悪役令嬢、メイドさんになる~転生先は処刑待ちの牢屋スタートです~

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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで

エイレン美少年

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美少年をこの目でとらえたその瞬間。私の頭の中に現れる映像全てが、美少年の映るものに代わり、私の脳内は美少年で埋め尽くされた。最高。

 美少年───彼の名はエイレン・ジグル。建国当初から国に仕えているジグル伯爵家。優秀な文官を多く輩出しており、彼も文官になるとかならないとか。
その中性的な美しさは、天界中の天使達が試行錯誤をして作り出した傑作とまで言われている。

確かに。中性的な美しさというものを究極に突き詰めた様な姿。女性と言われても信じられる華奢な体。抱き締めたいという思いが心の奥底から湧き出てくる。それなのに男性にも見える。これが中性というものなのか。

不審な目で私を見るエイレン美少年の、ふわりとした淡い髪。繊細で柔らかそうな髪の色は白……ではない……。薄いクリーム色……落ち着いた淡い色の髪。そう、パールホワイト。

嫌そうな顔をしているエイレン美少年の、輝く大きな瞳。色は遠目だから余り正確には分からないけれど……映像の方を見るか。映像に意識を持っていく。ここまでする理由は、彼が美少年だからに他ならない。

ピンクと言うか銀と言うか、この子複雑な色合いね。髪といい目といい。淡い赤紫の瞳としておこう。綺麗な色だ。素敵。

意識の絶妙なバランスを保つのは辛いけれど、私は幸せだ。何この夢。感謝しかない。お目に掛かれないよこんな美少年。

突如、引いたような反応を見せてくれたエイレン美少年。

「なんか気持ち悪い……。早くしましょうよ」

うっ。可愛い!私は心の臓にダメージを受けた。
酷い言葉なのに、ここまでのダメージ。可愛らしい言葉を言わせせたらどうなるのだろう。美少年って怖い。

「そうだ。早く済ませよう。長引かせても良い事はない」

おっと、エイレン美少年に集中してしまって、隣に並ぶイケメン二人に気が付かなかった。
美少年の左に眼鏡、長髪と順に並んでいる。一番左の長髪は背が高く、エイレン美少年は背が低い。二人の間に立つ眼鏡はその中間。見事な階段となっている。
さっき話したのは真ん中の眼鏡だ。

「身内だからと気を使わなくていい。私とは血の繋がりもない上に、それは既にディティリア公爵家の人間ではない。これまで、妹と思った事は一度もない。それもそう思っているだろう」

眼鏡が眼鏡を直しながら、私を眼鏡越しに冷たい目で見た。

眼鏡……なんて酷い事を……。
妹と思った事は一度もないなんて……。
妹ちゃんはショックよ。

───ん?妹?えっ、私がこのイケメン眼鏡の妹?

頭に衝撃を受けた。敵襲かと思ったら映像だった。
あれ、映像も敵か?






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