地球に優しい? 侵略者

空川億里

文字の大きさ
上 下
40 / 66

第40話 護送車襲撃

しおりを挟む
 ザースコ少佐と彼の部下を含めた4人は強奪したホバートラックに乗りこんで、捕虜収容所に走らせた。
 収容所の建物に接近すると、正規軍とクーデター軍との間で激戦が繰り広げられているのが見える。
 ザースコ達にとってはタイミングよく反乱軍の攻撃を避けるため捕虜収容所から護送用のホバーカーがちょうど出るところであった。
 護送車の鉄格子から、ワランファ准将らショードファ軍の捕虜達と、アース・パルチザンに参加した地球人の捕虜達の姿が見える。
 やがて護送車は、こちらに向かって走ってくる。チャマンカ星は全土に渡り車は左側通行だ。
 その進路を塞ぐようにザースコ達の乗るホバートラックが停車した。
「そこを、どけ」
 護送車のスピーカーからチャマンカ語が流れた。
 その言葉はザースコ達のつけたネックレス型の翻訳機でショードファ語に訳される。
「自分はショードファ宇宙軍のザースコ少佐だ。我々はクーデター派に雇われたが、そちらに投降する。なぜならクーデター派はチャマンカ人至上主義で、かれらに協力したにも関わらず殺されそうになった。こちらには自分も入れて3人いる。武器を置いて出ていく。その通りにして良いなら一旦ホバートラックを路肩に寄せて、そちらに行く」
 しばらく間があった。護送車内で、どう対応するか相談してるようだ。
 しばらくして、護送車のスピーカーから声が流れた。
「話はわかった。ホバートラックを路肩に駐車して3人共出てこい。武器は持たずシールド装置を設置したベルトは外し、両手は上にあげて出るんだ」
 ザースコ少佐を含めた3人が、路肩に駐車したホバートラックから両手をあげて外に出た。
 が、4人目のザースコの部下のデールン少尉のみホバートラック内に残したのだ。
 デールンは光学迷彩で透明人間になっている。
 護送車からレーザーライフル銃を持ったチャマンカ兵達が3人降りてきた。
 そのうちの1人がいきなりザースコをライフルでなぐりつけた。
 激痛が少佐を襲う。ザースコは地面に倒れた。
「チャマンカ星に準光速ミサイルを撃ったうえに、賊軍に加担するとはふてえ野郎だ」
「ミサイルを撃ったのは、自分の判断ではない。そもそもショードファ星を壊滅させたのは、貴様らチャマンカ共だろう」
 苦痛に耐えながら、ザースコが口を開いた。チャマンカ兵がライフルを構え、その銃口を少佐の額に押しつける。
 殺される……少佐が観念した時だ。
 突如彼に銃口を押しつけたチャマンカ兵の首がスッパリ一直線に切断され、地面に向かってゆっくりと落下した。
 首を斬られた胴体も、大地に沈んだ。胴体の両手が構えていたレーザーライフルが、地面に落ちた。
 ザースコの部下の1人がレーザーライフルに駆け寄って拾うと、間髪を入れずに構え、チャマンカ兵の1人に向かって引き金を引く。
 銃口から見えない射線が放たれて、チャマンカ兵の腹から血が噴きだした。
 その兵士も、ライフルを下に落とす。 
 残った最後のチャマンカ兵も突然首を切断されてそこから血しぶきをあげながら、胴体と共に地上に倒れる。
 2人のチャマンカ兵を斬ったのは、光学迷彩で透明人間になったデールン少尉だろう。
 護送車の運転席と助手席にいたチャマンカ兵がレーザーライフルを取り出すと、窓を開けた車の横から身を乗り出して、ザースコに銃口を向け撃ってきた。
 が、レーザーは全て阻止された。デールンが間に入ったらしい。
 デールン少尉を取り巻くシールドが、レーザーを跳ね返しているのだ。
「少佐、こちらを」
 デールンの声がすぐそばでした。見るとそこにはシールド装置とプラズマ・ソードのグリップとレイガンを装着したベルトがある。
 早速ザースコは身に着けた。命拾いしたザースコだが、部下の1人はそうはいかない。
 ザースコが攻撃できないと見るや護送車のチャマンカ兵は、レーザーライフルを奪ったショードファ兵にレーザーを浴びせた。
 彼の腹に穴が開いてサイボーグ化された体内から内臓と血液と電線と部品が飛びだし、部下は異郷の大地に倒れた。
 彼はライフルを持ってはいたが、さっき倒したチャマンカ兵に気を取られて、反撃できなかったのだ。
 ザースコは運転席側から身を乗り出したチャマンカ兵をレーザーライフルで撃った。
 それは額に直撃しドアが開いて、兵士は地面に転落する。
 今度は助手席にいた兵士がザースコを撃とうとしたが、丸腰だった部下の1人がザースコ同様デールンから受け取ったレイガンを撃ち、そいつを仕留めた。
 運転席にも助手席にも人のいなくなった護送車が、ザースコに向かって突進してくる。
 ザースコは、恐怖におののいた。
 
しおりを挟む

処理中です...