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第1章 悪役令嬢がメイドに至るまで
これ以上悪行を重ねる前に死ねる事を喜べ
しおりを挟む今回の映像だが。情報過多だ。
前回は、流れに沿って、現実と同じ様な時間感覚で見ていた。だが今回は違う。頭の中で複数の情報や映像が一気に、そして大量に、物凄い速さで、現れては消え、消えては現れて。
それなのに無理なく頭に入ってくるという謎。大量の映像その全てが、私の記憶に溶けていく。背の低い頃と思われる映像を見たかと思えば、何だかよく分からない分厚めの本を読んでいたり。
グワァァーっと現れては、ズザァァーっと消えていく。
映像が終わる前に現れる映像。
現れた映像に重なる様に現れる映像に重なる様に現れる映像に重なる様に現れる映像に重なる様に現れる映像に……ああああああ!
ボサッと頭から顔を覆っていた何かが取られた。大量の映像が現れてからどれくらいの時が経ったのだろうか。眩しいと思って目を細めようとしたが、映像に気を取られていて眩しさを感じ取れなかった。
頑張って映像から意識を離して眩しさを感じようと試みていると、段々と徐々に焦点があってきた。
目の前には金髪のイケメン。目の色は青。
……レオだ。
うっわ!脳内の映像がレオ一色に。あっちこっちでレオが現れて現れて現れて。レオが何か話してるけど集中できない。ちょっと待って、今どっちのレオが話してるの?
「聞いているのか」
あれ、このセリフどっかで聞いたぞ。ああ。そういえば最初に言われたな。
また眉間に皺が。跡が残ったら私の所為ですな。面目ないっすわ。
おお。意識を別々に分ける事に成功したぞ。このままこれを維持せねば。
「今朝の事といい。いったい何を考えている。自分が死ぬ事を理解しているのか?避ける術はない。何を企もうとも無駄だ」
なんかこの人疑って掛かるよね。随分と前のような気がするのだけれど、あれって今朝の出来事だったのか。映像を沢山見たからかな。
「お前の生は今ここで終わる。これ以上悪行を重ねる前に死ねる事を喜べ」
今ここで終わる……今死ぬの?
今朝会った時に言っとけよ!兵士さんと気まずい沈黙を過ごす事もなかったじゃないか!いじわる!
───うっ。意識が映像の方に引っ張られた。レオ君が変な事言うから。
───目の前、階段の先に断頭台……もといギロチンさん。この格好で階段は上りたくねぇ。
レオが避けたのか私が歩いたのか。頭の端に映像を追いやっていたら、いつの間にか目の前に、私の命を刈る例のアイツが。
爽やかな青い空をバックに太陽の光を反射しながら、ギロチンさんが堂々と佇んでいる。私はこれで命を失うのね。
私がギロチンさんと見つめ合っていると、左の方から声が聞こえてきた。
「これで終わるんだね。今までの事を思えば、処刑なんて生温いけど」
澄んだ声なのに物騒な言葉を。その綺麗な声に、そんな言葉は似合わないよ。
新キャラかなと左を見ると、ギロチンさんとの距離と同じくらい離れた先に声の主と思われる存在がいた。
可愛らしく、儚げな、美少年。
ああ、夢よ……覚めないでくれ。
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