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わからないことを3つ質問しただけですの。
しおりを挟む「私の質問は以上ですわ。
お答え頂き、ありがとうございました」
「それにしても、フィルミーナ嬢と私は、同じ公爵令嬢という身分ですのに、私にはとても出来ないような、虐め内容ばかりで、とても驚かされましたわぁ」
この発言を皮切りに、ついに会場中が、
「フィルミーナ嬢は、本当は何もしていないのではないか?」と、騒ぎ始めた。
「まぁまぁ!皆様!落ち着いてくださいませ。
殿下とその妃となるサラ様が、嘘をつき公爵令嬢を害することなど、あるはずがありませんわ。証人の方だって、いらっしゃるのでしょう?
もし無罪の公爵令嬢を貶めているのだとしたら、たとえ皇子殿下といえども、無事では済まされませんわ。
サラ様に至っては、極刑になる可能性まで、秘めておりますのよ?証人の方も皆様、偽証罪ですわ。
そんなことを、するはずがないでしょう?」
黙っていた皇子の顔色が、さらに悪くなり土気色になる。先程、声高々に弾劾していた面影は、既にない。
そして、呟くように殿下が宣言された。
「…フィルミーナ嬢を解放しろ…」と。
その発言に、即座にサラ様が噛み付きます。
「カイル!何を言ってるの!?私はあの女に虐められたのよ!?」
「無理だサラ。このままでは君が…」
どうやらサラ様を慮っての、宣言だったようね。
殿下は思ったより、理性的ね。
「何よ!!何よ!!おかしいわ!!これは全部、アンタのせいね!!変なことばっかり聞いてきて!!フィルミーナを断罪しようと思ってたのに!!台無しじゃない!!」
「そうだわ!殿下!!!私、この人にも虐められましたの!フィルミーナと組んで、マナーがなってないと虐められましたわ!!」
と、サラ様は私を指差し、殿下に言い付けておりました。
「いや、そ、それは…サラ」
フィルミーナ嬢と私が組むことは、絶対にないことを、殿下は分かっていて、サラ様を止めようとしておりました。
「そうよ!下級貴族だからマナーがなってない!だとか、殿下を呼び捨てにするな!とか、言葉遣いがなってない!とか、人気のない所に呼び出されて、注意されたの!この人にもフィルミーナにも!私、とっても怖かったわ…」
と、付け足すように、泣きまねをされました。
それに対し私は、ゆったりと笑って答えました。
「まぁ。失礼ね。私はそんな慈善事業を、行っておりませんわぁ」
「はぁー?何を言ってんの!?あんた!?話聞いてた?」
泣きまねをするのも忘れ、サラ様が突っかかってきます。
「ええ。もちろん聞いておりましたわ。
良いです。色々教えてくださったサラ様には、
私も特別にわかりやすく、教えて差し上げますわ。
マナーはコミュニケーションを円滑に行う為の、エチケットですの。つまり、マナーを守るということは、身だしなみを整えることの延長線ですわ。
例えば、貴女の鼻毛が出ていたとします。
フィルミーナ嬢は、皆様の前で「貴女、鼻毛が出ていましてよ?」と指摘せずに、わざわざ、後でこっそりと貴女の鼻毛が出ていたことを、教えて差し上げていたのでしょう?
フィルミーナ嬢はとてもお優しいのね。
私なら、そのように面倒なこと、絶対に致しませんわぁ~」
と、サラ様の鼻を、持っていた扇子でクルクルと指差しながら、笑って見せた。
すると、バッ!とサラ様が鼻を抑える。
周囲が堪らずにクスクスと笑い始めた。
「それに、私がフィルミーナ嬢と組むことはあり得ませんわ。
殿下とフィルミーナ嬢が婚約してから今日まで、フィルミーナ嬢とお話ししたことは、一切ありませんの。
それに関しては、幼い頃から連れ添った、私の婚約者のウィルが保証してくれますわ」
「ええ。保証します。アメリーはフィルミーナ嬢と、一切の交流がありません」
サラ様は顔を真っ赤にし、怒り狂い始めました。
「なによ!なによ!なによ!そんなにカイルの婚約者になりたかったの!?今まで一切出てこなかったじゃない!!それにウィル!あんたまでグルだったのね!!!酷いわ!!!」
ワナワナと震えている、サラ様。
「まぁ!私の婚約者を愛称で呼ぶ程、仲がよろしいのかしら?嫉妬してしまいますわぁ~
私、ウィルが大好きですの。もしも、マナーもなっていないような男爵令嬢と「恋に落ちた」等と言われましたら…嫉妬に狂って、お相手の男爵令嬢を、虐めてしまいそうですわぁ~
フィルミーナ嬢も、こんなお気持ちだったのかしら?酷いのはどちらなのでしょうねぇ?」
それからそっと彼女の耳元で、
「貴女のお相手がもしもウィルだったら、既に貴女はここには居りませんわ。
私は、虐めてなんて生ぬるい事、絶対にして差し上げませんもの。
カイル殿下を選んで、お優しいフィルミーナ嬢に虐めて頂けて、本当に運が良かったですわね?」と、囁いた。
すると、感情の制御が効かなくなったのか、私に対して、泣きながら殴りかかってきた。
即座にウィルが、私を庇い立ちました。
暴力を振るったサラ様を止めるため、殿下がサラ様の腕を掴み止めながら、サラ様の頬を叩いた。
パシンと乾いた音が会場に響く。
「もうやめるんだサラ!衛兵!サラを連れていけ」
と、半ば強引にサラ様を止められました。
サラ様は泣きながら、喚き続けておりましたが、衛兵に連れられて会場を後にしました。
きっと殿下は強引にでも、サラ様の命を守るために行動されたのでしょう。皮肉ですが、サラ様は本当に愛されていたようですわね。
「フィルミーナすまなかった。許されるとは思わないが、後日改めて謝罪させて欲しい。大変申し訳なかった」
「…いえ」
と、フィルミーナ嬢が小さく答えた。
「皆もすまない。騒がせてしまい、申し訳ない。これから残りのパーティーを楽しんでほしい。そして、アメリー嬢。間違いに気付かせてくれたこと、感謝する」
と、告げられたので、静かに黙礼を致しました。
殿下は会場を去り、王宮へと報告に向かわれたようです。
フィルミーナ嬢も、心労が募ったためか、すぐに会場を去られました。心中お察し致しますわ。
………………
私はその後、同じ派閥のご令嬢達に、
「不思議に思ったことを、いくつか聞いただけですのに、大変なことになってしまいましたわぁ~」
と、のほほんと、言ってのけました。
すると、ご令嬢方から、
「アメリー様!とてもカッコよかったですわ!私キュンとしてしまいました!」
「殿下もきっと惚れてしまいますわ!」
「フィルミーナ嬢なんて敵じゃないですわ!」
「それにしても、あの男爵令嬢は思っていたより、野蛮で破廉恥で驚きましたわぁ~!」
等、様々な反応でしたが、概ね良好でした。
そして、令嬢達と楽しいお喋りをしたり、
ウィルとダンスや食事をしたり、「先程は素敵でしたわ~」と、ウィルにお伝えし、ウィルの顔を真っ赤に染めたり致しました。
私の婚約者様は、本当に可愛くて素敵ですわぁ。
色々と事件はありましたが、私はその日のパーティーをとても楽しみました。
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