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3 わんさかわんさか、いえ〜いえ〜い、えいえ〜い。

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今世界には蜘蛛の魔物で紡ぐ糸が有るらしく、それも高級品なんだとか。
ただその蜘蛛を小さい頃から調教するには、親蜘蛛を討伐して小蜘蛛を確保するそうな。

上手くいけば良いが、年に二・三人は冒険者が死ぬらしい。
時には糸に巻かれたままの遺体も見つかるとか。
そう司書(二階の図書にいた人)さんが教えてくれた。

その点お蚕様は安全だよ。

私はギルマス・司書・最初の受付嬢の方々に、あまり知識は無いが絹織物が出来る事を説明した。
いや本当に拙い(つたない)説明で申し訳ない。
一応豪族の娘だったから、この世界なら貴族令嬢なもので、そんなに養蚕を手伝ってはいないんだよ。


昨日は何故かギルマスの執務室で説明させられたが、今日から新規冒険者(7級)として薬草採取に挑むのだ。

まあ初心者の定番だって受付嬢に言われたし。

でも私は得意なんだよね薬草採取。
何たって森に12年住んでたし、お父にも鍛えられたし、創造魔法で鑑定スキルオーブ創っちゃったからね。
低級だから恥ずいのよ。
でも一応鑑定魔法だよ。
薬草ぐらいならチョチョイのちょいなのね。


町から歩く事2時間(10キロくらいかな)浅い森の中にいるよ。
街道脇と言っても良いね。

この世界には魔素ってのが有って、魔力草なんて有るんだわ、これが。
絞った透明な汁には魔素が大量に含まれてるの、味も少し甘いんだよ。
これ入れないポーションはクッソ不味いたらありゃしない。
だから魔力過多防止のポーションはヒジョーに不味い。

私も生まれつき魔力が多くて良く飲まされました(うげ~)。
迂闊に魔力垂れ流すと、強い魔物が寄ってきたり、貴族に拐われたりするらしいの。
あ~やだやだ、やな渡世だねえ~。
『勝新かっ!』
時々聞こえるこの声は知ってるかな皆?。
私は知ってるよ。
だって私を転生させてくれた神様だもの。
だけど何時も意味不明な事を言うんだよね、何だよカツシンって。


「ふんふんふ~んっと」
おやおや、今日はこんな遠くまで小さい子達が来てるなあ。
町の近くはもう薬草が無いのかな。
人が多いもんね。
意外とね5・6歳でも平気で10キロ位は歩くからね。
親が見てないと神隠しに遭っちゃう。
前世で私もオオカミに遭遇した事が有るよ。
その時は運良く襲われなかったけどね。

まぁ···別の狼に差し出されたけど。
うちの子どうしてるかな。
会いたいけどもう会えないんだよ、おまけに私一度死んじゃったし。
前世の私は女の子産んでるからね。
事情が有って離されちゃったけど。
やっぱり会いたい。

「さてさて感傷的になっても仕方ない」
そう思い直し薬草採取を再開した矢先だった。
「ブモッ、ブフッ、プキィー」
あっオークだ(喜)。

おっとと、小さい子達がいるんだった。
先ずは避難って、遅いか。

直ぐ側まで来てたんだよ。
コイツ等。

仕方ないので此処は結界魔法を奴等の周りに張った。

「皆今のうちに逃げなさい。コイツら結界で閉じ込めてるから」
そう言うと子供たちは一斉に逃げ始めた。
少し大きい子は小さい子を抱えて、自力で逃げられる子は足早に。
あっ一人逃げ遅れた。
私が抱えあげ森の外へ走ると、少し大きい子が慌てて駆け寄って来たので、そこでちっちゃい子を彼に渡した。

「さてさてオークさん。美味しく頂いちゃうよ」
「ブヒッ、ブヒッ、ブモッ」

「風牙風牙フーガ」
『追いかけ~て、追いかけ~て』
サクッとオークを倒したらまた神様が、今度は何か歌い出した。
聞き慣れない旋律だ。
それは兎も角自分で作ったマジックバッグにオーク3頭を詰め込んだ。
うん、まだまだ余裕があるね。

《オニャンコポン》こちらの世界で言うウニャンコポ様から頂いた、創造魔法で創り出した私の自信作だ。
でもいつかもっと大容量にしてやるのだ。
オーク百体は入れてやる、のだ、のだ。

森を出ると子供たちがいた。
「あれ~皆なして逃げなかったの」
「「「「「だって」」」」」
「お姉ちゃん置いてけ掘りに出来ないよ~」
「う~ん、嬉しいんだけど、そこは逃げなきゃだめよ~」
「あなたも皆を逃がさないと」
私は大きい子に言った。
「ごめんなさい」
「まあね。今度あったら逃げてね」
そう言って頭を撫でておく。

「さっ、帰ろっか」
「「「「「うん」」」」」

皆でお手々繋いで街道を町へ向けて帰る。
何か楽しい。

ちっちゃい子がわんさか。
楽しい。
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