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第19話 盲点
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「あたしだって知らなかった!」
絶叫したのは、一美である。
「ただただあたしは美優さんの事が心配で……それだけなのに……」
一美はその後声にならない声をあげるとエレベーターまで走っていく。
そして上に向かうボタンを押すと中に入り、自分の部屋がある4階のボタンを押した。
エレベーターが4階へ上がり、かごのドアが左右に開く。一美は自分の部屋に入ると、中から部屋を施錠する。
あんなふうに疑われたり、責められるのは、もう懲り懲りだ。でもこの苦しみも、今夜で終わる。
一美は今夜、この島から脱出するのだから。
「実は、提案しようと考えていたことがある」
一美がいなくなった後、日々野はそう切り出した。
「なんだよ。その提案って」
不機嫌そうに、井村が唇を尖らせる。その目には、猜疑心が浮かんでいた。
「さっきは那須さんを疑うような発言をしたけど、実は私はこの中に犯人がいないかもと考えはじめてるんだ」
「ちょっと待って」
翠が割り込んでくる。
「生き延びてる5人の中に犯人がいないの? だったら一体どこにいるの? ここは絶海の孤島じゃない」
「犯人が、この屋敷のオーナーなら、あり得る。例えば地下に部屋があって、そこから出入りしてるとか。我々がこの島にやってくる前から、そこに潜んでいたとかね」
みんな押し黙ってしまった。日々野の発言を、どうとらえていいかわからないのだろう。
「ともかく私は、1人でも地下室への出入口を探してみる。なければ地下室はないという結論になる」
日々野はそう宣言すると、大広間の床を調べはじめる。
他の3人は最初は時間が止まったように黙ってその様子を見ていたが、やがて日々野と同じように這いつくばって床を調べだした。
大広間の後は1階の廊下や、美優の遺体がある室内も調べたが、どこにも地下に通じるような出入口は見当たらなかった。
いつのまにか、大広間の時計は午後3時を示している。
「みんなありがとう。私の推理が外れてしまい、徒労に終わらせて申し訳なかった」
「でも、このビルの敷地内に地下室がないだけで、島のどこかに隠れる場所があるかもしれないけどね」
翠が、そう口をはさんだ。
「じゃあ、どこよ?」
井村が口を尖らせた。
「こないだ島を一周したけど、それらしい場所なかったじゃん」
「もう1つ気になってる場所がある」
日々野が横から割り込んだ。
「8階だ。8階は、空き室だ。もしかしたらあそこに誰か、潜んでいるかもしれない」
井村がポカンとした顔で、日々野を見る。
「考えた事もなかった」
しばらくしてから、ようやく井村が口を開いた。
「言われてみれば、盲点ね」
翠が、目を丸くする。
「考えもしなかった」
ミジンコが鳴くような声で、妹尾が話す。
「さすが、お医者さんですねやっぱり頭の出来が違う」
翠が、褒めた。
「もう医者じゃないですけどね」
「死ぬのをやめて、もう1度医者になればいいのに」
井村がそう主張した。
「自信がない。誰も私を信じてくれない。それに犯人が、この島の持ち主だとしたら、迎えの船を寄越すかもわからない」
「最初から俺達を殺すつもりだったって事? でも、それ変だろ。俺達は苦痛なく死にたいから集まっただけで、そうやって集まった俺達を、なんで島の持ち主が殺すんだよ? 俺達島の持ち主の恨みを買うような事してねえぜ」
「確かにな。でももしかしたら、自分達でもわからない理由で恨まれているのかもしれない」
「ともかく日々野さんが言う通り8階に行ってみない?」
横から翠が、口をはさんだ。
「犯人が誰にせよ、8階を利用した可能性があるから」
絶叫したのは、一美である。
「ただただあたしは美優さんの事が心配で……それだけなのに……」
一美はその後声にならない声をあげるとエレベーターまで走っていく。
そして上に向かうボタンを押すと中に入り、自分の部屋がある4階のボタンを押した。
エレベーターが4階へ上がり、かごのドアが左右に開く。一美は自分の部屋に入ると、中から部屋を施錠する。
あんなふうに疑われたり、責められるのは、もう懲り懲りだ。でもこの苦しみも、今夜で終わる。
一美は今夜、この島から脱出するのだから。
「実は、提案しようと考えていたことがある」
一美がいなくなった後、日々野はそう切り出した。
「なんだよ。その提案って」
不機嫌そうに、井村が唇を尖らせる。その目には、猜疑心が浮かんでいた。
「さっきは那須さんを疑うような発言をしたけど、実は私はこの中に犯人がいないかもと考えはじめてるんだ」
「ちょっと待って」
翠が割り込んでくる。
「生き延びてる5人の中に犯人がいないの? だったら一体どこにいるの? ここは絶海の孤島じゃない」
「犯人が、この屋敷のオーナーなら、あり得る。例えば地下に部屋があって、そこから出入りしてるとか。我々がこの島にやってくる前から、そこに潜んでいたとかね」
みんな押し黙ってしまった。日々野の発言を、どうとらえていいかわからないのだろう。
「ともかく私は、1人でも地下室への出入口を探してみる。なければ地下室はないという結論になる」
日々野はそう宣言すると、大広間の床を調べはじめる。
他の3人は最初は時間が止まったように黙ってその様子を見ていたが、やがて日々野と同じように這いつくばって床を調べだした。
大広間の後は1階の廊下や、美優の遺体がある室内も調べたが、どこにも地下に通じるような出入口は見当たらなかった。
いつのまにか、大広間の時計は午後3時を示している。
「みんなありがとう。私の推理が外れてしまい、徒労に終わらせて申し訳なかった」
「でも、このビルの敷地内に地下室がないだけで、島のどこかに隠れる場所があるかもしれないけどね」
翠が、そう口をはさんだ。
「じゃあ、どこよ?」
井村が口を尖らせた。
「こないだ島を一周したけど、それらしい場所なかったじゃん」
「もう1つ気になってる場所がある」
日々野が横から割り込んだ。
「8階だ。8階は、空き室だ。もしかしたらあそこに誰か、潜んでいるかもしれない」
井村がポカンとした顔で、日々野を見る。
「考えた事もなかった」
しばらくしてから、ようやく井村が口を開いた。
「言われてみれば、盲点ね」
翠が、目を丸くする。
「考えもしなかった」
ミジンコが鳴くような声で、妹尾が話す。
「さすが、お医者さんですねやっぱり頭の出来が違う」
翠が、褒めた。
「もう医者じゃないですけどね」
「死ぬのをやめて、もう1度医者になればいいのに」
井村がそう主張した。
「自信がない。誰も私を信じてくれない。それに犯人が、この島の持ち主だとしたら、迎えの船を寄越すかもわからない」
「最初から俺達を殺すつもりだったって事? でも、それ変だろ。俺達は苦痛なく死にたいから集まっただけで、そうやって集まった俺達を、なんで島の持ち主が殺すんだよ? 俺達島の持ち主の恨みを買うような事してねえぜ」
「確かにな。でももしかしたら、自分達でもわからない理由で恨まれているのかもしれない」
「ともかく日々野さんが言う通り8階に行ってみない?」
横から翠が、口をはさんだ。
「犯人が誰にせよ、8階を利用した可能性があるから」
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