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プロローグ

劣等感の表れ

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精霊召喚の儀から2日後、王都の魔法学校で入学式を受けていた。
木造づくりの体育間の中、校長先生の話を聞く。
「我が魔法学校は今年で創立50周年を迎えます。この記念すべき年に貴方たちのようなやる気に満ち溢れた生徒を入学生として迎えられたことをアステト神に感謝します」
俺を含めてやる気のある奴はそう多くない気がするが…。
校長先生の話が終わると国王が話をし始めたが、長々と話した割には内容は薄っぺらく、つまりは頑張ってくれとの事だった。
入学式が終わると事前に渡された紙に書いてある教室に移動した。
1-5、それが俺の通うことになるクラスだ。
教室に入るとたくさんの人がいた。
大体50人ほどだろうか、全体的には女子が多いような印象を受けた。
教室の東側の壁には黒板が設置されてあり、それに対面する形で机と椅子が配置されている。
黒板にはどの人がどの机に着けばいいのかが書かれていた。
俺は一番北の後ろから2番目の席だった。
席に着いたがやることが無くて暇をしていると、後ろから声を掛けられた。
「よっ!これからよろしくな!」
後ろを向くと鮮やかな赤色の髪をした男子がした。
「よろしく、俺はレン。君は?」
「俺はライトっていうんだ。レンの席の1つ後ろが俺の席だから何かと絡むこともあるかもしれないからな。あと俺が暇な時の話し相手になってくれ!」
「わかったよ。俺でよければいつでも話し相手になる」
俺がそう言うと、ライトはにっこりと笑い、すでに暇だったのか、話をし始めた。
「精霊が宿るときに精霊紋ってのが出来るだろ、それ見せてくんねえか?」
「精霊紋なんか見て何か意味があるのか?」
そう言いながらライトに右手の甲に書かれている精霊紋を見せた。
「精霊紋ってのはな精霊との契約の証であるとともに精霊が宿主をどれだけ信頼・尊敬しているかが分かるんだよ。レンは……まだ魔法を使ったことがないのか。信頼・尊敬度が+でも-でもないみたいだ」
精霊紋でそんなことが分かるのか。と感心しながら自分の精霊紋を見たが全く分からない。
そんな俺を見て、ライトが「ただ見るだけじゃ分からないぞ。それなりに専門知識がいるんだ」と言った。
「まあ、信頼・尊敬度を確認する程度ならちょっと勉強すれば出来るようになるさ。なんなら教えてやろうか?」
「いや、やめとく。入学直後であんまり余裕が出来そうにないからさ。余裕が出来たらまた教えてくれないか?」
「おう、まかせとけ!」
その後、クラスでは自己紹介などがあり、みんなについて少しは知ることが出来た。
自己紹介が終わると入学初日なのでこれくらいで終わって、あとは自由行動になった。
大体の人たちは寮に帰って荷物整理などをするらしく、俺もそうすることにした。
寮は複数存在していて、俺が住むことになるのは第3棟だ。
寮は全体的に白色が使われていて、所々に青色が使われている。
フロントを通り受付口で部屋の鍵を貰う。
寮は1部屋2人組で今日初めてルームメイトと対面する。
自分の部屋に向かう間、寮の魔法の訓練を行う修練場で魔法を試し撃ちしている生徒などがいた。
俺はまだ魔法の発動方法が分からないため立ち寄らなかったが、いつかはやってみたいものだ。
そのまま階段を上がり、3階の自分の部屋に着いた。
部屋の扉を開き、中に入ると金髪の男子がいた。
「よろしく」
「……」
挨拶をしたが金髪の男子は反応することなく、荷物の整理をしている。
感じの悪い奴だと思ったが口に出すことは無く、俺も荷物の整理を始めた。

翌日、クラスで魔法の実技訓練が行われることになった。
「みなさんは大半の方が魔法の使い方を知らないと思うので説明しようと思います」
先生がそう言った。
ありがたい、このまま魔法の使い方が分からないでは困っていた。
「使用者が精霊に自らの魔力を与えて、それを受け取った精霊が魔力を魔法に変換し、使用者の要望に沿うように発現させる。これが魔法だ。魔法を発動させる時は、精霊に自らの魔力を与える感覚でやればいい。最初は感覚が理解できなくて困難すると思うが、1度発動出来ればそれ以降は簡単に出来るようになる。頑張ってくれ」
そう言われ、学校に配置されている魔法訓練所に向かった。

クラスの1人1人に的が用意されている。
みんなそれぞれ的の前に立ち魔法を続々と発動させていっている。
炎の球や氷のつぶてなどの色々な魔法をみんなが発動させる中、俺は魔力を与えるという感覚がよく解からなく、困難していた。
1度落ち着いて考えよう。
精霊が宿っていった場所に出来た精霊紋。
精霊に魔力を与えるというのはもしかして精霊紋に魔力を与えるのと同義なのではないだろうか。
魔力というものは誰かに教えてもらったわけではないのだが、生物として本能的に分かる。
魔力を精霊紋にのある場所に集め、炎魔法の発動を願う。
すると、右手を炎が包んだ。
そのまま炎の球を手のひらで作り、そしてそれを的に向けて投げた。
炎の球は的の端に当たり、少し的を焦がした。。
成功したので他の人はどんな感じだろうと目を向けると――

「すごい……」

――そこには炎の球で的を焼き切る者や、つららに近い形状をもので的を貫いたりしている者がいた。
さっきまで俺と同じくらいのレベルの魔法しか出せていなかった者もそんな過去は無かったかのように、的に大きな損害を与えていた。
ということは、俺もあのレベルの魔法が出せるかもしれないということだ。
もう1度、精霊紋に魔力を集め魔法を発動させた――

――寮に歩きながら帰っている途中に俺は思った。
俺は結局、的に大した損害を与えることが出来なかった。
訓練後に発表された5段階評価の成績でも、俺だけ1だった。
俺は弱いのか?他より劣っているのか?
誰かに聞かなくても分かる。
俺は弱く、そして劣っていると。
そんなことを考えている間に寮に着いた。
フロントを通ろうとしているとルームメイトの金髪男子が受付の人と話していた。
話の内容が聞こえるほどの声の大きさで喋っているみたいだ。
「俺はあんな奴と一緒の部屋なんて嫌なんだよ!まだ1部屋2人組ってだけなら我慢できたが、あいつの魔法の成績1だぞ!?俺の成績は5だ!俺みたいな優秀な奴があいつと同じ部屋なんておかしいだろ?今すぐ他の奴と部屋を取り換えてくれ!」
そんな事を受付に怒鳴りつけていた。
俺はこのままフロントを通って絡まれるのも嫌だったから、裏口に回って部屋に帰った。
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