悪役令嬢、メイドさんになる~転生先は処刑待ちの牢屋スタートです~

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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで

貴女には、メイドになってもらう

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 部屋に入ってきたアレンは、軽そうな袋をいくつか手に持っており、その全てをテーブルに置いた。
そしてテーブルを持ち私の側に置くと、ついでのように椅子にかかる縄を引っ張り、私の拘束を解いた。
本当に緩い拘束だったんだなと改めて思う。そんな拘束ならするなよ。

 嘘は、バレていないだろうか。
顔色を見るが何も分からない。

 アレンは、側にあった茶色い椅子の背を掴み方向を変え、自由になった私と向き合う形で椅子に座った。

「犯人を知っているような口振りだったが、それが誰か分かるか」

「……顔や姿を見れば。見れば分かると思う」

 私の頭の中には、七変化した彼らの映像がある。姿を見れば分かるだろう、きっと。

「犯人捜しに協力すれば、死刑にはならない。場合によっては、刑を軽くする事もできる。選択肢はないようなものだが、協力するか」

私が頷くとアレンは袋から、細い銀色の輪っかを取り出し、私に立つよう促した。

「これを右足に着けるから上げてくれ。そこでいい」

 スカートを手で持ち、着けやすいよう足を晒す。待ったが掛かったので太ももの上の方で止めて押さえる。
どうやって着けるのだろうか。

 アレンが輪を太ももに当てた。輪が冷たい。
太ももに当たると、その輪は開き、開いた箇所が太ももを通り過ぎると、それは閉じてまた輪になった。

そしてキュッと収縮し、輪との隙間が一切なくなった。
輪を掴んで揺らし、ずれないことを確認したアレンが尋ねる。輪の冷たさに反し、アレンの手が温かく、とても居たたまれなかった。

「どういう感じだ?」

恥ずかしい感じですかね。

「特に何も。違和感もありません。恐ろしいほどぴったりです」

 言いながら、私は銀色の輪との間に隙間を作ろうとしてみるが、びくともしない。爪で軽く叩くと、コツコツコツと軽い音がした。

「城外に出れば、足は切断される」

 え?アレンから衝撃の言葉が発っせられた。

「衝撃を与えれば足が締め付けられる。外すのが無理ならと、壊そうとする者がいたが、止めた方が良い。外すのは任務が終わってからだ。
その位置だと、他の者が見る事もないだろう」

 衝撃は続く。

「貴女には、メイドになってもらう」


 ───第1章【終】───

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