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王族って本当に屑ですね。どいつもこいつも自分のことしか考えない

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 それから私はマリアージュを家族から引き離すために尽力した。
 この国では17歳で成人となる。私は15歳、マリアージュは13歳で未成年のため、子どもを親元から離すのは良くないと反対する周囲の説得に一月もかかってしまったが、なんとかマリアージュ王宮で保護することに成功した。



 それからはよく周囲を観察した。すると、今まで見えていなかった世界が見えてきた。

 よく気が利くと思っていた侍女は、私に色目を使っているだけだった。彼女は私のそばにはべるために他の侍女に自分の仕事を押し付けていた。
 それだけではなく、私が見ていない隙にマリアージュを睨みつけ、敵意を剥き出しにしていた。横目で確認したから間違いない。
 その侍女にはすぐ暇を出した。

 有能な側近は、私の近衛騎士に恋をしていた。
 側近も近衛騎士も男だ。
 本人に確認はしていないが、側近の視線の先にはいつも私の近衛騎士がいる。その近衛騎士はつい先日、婚約者の女性と結婚したばかりだ。
 今思えば、彼が結婚した日は滅多にミスをしない側近が何度もミスをしていた。何となく目も赤かったような気がする。
 私は側近に惚気のろけ話をするのをやめた。
 ちなみに側近に婚約者はいない。


 ──ウィルフリード殿下は少々人の感情に疎いところがございますね。

 以前リリアナに言われたとおりだった。

 マリアージュを守るために、私はもっとリリアナから学ばなくてはならない。
 そう思い、改めてリリアナを観察した。
 リリアナは光属性魔法の使い手でなくても、それを補ってあまりあるほどの才能がある。
 もう一度彼女を呼び出して教えを請いたかったが、なぜかそれをするととんでもない事になりそうな気がして呼び出せなかった。

 ハーランとリリアナの定例の茶会を遠くから双眼鏡を使ってこっそりと覗く。彼らの茶会はほとんど庭園の四阿あずまやで行われる。リリアナの希望らしい。




 ──様子がおかしい。

 リリアナが席に着いてから10分は経っているが、弟はまだ来ない。リリアナは気にしていないのか、紅茶を飲みながらゆったりと本を読んでいる。時間は合っているはずだが。

 ──さらに10分が経過した。弟はまだ来ていない。
 リリアナは1度本を閉じ、庭を見ながら茶菓子を食べている。
 ふと彼女は近くにいた侍女に声をかけた。彼女が侍女に何かを言い、侍女はどこかに去って行く。

 それから10分後、先ほどの侍女が茶菓子の入った籠を持って戻ってきた。それをリリアナに渡していることから、おそらく先ほどリリアナが頼んだのだろう。よほど美味しかったのだろうか。
 すると、ようやくハーランが侍従を連れてやって来た。ハーランは不機嫌そうに眉をしかめ、侍従はひどく疲れた顔をしている。

 ──どういうことだ?

 ハーランが遅れた謝罪もせず席に着くと、侍女は何事もなかったかのように紅茶を入れた。
 それと同時にリリアナはおもむろに席を立ち、ハーランに何かを告げ、優雅に一礼して四阿を出た。
 ハーランは呆気に取られたような顔をしていたが、我に返ると立ち上がってリリアナを怒鳴りつけた。

「おい! 不敬だろ!!」

 その声は遠く離れた私にも聞こえたが、リリアナは気にする素振りもなく歩き去った。


 ──何だこれは。
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