え、顔の右半分には文様が浮き出ている。複雑な文様は、まるで呪いを受けたかのようだ。
そして着ていた服も、簡素なものから、大きく様変わりしていた。
何より、真っ黒な羽が生えている。

「――なに、あれ」
「どういうことだ?」
イチは自身の羽で舞い上がると、地上で狼狽える冒険者たちを見下した。

「弱いんだから、黙って隅に行っててよ。当たっても知らないよ。―――アヤナ」
「…………いくよ、イチ」

アヤナは聞き取れないくらい小さく呪を唱えた。
すると、滑空しているイチの周りを不思議な紋様が囲み出す。

そしてその紋様から、つまり虚空から、ズズズと大きな斧が出てきた。
凝った意匠の、巨大な斧だ。
その丈はイチの身長くらい。施された装飾は複雑で、本当に切れるのか、と疑ってしまうほど美術品にしか見えない。
何よりもかなり重そうに見える。
とてもじゃないが、細腕の男が振りかざすことなんて到底無理なのでは、と思ってしまう。

イチは、まるで羽ペンでも持つかのような優雅さで、その巨大な斧をくるりと振り上げ――――。

一刀両断、トロールの首を切り落とした。

鮮やかに。いとも簡単に。

「はい、終わり」

ズドンと地響きを立てながら、トロールの巨体が地上へと落ちる。
その重みで地面が陥没し、大きな衝撃が走る。多くの冒険者は立っていられず、その場に膝をついた。

振動が治まり、トンと軽やかに降り立ったイチは、アヤナに抱きついた。
そして見せつける様に、アヤナとのキスを堪能してから、ギロリと冷たい目を周囲に向けた。

「アヤナは魔導人形術士。そして俺は、アヤナの本当の武器。

つまり、人ではないから女の相手は無理。アヤナも、アンタらの手に負える女じゃない。アヤナと関係を持とうとなんて考えないで。……ペニス、切り落とすよ」

「ちょ、ちょっとイチ……!」
「もういいでしょ、依頼終わったし帰ろ……あ、それと」

アヤナの手を引いて、ずいずいと森を出るべく歩き出す。

「オレのことも他の奴らには言わないで。仕事やりにくくなるから。言ったら……分かるだろ」

「…………」

なんだか不思議なものを見たかのように、呆然とする一同をよそに、アヤナたちは森を出たのだった。



◇◇◇◇



「イチ、ごめんね……まさかこんなことになるなんて。正体バレるとやりにくいよね……」

イチは、イチ自身が強力な武器であるために、極力、正体を隠して過ごしてきた。
魔導人形を誘拐して無理やり使役させる方法や、主をアヤナなら書き換える方法だって無数に存在する。
だから、正体がバレたときには、イチはアヤナだけではなく、自分自身を守るために行動しなければならない。

命令を書き換えられて、アヤナを害することがあってはならない。
その可能性だけは潰さねばならない。

「悪いと思ってるなら償って。ねぇ、なんであんな依頼請けたの、使えないヤツらばっかじゃん」
「んーー、確かに悪いとは思ってるけど……最近甘やかしてる気もするから、えっちはナシだよ」
「え‼ なんで!」
「そんな毎日してらんないよ。私の魔力ってか、体力が枯渇する」

魔導人形は、主の魔力によって動いている。
つまり、定期的に魔力を補給しなければならないのだが、イチは、アヤナと性行為をすることによって魔力を得ている。
イチは強力な武器である一方、そこそこ燃費が悪いという欠点もあって、高頻度で性行為を強請られていた。
いわく、魔力が無くなると、何だか満たされない気分で、モヤモヤする……らしい。

「アヤナ……アヤナぁ、ねぇ…………」

甘い声で擦り寄ってきたかと思えば、すぐに、ちゅ、ちゅっと口付けを落とされる。
いつの間にか正面に居座り、腰にするりと手が回され、ピタリと密着していた。
イチは、その硬いものをグイグイと押し付けて、欲をアピールしてくる。

アヤナが微動だにしないことに、ムッと腹を立てたのか、イチは勝手にそそくさと衣服を脱ぎ始めてしまった。
「ちょ、イチ……!」
「アヤナがシてくれないなら、勝手にするよ。俺のオナニーでも見てて」

イチの陰茎は既に膨れ上がっていて、立派にそそり立っていた。
白い綺麗な手を添えると、強く握り込み、扱き始めた。

「はぁ、ん……っ、ふぅ……アヤ、ナ……」

底なしの闇の色をした目を、じっとアヤナに向け、口からだらしなく嗚咽を漏らしながら、
けれども手はしっかりとした動きで自身を慰めていく。

筋肉のついた体躯は、薄桃色に染まり始めて、胸の飾りすらもピンと立ち上がり、主張を始めていた。
まるで交合でもしているかのように、アヤナ、アヤナと名前を呼びながら、
綺麗な容姿とは真反対とも言える肉棒に、性欲の矛先をぶつけていく。

「……う……うう……」
アヤナが思わず俯けば、 イチは口元を歪めた。

「アヤナ、俺は……アヤナに愛されないと生きていけない。
魔導人形は、主から魔力を貰って、初めて動くことが出来る。セックスは……アヤナからの、最も分かりやすい愛だよ。分かるだろ……?」

魔導人形は、虚しいモノだ。
魔力というエサを貰うために、主に媚びたり、主が望む言葉や行動をとらなくてはいけない。
主から見限られてしまえば、心はゆっくりと疲弊してゆき、やがて動かず、ものを言わないただ人の形をしたモノになる。
だから本質的に主の意にそぐわないことはしない。

自棄願望から、主の不興を買って、敢えて消滅を選ぶ人形もいるが……。

人形の心は脆い。
アヤナたち魔導師は、沢山の崩れた人形を見てきた。
だからアヤナは、イチの心をいつも尊重している。

さすがに度を超えたワガママは許容できないが、ある程度自由にはさせているし、それでアヤナが本気で怒ったり、咎めたりすることはない。

主の顔色を窺いながら生きるのではなくて、せめて心だけは人間のように、自分の思うように生きて欲しいと思っていた。

―――人間のように。

―――人間だった時のように。

「……泣かないで、イチ」

いつの間にかイチは、自慰行為の手を止めて、ただ、呆然とした様子で虚空をぼんやりと見つめていた。
宝石のような美しい瞳から、ポロポロと涙を零している。
言われて始めて、自分が泣いていることに気付いたのか、アヤナの方に顔を傾げた。

「本当は、魔力が欲しいんじゃないでしょ。イチ」
アヤナがそっと両手を広げると、イチはギュっとしがみつくように、アヤナの腰に手を回した。

「……本当は、セックスするのに理由をつけたくない。魔力を与えるために……義務感でシてくれるなんて……そんなのイヤだ。
アヤナを愛しているから……繋がりたい。でも、ごめん……俺が素直に言えないだけだ……」

「そっか……」
アヤナは、チュッと唇を重ねる。何度も軽く触れ、そして舌を絡めた。

「んっ……はぁ、アヤナの口の中、熱い……」
唾液を交換しながら、舌の感触を堪能する。
イチは人形だが、その身体は人間と何ら変わりはない。口を通して伝わってくる温度は高かった。

イチは、アヤナの服を脱がすと、まろびでた胸にしゃぶりつく。乳首を舌で転がすようにして、その感触を楽しむ。
「ぁ……んっ………胸、くすぐったいよ……」
「可愛い……おっぱい、ずっと触っていられる……けど、そろそろもう入れたい。いい?」
「……ん」

イチが苦しそうに顔を歪ませている。
反り立った肉棒を掴むと、そっとアヤナの蜜口にあてがった。
既に濡れぼそっているそこに、クチュクチュと先端を擦り付け――。
息を詰めながら、腰を押し進めた。

「んっ、ぁ……っ……!」

ズチュリと音を立てながら、中を押し広げながら陰茎が押し込まれていく。
その質量に、アヤナは息を詰める。
ギュッと強い収縮が走ったことで、イチは目をギュっと瞑り、快感で身を震わせた。

「ぁ、はぁ……アヤナんなか……最高……締まるね」

イチは口元を歪ませて、トロリと情欲に染まった目をアヤナに向けた。
動くよ、と小さく耳元で囁かれたことで、身体がピクッと震えた。期待からだ。

「んっ、ぁ、あぁ……っ、はぁ……イチ、イチっ……!」
「あ、ぁあ、アヤナ、アヤナ……愛してる、っ、は、ぁ……んっ、ン……!」

陰茎を出し入れをしながら、イチは何度も何度も愛を紡ぐ。
その顔は、どう見ても、人間にしか見えない。
人形と言われても、きっと誰も信じないだろう。
好きな人と繋がっている喜びで、幸せそうに微笑んでいる。

「や、ぁ……だめ、そこ………! アッ、んっ……!」
「ンん、っ……!は、んっ……!アヤナ、イキそう? んっ……良かった、じゃあ……一緒に……!」
ばちゅんばちゅんと肌を打つ音が大きく鳴り響き、イチがグッと奥を押し込めば、びゅる、と熱が中を迸った。
イチは肩で息をしながら、アヤナに一滴も残らずその熱い精液を注ぎ込むと、泣きそうな顔で微笑む。


「……アヤナ、ごめん……」

ギュッと抱きしめられる。
顔を見らえまいとしているのだろうか、アヤナの視界にはイチの胸板の肌色しか映らない。

「……アヤナが他の男といると、すごく……ツラくて、気持ちが……不安定になる。
そいつは俺がアヤナに、与えられないものをたくさん持ってるから、悔しくて……
でも、もしかしたら、アヤナの幸せは、そいつが持っているのかも、と思うときもあって……
ごめん、上手く言葉に出来ない……」

言葉が震えている。けれども、アヤナには何よりも誠実な言葉に聞こえた。
いつも不機嫌で、天邪鬼だが、イチの根底にはアヤナへの思いしかない。
その不器用さをアヤナは愛している。

アヤナは、ぐいっと胸板を押して、イチと向き合う。
案の定、イチの顔は美形なのに勿体ないくらい、歪に、けれども綺麗な涙で濡れていた。

「……人と結ばれることが幸せとは限らないよ。それは、誰かが決めた一般的なこと。
別にその通りに生きる必要はないよ。私とイチ、二人がどんな関係で、どんな種族であっても、お互いが良ければ、それで良くない?ね?
そうでしょ?」

「アヤナ……アヤナ、やっぱり、好き。愛してる」

アヤナは、その言葉にしっかりと頷いて、微笑んだ。
不安げな顔は、もうそこにはなく、ただ、人間のように無垢な笑顔だけがある。

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