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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで
教科書事件
しおりを挟む「私が彼女の教科書を破き、それを本人や殿下に見られた……」
あの時、レオやリリアベル嬢と共に教室に入ると、一つの席に紙が散乱していた。
机の上にも周りにも教科書の残骸があり、そして───。
「でもあれ、私じゃないの」
側にはジゼレーナがいた。
レオはすぐに、彼女の両手にあった物を取り上げた。
「貴女が手にしていた二つの物を合わせたら、一つの教科書に近い形になった」
嘘も大概にしろとその時あった事を言うと、彼女は苦笑して答えた。
「あれはタイミングが悪かったわ。彼女の教科書を破いた直後のようになっていた」
直後も何もと俺は思わず眉を寄せたが、彼女はそれに反応することなく話を続けた。
「私は、彼女があの惨状を見る前に、全てを片付けるつもりだったの。あれはさすがに酷かったから。
教科書も元に戻しておこうと思ったの。彼女がどの教科を受けているのかを知らなかったから、くっつけて探していたの。
先にどこかへ運ぶべきだったわ。でも、途中で誰かに見られたら面倒だし、貴方方も、もう帰ったものと思っていたのよ。
でも彼女が来た。彼を連れて」
普段なら帰っていた時間だったが、リリアベル嬢が忘れ物をしたとかで取りに戻ったのだ。嫌がらせも悪質化してきていて、一人での行動は危なく、俺達はリリアベル嬢についていった。
「そして彼は私を疑う。
私だって弁明したかったわ。でも、彼と彼女が一緒にいる所を見たのはあの時が初めてで。動揺してしまって、何も話せなかったの。
誤解をされるような状態でいたのは私だけれど、もっときちんとしっかり、私の話を聞いて欲しかったわ。後でもいいから、聞きに来て欲しかった。
私からは行けなかったの。彼に会ったら、彼女を気遣う姿を思い出して、泣いてしまいそうで。
彼の婚約者として、そんな醜態を見せる訳にはいかないし、彼や王妃様に幻滅されたくなかったの」
「貴女自ら片付ける必要はなかった。普段の貴女なら人にやらせていた」
「そう。……そう。……そう」
少し話を戻して彼女の反応を見ると口籠ったので、核心を突いたと思ったが、彼女はその後を綺麗に続けた。
「……そう、そうなのよ。そうなのよ。
私も、本当はあんな事したくなかったのよ。そのせいで、動きが遅くなってしまって……それも悪かったのね。
でも、もし私のした事が伝わって、彼女からお礼を言われたら。そう考えると鳥肌が立って。
でも、放っておいたら、私の所為になってしまうでしょう?
内密にと指示を出しても、情報は漏れるものなのよ。
自分でした事の後片付けだと言われるわ。教科書を破いたは良いけれど、結構な事をしてしまったのに気が付いた、みたいな。
それが嫌だったから、一人でやったの。
結局、私は彼に見られて、噂は真実になってしまったのだけど」
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