virtual lover

空川億里

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第9話 正体見たり

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「もし良かったら、亡くなったお父様の兆太さんの顧問弁護士だった人を紹介するわよ。守秘義務があるから、隠し子の話はしないでしょうけど」
「それでも助かります」
 ヲタスケが、笑顔で答える。話が終わり京子が退散した後、隠し子の件をヲタスケから、ケイゴに教える事になった。
 ケイゴは捜査一課の刑事だ。彼が調べれば、何かわかるかもしれない。3人は、これで解散することになった。
 3日後の木曜日にケイゴからLINEが来る。それによると隠し子の住所がわかり、原作調査中との連絡があった。
 その後今度は、リナからLINEで連絡がある。
 その内容は火曜日から水曜日にかけて、都内港区内にあるリナの住むマンション付近で、何度かケイゴを見かけたとの事だった。
 ケイゴは同僚らしい男と2人連れだったそうなのだ。
 リナはあえて声かけせずに2人の男を尾行したが、その行き先はいずれも同じマンションだったそうである。
 実家が裕福で仕事をしてないリナだからできる芸当だ。
 愛斗は詳しい話を知りたかったので、彼女に電話をかけた。リナは、すぐに通話に出る。
「LINE読んだよ」
 愛斗は、単刀直入に切り出した。
「本当? 嬉しい! あたしすごいでしょ?」
「確かに、すごいね」
「それであたし、望遠レンズ付のビデオカメラで監視したの。それでケイゴ君がどの部屋の番号をインターホンで押したのか、確認したの。ちなみに最上階の31階に住んでるって。3101号室。ちなみに販売価格は1億円」
 リナの得意げな声が響く。愛斗は思わず叫んでしまう。
「1億円! ちなみにそのビデオカメラで普段何撮ってるの?」
「ま、色々とね」
 リナは、ごまかす。
「結局不在だったみたいで、ケイゴ君も相棒も帰ったの。それであたし、自費で探偵を雇う事にしたってわけ。もう興信所に連絡しちゃった。興信所の人の話だと、3101号室に住んでるのは、蘆屋美瑠紅(あしや みるく)っていう20代の女性なんだって」
 リナは、どんな漢字で書くかを説明する。
「さすがリナさん。行動力がすごいですね」
「口ばっかりの政治家とは、大違いでしょ?」
 リナは、愛らしい顔に、自慢気な笑みを浮かべる。
「蘆屋美瑠紅って子が、どんな顔をしてるのか、知りたいもんだ」
「確かにね。興信所の人が交代でマンションに貼りつくように手配してもらってる。顔写真も手に入れるよう頼んでる」
「ケイゴ君が追ってるって事は、やっぱりカグラ君殺しに関係あるのかな?」
「わかんない。聞いても守秘義務があるから、教えてくれないでしょうしね」
    


 さらに翌日金曜日の夕方に、リナから電話がかかってきた。
「どうしたの?」
「大ニュース! さっき興信所から電話があって、蘆屋美瑠紅がようやく帰宅したんだって!
 興信所の人が撮影した動画があるから観てよ! 今マナト君のパソコンのメアドに動画貼りつけて送信するから」
 驚くことに、そこに現れた人物は、愛斗同様ユメカのファンのムノだった。サングラスに帽子にピンクのマスク。
 ムノは自分のマンションの出入口に入ると帽子とサングラスとマスクを外す。当然そこには地下アイドルの真宇の顔が現れるはずだった。
 が、出現したのは留置所にいるユメカだったのだ。



 その後さらに興信所による調査が進み、蘆屋美瑠紅の画像が入手できた。
 その顔はユメカそっくりで、美瑠紅は父の遺産を相続した後安アパートからタワマンに引っ越したのだ。
 そしてホストクラブにはまり、そこではユメカを名乗っていた事が、友人の証言で発覚した。
 『2020』のユメカに似ているため、ハンドルネームがわりにそう名乗っていたそうなのだ。
 美瑠紅が帰宅した件は、すぐに興信所からリナに伝わり、リナからケイゴに至急連絡したのだがケイゴは忙しいらしく、なかなか電話に出ないと、リナにぼやかれた。
「テレビで報道されてた女子高生殺しの件で忙しいんじゃないの? 事件が起きたの昨日でしょう?」
「そういや、そうね」
 ちなみに興信所の調査によると美瑠紅はせっかく大金を相続したにも関わらずタワマン購入、ホストクラブ、海外旅行、高級ブランド品の買いあさりと浪費三昧で、最近ではマンションのガス代と電気と水道の料金を滞納していたそうだ。
「どうやら真犯人は、蘆屋美瑠紅みたいだね。金に困ってカグラ君を殺したんじゃ? 殺せば妻子のない彼の遺産は、まるまる美瑠紅に入るしね」
 

 さらに2日後の日曜日の朝に、またリナから電話があった。どうやら美瑠紅が外出しそうな気配を醸しているそうなのだ。
 キャリーカートに色々つめたり、化粧をしたりしているそうだ。
 興信所が向かいのマンションに部屋を借り、望遠レンズ付きのビデオカメラで盗撮しているそうである。
 リナはケイゴに連絡したが電話に出ず、ヲタスケも同様だそうだ。
「でも興信所の探偵が見張ってるなら、どこに行っても大丈夫じゃない?」
「わかんないよ。以前やっぱり興信所雇ったけど、肝心な所で当時の彼氏を巻かれちゃってさ。浮気の現場、抑えられなかったのよ。ともかく今すぐ赤羽からこっちに来てよ」
 命ぜられるまま愛斗はアパートを飛び出すと赤羽駅から埼京線に乗った。目指すは六本木だ。



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