俺達のヴォーカルが死んだ

空秋

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11話

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『それではついに最後のグループ、Violetの登場です!』


ライブステージ運営委員の司会生徒が半ば黄色い声になりつつアナウンスすると、客席の生徒達が一斉に沸いた。



その生徒達のほとんどがVioletのメンバーがデザインしたTシャツを身に付けて、マフラータオルをぶんぶんと振っている。



『おい、最後だからって盛り下がってんじゃねーぞ!!』


司会生徒からマイクを取り上げ、そう生徒達を煽ったのは新メンバーの町田だった。


まるで生前の晶を彷彿とさせるトークに、晶推しの生徒は涙を流しながらも歓声を上げた。


そのライブステージの盛り上がりにつられ、わらわらと立ち見客が集まってくる。


「なになに?」


「ライブ?」


「え、有名人?」


「いや、軽音部だって。人気らしいよ」


「全員めっちゃ派手だなぁ~」


「でもイケメンじゃない?」


「え~、ちょっと怖くない?」


Violetを知らない他校生徒や、一般客も集まりだし、更にざわざわとする会場に、唐突に繊細なキーボードの旋律が響き渡る。



その音色の美しさと、荒々しいロックバンドのノリとのギャップに全員が驚き、晶の奏でる音色に聞き入ってしまった。


そして晶がキーボードから手を離し、再びマイクを持って話し始める。


『Violetはまた今日から動き出す。たかが"軽音部"でぜってえ終わらねぇ。このメンバーでお前らの居場所、作ってやるから、いつでも離れていいけど、いつでも帰ってこい!!俺達は…俺達の音楽は絶対お前らを裏切らねぇ!』



晶が最後にそう叫んだ直後、とても絶妙なタイミングで暖が激しいドラムを叩き始め、合わせて一斉に4人がそれぞれの楽器を奏で始める。



ヴォーカルは朝陽。



力強い晶の歌声とは違い、包み込むようなソフトな響きで新曲を歌い上げる。



絶対的な歌唱力を持つ晶が先頭に立つタイプのヴォーカルなら、朝陽は後ろからメンバーの演奏を纏める様なタイプのヴォーカルだ。



"全員で音楽を作っている"


この時4人全員がそうした一体感を感じていた。


お互いがお互いを支えている感覚。


普段はあまり意識しないが、こうしてステージに立ってみるとやはりVioletは特別だと思えた。





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