キリング・ライズ

6

　週末にユミと花見をする約束をした。そして週明けに、店の営業を再開することにした。だが、俺にははっきりさせなきゃいけない問題が残っている。ユミのことだ。
　彼女は俺に好意を持っているらしい。男性として見ている、という意味だ。どう向き合えばいいのかは俺にも正直わからない。なにせ、彼女はまだ中学2年生なのだ。

　ここではっきりさせよう。そう、俺だって彼女が好きだ。愛していると言ってもいいのかも知れない。女として、と言うよりも、パートナーとして、と言うのが正確かーーーまるでレオンとマチルダみたいにーーー。俺は一番近くであの子を見守ってやりたい、包み込んでやりたい、ともに「世界は俺達のもの」と言ってやりたい、そういう想いが俺の中で渦巻いている。

　「世界は俺達のものだ」と、俺は言う。彼女はどう答えるだろう？　「そうね」、かな。
　俺は思う。ここで俺に求められているのは、完璧な嘘なんじゃないかと。彼女を傷つけてはいけない。でも、嘘だと勘づかれてもいけない。興ざめするようなただの嘘じゃない。うっとりするような、完璧な嘘だ。

　俺は明日、彼女がうっとりするような嘘をつくだろう。そこから全てが始まるのだ。始めようじゃないか。女子中学生とバーテンダーの関係。そして、キリング・ライズ。うっとりするような嘘。
　全てはここから始まる。