悪役令嬢、メイドさんになる～転生先は処刑待ちの牢屋スタートです～

第１章 悪役令嬢がメイドに至るまで

スープとパンの関係

　
永遠に続くかと思われた呪いの問答は、「だからお腹空いてるんだってぇぇぇ」という私の半泣きで終わりを迎えた。
恥ずかしくて兵士を見れない。
てか、悪いのは兵士の方だからな。私のお腹をいじめやがって。許すまじ。

俯うつむき、下を向く私の前に、スッと食事が置かれた。いつの間にか、兵士は中に入って来ていたようだ。

小さなパンと少量のスープ。
あれだけ私を焦じらした癖に。
牢にいる罪人だからか、これがこの世界の標準か。スプーンとかはなく、一つのお皿にパンとスープが入っている。手掴みスタイル。

私の手が綺麗かどうかだけ気になった。洗う水も拭く布も何もなかったので、身に着けているドレスの綺麗そうな所で軽く手を拭ぬぐった。
いただきますと脳内で唱え、手を合わせる。

始めにパンを手に取ったが、兵士に見られている気がする。私は諸事情あって兵士の方を見る事ができないから、確認ができない。鍵を閉める音がしたから、兵士は牢の外に出ただろう。

だが、視線を感じる。凄く食べ辛い。
もしかしたら、食べている間は見ていなきゃいけないのかも。仕事上。彼も仕方がないんだ。やりたくてやってる訳わけじゃないんだ。そう思っておこう。

なぜだか妙に緊張する。
早く食べたいのだが、パンが固い。とても噛めそうにない。
嫌がらせか。半泣きまでしたのに。
いや、そういう世界、または罪人の標準か。
カチカチだ。どうやって食べよう。

よくよくパンを観察してみると、一部が少し柔らかくなっていた。それでもまだ固そうではあったが。
この部分はスープに浸つかっていた部分だろう。スープに入れる事で、固いパンを柔らかくする。そうして食べるパンなのだろう。

まあ、それでどれくらい柔らかくなるのかは疑問だが。
だってまだ固そうなんだもの。
もっと柔らかくしようと水分を吸わせたら、次はスープがなくなるだろう。なんなら固い部分を残して。

スープの意味よ。
いや、パンを柔らかくして食べられるようにする。それがスープというもの。
なんか空腹で頭おかしくなってる。

見ていられなくなったのか、兵士が声をかけてきた。

「スープに浸すと柔らかくなって食べやすいですよ」

残念、遅かったな兵士よ。私は既にそれに気付いている。