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王族って本当に屑ですね。どいつもこいつも自分のことしか考えない
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「ウィルフリード殿下は少々人の感情に疎いところがございますね」
事の一部始終を話した私に、リリアナはそう言ってのけた。
そのような事を言われたのは初めてだった。私は眉を寄せ、つい不快感を顔に出してしまう。
「ご不快にさせてしまったようで申し訳ございません。立場をわきまえず発言してしまったこと、深くお詫び申し上げます」
リリアナはすぐに謝罪した。
だが、その丁寧な口調とは裏腹に、無表情に私を見るその目には私に対する強い拒絶が表れていた。
失敗した、と直感的に感じた。このままではリリアナは何も話さない、何とかしなければ、と慌ててこちらも謝罪する。
「いや、こちらこそすまない。君には正直な意見を聞きたいと思って呼び出したのに、失礼な態度をとってしまった。どうか見限らず、力を貸して欲しい」
私の謝罪に納得してくれたのか、リリアナはマリアージュについて自分の考えを話してくれた。
「マリアージュ様の悩み種は、ウィルフリード殿下ではなくご家族にございます。もっと言えば、妹のクリスティーナ様に」
「どういうことだ?」
「詳細はご自身でお調べ下さい。私はただ、殿下の要望に従って自分の意見を述べただけ。マリアージュ様から直接伺ったわけでも、証拠があるわけでもございません」
「マリーから聞いたわけでもないのに、なぜクリスティーナが原因だとわかる?」
「見ていればわかります」
「……私にはわからないが」
「例えば、こういう事です。ウィルフリード殿下は幼少期から王太子として周囲から期待され、厳しい教育を受けてこられましたよね。両親と触れ合える時間も少なく、さぞお寂しい時間を過ごされたことでしょう。ですが、弟のディラン殿下はそうではなかった。ご両親である国王夫妻は、第一子である貴方と触れ合えなかった分、次に生まれたディラン殿下と過ごす時間を持たれたのではありませんか?」
「急に何を」
「まぁ、お聞きください。当然貴方は嫉妬し、両親の愛情を求めますが、甘えることを知らない貴方はその方法がわからなかった。周囲の期待に応える事でしか愛情を表現できず、より勉学に励みましたが、賞賛は得られても自分の望んだ愛情を得ることはできなかった。王妃様もお亡くなりになり、貴方は次第に愛情を得ることを諦め、家族や周囲への関心を無くすことで自分を守ります。そのためディラン殿下と貴方の仲は、良くもないし悪くもない。関心がありませんから」
「……」
「ですがハーラン殿下のことは少し気に入っているようですね。彼は王妃様とよく似た顔立ちで、素直に貴方を慕ってきますから。そしてマリアージュ様は貴方の初恋で婚約者、貴方にとっては初めて望んだ愛情を返してくれた方です。マリアージュ様と結婚するためならどんなことでもしてしまうほど、深く執着されているのではないですか?」
──不本意だが当たっていた。自覚があるところも、ないところも全て。
「光属性魔法には心を読む魔法もあるのか?」
「まさか。そんな魔法は使えません。私はただ、今までのウィルフリード殿下の言動や周囲の環境から予測を立てただけです。当たっていましたか?」
「……たぶんね。わかった。君を信じる。公爵家を調べよう。……どうやってその技術を身につけたんだ?」
彼女はまだ10歳だ。何か特別な訓練を受けない限り、こんな芸当できるはずがない。
「私は特に何もしていませんが。まぁ、敢えて言うなら観察することでしょうか。その人がどういう意図を持ってその言動をしたのか、なぜそういう考えに至ったのか、観察して分析する。それだけですよ」
「……君はまだ10歳だよな?」
「はい。お話が以上でしたら、私はこれで」
返事をする前に彼女は席を立っていた。何か彼女の気に障ってしまったのかもしれない。まだ聞きたいことはあったが、私は慌てて礼を言い、彼女を見送るために立ち上がる。
「ああ。ありがとう、助かったよ。また何かあったら相談してもいいかな?」
リリアナは笑みを浮かべるだけで、何も言わずに部屋を出ていった。
事の一部始終を話した私に、リリアナはそう言ってのけた。
そのような事を言われたのは初めてだった。私は眉を寄せ、つい不快感を顔に出してしまう。
「ご不快にさせてしまったようで申し訳ございません。立場をわきまえず発言してしまったこと、深くお詫び申し上げます」
リリアナはすぐに謝罪した。
だが、その丁寧な口調とは裏腹に、無表情に私を見るその目には私に対する強い拒絶が表れていた。
失敗した、と直感的に感じた。このままではリリアナは何も話さない、何とかしなければ、と慌ててこちらも謝罪する。
「いや、こちらこそすまない。君には正直な意見を聞きたいと思って呼び出したのに、失礼な態度をとってしまった。どうか見限らず、力を貸して欲しい」
私の謝罪に納得してくれたのか、リリアナはマリアージュについて自分の考えを話してくれた。
「マリアージュ様の悩み種は、ウィルフリード殿下ではなくご家族にございます。もっと言えば、妹のクリスティーナ様に」
「どういうことだ?」
「詳細はご自身でお調べ下さい。私はただ、殿下の要望に従って自分の意見を述べただけ。マリアージュ様から直接伺ったわけでも、証拠があるわけでもございません」
「マリーから聞いたわけでもないのに、なぜクリスティーナが原因だとわかる?」
「見ていればわかります」
「……私にはわからないが」
「例えば、こういう事です。ウィルフリード殿下は幼少期から王太子として周囲から期待され、厳しい教育を受けてこられましたよね。両親と触れ合える時間も少なく、さぞお寂しい時間を過ごされたことでしょう。ですが、弟のディラン殿下はそうではなかった。ご両親である国王夫妻は、第一子である貴方と触れ合えなかった分、次に生まれたディラン殿下と過ごす時間を持たれたのではありませんか?」
「急に何を」
「まぁ、お聞きください。当然貴方は嫉妬し、両親の愛情を求めますが、甘えることを知らない貴方はその方法がわからなかった。周囲の期待に応える事でしか愛情を表現できず、より勉学に励みましたが、賞賛は得られても自分の望んだ愛情を得ることはできなかった。王妃様もお亡くなりになり、貴方は次第に愛情を得ることを諦め、家族や周囲への関心を無くすことで自分を守ります。そのためディラン殿下と貴方の仲は、良くもないし悪くもない。関心がありませんから」
「……」
「ですがハーラン殿下のことは少し気に入っているようですね。彼は王妃様とよく似た顔立ちで、素直に貴方を慕ってきますから。そしてマリアージュ様は貴方の初恋で婚約者、貴方にとっては初めて望んだ愛情を返してくれた方です。マリアージュ様と結婚するためならどんなことでもしてしまうほど、深く執着されているのではないですか?」
──不本意だが当たっていた。自覚があるところも、ないところも全て。
「光属性魔法には心を読む魔法もあるのか?」
「まさか。そんな魔法は使えません。私はただ、今までのウィルフリード殿下の言動や周囲の環境から予測を立てただけです。当たっていましたか?」
「……たぶんね。わかった。君を信じる。公爵家を調べよう。……どうやってその技術を身につけたんだ?」
彼女はまだ10歳だ。何か特別な訓練を受けない限り、こんな芸当できるはずがない。
「私は特に何もしていませんが。まぁ、敢えて言うなら観察することでしょうか。その人がどういう意図を持ってその言動をしたのか、なぜそういう考えに至ったのか、観察して分析する。それだけですよ」
「……君はまだ10歳だよな?」
「はい。お話が以上でしたら、私はこれで」
返事をする前に彼女は席を立っていた。何か彼女の気に障ってしまったのかもしれない。まだ聞きたいことはあったが、私は慌てて礼を言い、彼女を見送るために立ち上がる。
「ああ。ありがとう、助かったよ。また何かあったら相談してもいいかな?」
リリアナは笑みを浮かべるだけで、何も言わずに部屋を出ていった。
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