新型ロボット

空川億里

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1話完結

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「これが新型ロボットか」
 大統領は目を輝かせて、眼前のロボットを見た。それは身長180センチの人間型である。
 大統領はハイテクや、SF小説が好きな男だ。以前私に開発させた軍事ロボットは、反政府デモに集まった1万人の参加者を、装備した機関銃で、わずか2分で鎮圧した。
「念のため申しあげますが閣下。これは軍事用ではありません」
 私が答えた。
「昔アメリカにアイザック・アシモフというSF作家がいました。彼の小説に出てくるロボット工学三原則に基づいて製造された物です」
「それなら知ってる。第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。またその危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。第二条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし与えられた命令が第一条に反する場合は、この限りでない。第三条 ロボットは一条と二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない」
 大統領がSF好きとは知っていたが、こうもスラスラ出てくるとは思わなかった。確かに彼は記憶力がよく、頭もいい。
 問題なのは、彼がその才能を悪い方に使っている事だ。彼が当選した時私も含めて多くの国民が熱狂し期待したが、それはやがて裏切られてゆく。
 彼は憲法を変えて言論の自由を制限し、平和に共存していた隣国に突如軍隊を侵攻させた。
 政府を批判した人は銃殺され、全野党は強制的に解散され、国内の少数民族はガス室に送られる。
 国際世論は我が国の指導者に抗議したが、それ以外何もしなかった。大勢の国民が迫害を逃れて外国に脱出する。
 私も亡命を考えたが、妻子を人質に取られて不可能になったのだ。
「このロボットは三原則に沿って動くので、将来は人命救助や救急医療に使えるかと」
 私は大統領に説明した。
「素晴らしい。22世紀の科学は、ついにこんなロボットを発明したのか」
 我が国の最高権力者は、感嘆に声をつまらせた。
「はじめまして。ロボットのロブです」
 私の愛すべき発明品が、大統領にあいさつした。
「格好はいかにもロボットって感じだけど、声は案外綺麗だな」
 我が国の全権を握る男は、副大統領に向かって話した。
「確かに仰せの通りです」
 副大統領は本来良識派だが粛清を恐れイエスマンとなり果てたので、想定内の答えだ。言葉尻を取られるような、余計な発言はしない男だ。
「実は、ロブにも人を殺せるケースがあります」
 私は説明した。
「そいつはどういう状況だ」
「例えば暴漢が誰かを殺そうとした時には、襲われた人を守るため、暴漢を殺害できます」
「なるほど。あくまで罪のない一般人の生命を、犯罪者より優先するんだな」
「その通りです。なので、銀行強盗から人質を救う等の業務でも活躍できます」
 ちょうどその時大統領の部下の1人が執務室に現れた。
「一体どうした」
「首都で反政府デモがあり、500人の参加者を逮捕しました。かれらの処遇をどうしましょうか」
「決まっとる」
 激怒して、大統領は机を叩いた。
「全員銃殺刑にしろ」
 その時である。不意にロブが大統領に飛びかかると、その喉を締めあげた。大統領は抵抗したが、何せ相手はロボットだ。
 やがて力なく倒れてしまった。私はゆっくりそこへ向かう。すでにわが国の最高権力者だった男は死んでいた。
「一体どうして……人命優先のロボットじゃないのか」
 副大統領が恐る恐るつぶやいた。
「人命優先だからです。ロブは殺されそうになった500人のデモ参加者を救ったんです」
 



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