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5 攻略対象キャラ4
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爆発音と同時に、近くの教室からガラスが割れる派手な音がした。古い記憶がよみがえったねえ、あれは前世で空爆をうけたときのことだ。まあ日本の場合、落とされたのはほとんど焼夷弾だから、あのとき1トン爆弾が近くに落ちたアタシは、けっこう珍しい経験したのかもしれないけど。
「御前さま、おさがりをっ」
フリッツが影から姿を現し、アタシをかばって立ちはだかった。その表情には警戒感があらわになっている。
「魔法かい?」
「ええ、魔法です。それも攻撃魔法━━」
襲撃の第二弾を警戒するフリッツの元に、さらに獣人が現れた。獣耳をはやした小さな女の子━━たしかミアって名前だったかね。
「報告、します。1カルマール以内、敵影、ないです。そこの教室、男の人、倒れてるですっ」
「設置型魔法の痕跡は」
「魔力のコンセキ、たぶん、ないです」
「たぶんではない。御前さまの安全に関わることだぞ」
フリッツがたしなめると、ミアは顔を青くして爆発があった教室に飛び込んでいった。その間にもフリッツは幾人かの獣人から報告を受け、警戒を続けていた。
警戒態勢が完全に解けたのは、それからわずか5分後のことだった。ミアが教室の中から、ひとりの小僧を引きずってくる。
「ひいぃっ、こ、ころさないでください!」
小僧がおびえるのも無理ないだろうさ。獣人族は数が少ないうえに身分が低い。あんまり良いイメージがなかっただろうから。しかもミアは手に短刀をもって、小僧の首根っこをつかんでいる。やってることは、ほとんど山賊だ。
「あ、あなたたちは何者なんですかっ」
「それはこちらが聞きたい」
フリッツが小僧に訊ねる。
「いまの爆発はなんだ。おまえがやったのか」
「あ、あ、あ…」
「それではわからん。はっきり答えろ」
フリッツにナイフを突きつけられて、小僧は真っ青になって答える。
「すみませんっ、すみませんっ、術式の起動回路に、うっかり魔力をそそいでしまったんですっ」
「うっかりだと?そもそもなぜ『学園』で攻撃魔法の術式を展開する?」
「それは、その、趣味で」
「そんな趣味があるか!」
「ヒーッ」
ナイフをチラつかされて、小僧はガクガク震えだした。それから救いを求めて視線を彷徨わせ、アタシをみつけると、地べたをはいずって近づいてきた。
「お嬢さんっ、この人たちになんとか言ってください、あなた知り合いなんでしょっ」
「ああ、まあ知り合い、だけどねえ」
こりゃ参ったよ。こんな怪しい獣人集団と、善良な伯爵令嬢がいっしょにいたんじゃ、変な噂になるかもしれない。だけどいまさら誤魔化すのも難しそうだ。
「あんた、口は固いほうかい?」
「助けてくれるなら、ダイヤモンドより硬くなりますっ」
「それじゃ、アタシがこいつらといっしょにいたこと、黙っててくれるかい?もし人に喋ったりしたら…」
小僧の背後にぬるりと近づいたフリッツが、その喉仏にナイフを這わせる。小僧が生唾を飲み込んだ。
「だ、誰にも言いません…」
「よし、良い子だ。それじゃあボウズ、名前と住所を教えてもらおうかねえ」
「3年B組、エルマー・フォン・シュレンドルフっ、住所はっ」
「ああ、住所はいい。冗談だから」
「は、はは…」
乾いた笑いを漏らすエルマーを見て、そろそろ解放してやろうかと考えた刹那、アタシはハッと気づいた。エルマーの容姿だ。
背丈は180センチほどもあるだろう長身で、ストレートの青い髪を腰まで伸ばしている。瞳は黒に近いが、光に透かすとこちらも青みがかっていた。問題はその顔立ちさ。
気弱そうにみえるが、そんなところが母性をくすぐるタイプの━━エルマーは間違いなく美形とよべる面立ちだったのさ。
「エルマー、ちょいとあんたに訊ねたいんだがね。あんた、アタシになにか用があったのかい?」
「よ、用、ですか?」
「そうさ。このアタシを待ち伏せして、そこの教室で魔法を爆発させたのかい?」
「いいえ、まさかっ。だいたい、そこは魔導科3年の、私の教室ですし、だから私がそこにいるのは、当たり前っていうか…」
「入学式の日だ、3年は休みじゃないのかい?」
「私は魔導科の首席ですから、あっ、魔導科は上級生が下級生の面倒を見ることになるので、首席の私が入学式で挨拶を…」
ああ、そういえば入学式でオドオド挨拶してたやつがいたような気がする。アタシは魔導科と関係ないから、とくに気にしてなかったけど。
「するとあんたは、3年の教室あたりをウロウロしてたアタシが悪いんで、自分はなにも企んでないって言うんだね?」
「悪いだなんて、そんなことは━━」
ヘラヘラこっちの顔色をうかがうエルマーだった。なんだかエルマーとアタシの間には、もう完全に上下関係ができあがっちゃったね。
だけどたしかにエルマーの言うとおりだ。アタシが3年の教室あたりをウロついていたのは、保健室の帰りにうっかり迷ってしまったからさ。するとやっぱりこれは偶然?
とりあえずエルマーを釈放したあと、アタシは裏影に重ねて調査を命じた。だってどう考えても出来すぎだろ。入学式の日に美形が5人、アタシの前に現れて、ちょっとした言葉を交わしたりするなんてさ。まるで登場人物紹介だ。
…そうやってかなり怪しんでいたアタシだが、結局、調査をしてみたところで、5人に共通点は見つからなかった。ホントにこりゃ、どういうことなんだろうねえ。
「御前さま、おさがりをっ」
フリッツが影から姿を現し、アタシをかばって立ちはだかった。その表情には警戒感があらわになっている。
「魔法かい?」
「ええ、魔法です。それも攻撃魔法━━」
襲撃の第二弾を警戒するフリッツの元に、さらに獣人が現れた。獣耳をはやした小さな女の子━━たしかミアって名前だったかね。
「報告、します。1カルマール以内、敵影、ないです。そこの教室、男の人、倒れてるですっ」
「設置型魔法の痕跡は」
「魔力のコンセキ、たぶん、ないです」
「たぶんではない。御前さまの安全に関わることだぞ」
フリッツがたしなめると、ミアは顔を青くして爆発があった教室に飛び込んでいった。その間にもフリッツは幾人かの獣人から報告を受け、警戒を続けていた。
警戒態勢が完全に解けたのは、それからわずか5分後のことだった。ミアが教室の中から、ひとりの小僧を引きずってくる。
「ひいぃっ、こ、ころさないでください!」
小僧がおびえるのも無理ないだろうさ。獣人族は数が少ないうえに身分が低い。あんまり良いイメージがなかっただろうから。しかもミアは手に短刀をもって、小僧の首根っこをつかんでいる。やってることは、ほとんど山賊だ。
「あ、あなたたちは何者なんですかっ」
「それはこちらが聞きたい」
フリッツが小僧に訊ねる。
「いまの爆発はなんだ。おまえがやったのか」
「あ、あ、あ…」
「それではわからん。はっきり答えろ」
フリッツにナイフを突きつけられて、小僧は真っ青になって答える。
「すみませんっ、すみませんっ、術式の起動回路に、うっかり魔力をそそいでしまったんですっ」
「うっかりだと?そもそもなぜ『学園』で攻撃魔法の術式を展開する?」
「それは、その、趣味で」
「そんな趣味があるか!」
「ヒーッ」
ナイフをチラつかされて、小僧はガクガク震えだした。それから救いを求めて視線を彷徨わせ、アタシをみつけると、地べたをはいずって近づいてきた。
「お嬢さんっ、この人たちになんとか言ってください、あなた知り合いなんでしょっ」
「ああ、まあ知り合い、だけどねえ」
こりゃ参ったよ。こんな怪しい獣人集団と、善良な伯爵令嬢がいっしょにいたんじゃ、変な噂になるかもしれない。だけどいまさら誤魔化すのも難しそうだ。
「あんた、口は固いほうかい?」
「助けてくれるなら、ダイヤモンドより硬くなりますっ」
「それじゃ、アタシがこいつらといっしょにいたこと、黙っててくれるかい?もし人に喋ったりしたら…」
小僧の背後にぬるりと近づいたフリッツが、その喉仏にナイフを這わせる。小僧が生唾を飲み込んだ。
「だ、誰にも言いません…」
「よし、良い子だ。それじゃあボウズ、名前と住所を教えてもらおうかねえ」
「3年B組、エルマー・フォン・シュレンドルフっ、住所はっ」
「ああ、住所はいい。冗談だから」
「は、はは…」
乾いた笑いを漏らすエルマーを見て、そろそろ解放してやろうかと考えた刹那、アタシはハッと気づいた。エルマーの容姿だ。
背丈は180センチほどもあるだろう長身で、ストレートの青い髪を腰まで伸ばしている。瞳は黒に近いが、光に透かすとこちらも青みがかっていた。問題はその顔立ちさ。
気弱そうにみえるが、そんなところが母性をくすぐるタイプの━━エルマーは間違いなく美形とよべる面立ちだったのさ。
「エルマー、ちょいとあんたに訊ねたいんだがね。あんた、アタシになにか用があったのかい?」
「よ、用、ですか?」
「そうさ。このアタシを待ち伏せして、そこの教室で魔法を爆発させたのかい?」
「いいえ、まさかっ。だいたい、そこは魔導科3年の、私の教室ですし、だから私がそこにいるのは、当たり前っていうか…」
「入学式の日だ、3年は休みじゃないのかい?」
「私は魔導科の首席ですから、あっ、魔導科は上級生が下級生の面倒を見ることになるので、首席の私が入学式で挨拶を…」
ああ、そういえば入学式でオドオド挨拶してたやつがいたような気がする。アタシは魔導科と関係ないから、とくに気にしてなかったけど。
「するとあんたは、3年の教室あたりをウロウロしてたアタシが悪いんで、自分はなにも企んでないって言うんだね?」
「悪いだなんて、そんなことは━━」
ヘラヘラこっちの顔色をうかがうエルマーだった。なんだかエルマーとアタシの間には、もう完全に上下関係ができあがっちゃったね。
だけどたしかにエルマーの言うとおりだ。アタシが3年の教室あたりをウロついていたのは、保健室の帰りにうっかり迷ってしまったからさ。するとやっぱりこれは偶然?
とりあえずエルマーを釈放したあと、アタシは裏影に重ねて調査を命じた。だってどう考えても出来すぎだろ。入学式の日に美形が5人、アタシの前に現れて、ちょっとした言葉を交わしたりするなんてさ。まるで登場人物紹介だ。
…そうやってかなり怪しんでいたアタシだが、結局、調査をしてみたところで、5人に共通点は見つからなかった。ホントにこりゃ、どういうことなんだろうねえ。
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