影の守護者

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第19章 新たな仲間、新たな脅威

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アストリア王国の宮殿に、各国から選ばれた若者たちが集められていた。新たな「影の守護者」の候補者たちだ。

セラとアレクは、緊張した面持ちで彼らを見つめていた。

「本当に、この中から選ぶんですね」セラが小声で言った。

アレクは頷いた。「ああ。俺たちの仲間に...そして、世界の守護者になってもらうんだ」

ガレスが前に進み出て、候補者たちに向かって話し始めた。

「君たちは、特別な才能を持つ者たちだ。しかし、それだけでは足りない。真の『影の守護者』になるには、強い意志と純粋な心が必要だ」

セラは、候補者たちの表情を一人一人観察していた。その中で、特に目を引いたのは二人の若者だった。

一人は、凛とした眼差しを持つ少女。もう一人は、どこか影のある表情の少年。

「アレク」セラが囁いた。「あの二人...何か特別なものを感じます」

アレクも同意した。「ああ、俺もそう思う」

選考は厳しいものだった。身体能力、知力、そして何より心の強さが試された。

最終的に、セラとアレクが注目していた二人を含む、5人の若者が選ばれた。

「レイラ」凛とした少女が名乗り出た。

「カイ」影のある少年が続いた。

そして、ナオミ、マーカス、エリックの3人が加わった。

「よく聞け」ガレスが5人に告げた。「これからの訓練は、想像を絶するほど厳しいものになる。しかし、それを乗り越えれば、君たちは世界を守る力を手に入れることができる」

新たな「影の守護者」たちの訓練が始まって1週間が経過したある日、緊急事態が発生した。

「セラ様、アレク様!」侍従が慌ただしく駆け込んできた。「『影の評議会』の残党が、南部の古代遺跡で動きを見せているとの報告が!」

セラとアレクは顔を見合わせた。

「行かなければ」アレクが言った。

セラは頷いた。「ええ。でも...」

彼女は、訓練中の5人の若者たちを見た。

アレクは、セラの考えを察したようだ。「そうだな。彼らも連れていこう。実地訓練になる」

ガレスは、少し躊躇ったが、最終的に同意した。

「気をつけろよ」彼は厳しい表情で言った。「まだ未熟な彼らを、決して危険にさらすな」

セラたちが南部の遺跡に到着したとき、既に日が落ちかけていた。

「気をつけて」セラが5人の若者たちに言った。「何か異常を感じたら、すぐに報告するのよ」

一行は慎重に遺跡内部に潜入した。

暗闇の中、かすかな物音が聞こえる。

「あそこ!」レイラが小声で叫んだ。

遺跡の中心部に、黒いローブを着た人影が数人。彼らは何かの儀式を行っているようだった。

「『影の評議会』の残党か」アレクが呟いた。

セラは、状況を素早く分析した。「私たちが前から、レイラとカイは左から、ナオミ、マーカス、エリックは右からアプローチ。合図と共に一斉に」

全員が頷いた。

セラの合図と共に、一行は一斉に動き出した。

「影の評議会」の残党は、不意を突かれて混乱した。

しかし、彼らの中にも並外れた実力者がいた。

「来るぞ!」アレクが叫んだ。

激しい戦いが始まった。

セラとアレクは、息の合った連携で敵を倒していく。

新人たちも、それぞれの能力を発揮して奮闘した。

レイラの素早い動きとカイの予想外の攻撃。ナオミの知略とマーカスの怪力。そして、エリックの不思議な能力。

戦いは、一進一退の様相を呈していた。

そのとき、「影の評議会」のリーダーらしき人物が、古代の遺物を手に取った。

「その遺物を渡せ!」セラが叫んだ。

しかし、リーダーは不敵な笑みを浮かべた。

「遅すぎたな、光と影の守護者よ」

遺物が、不気味な光を放ち始める。

「みんな、下がって!」アレクが叫んだ。

強烈な光が、遺跡内を包み込んだ。

光が収まったとき、「影の評議会」の残党の姿はなく、遺物も消えていた。

「くっ...」セラが悔しそうに呟いた。

アレクが彼女の肩に手を置いた。「大丈夫だ、セラ。これは始まりに過ぎない」

新人たちは、疲れた様子だったが、目には確かな成長の光が宿っていた。

「よくやった」セラが5人に告げた。「みんな、素晴らしい活躍だったわ」

レイラが前に出た。「セラさん、アレクさん。私たち、まだまだ未熟です。でも、必ず成長して、あなたたちの力になります」

他の4人も、強く頷いた。

セラとアレクは、微笑みを交わした。

「ああ、期待してるよ」アレクが言った。

一行が宮殿に戻ったとき、既に夜も更けていた。

報告を終え、セラとアレクは二人きりになった。

「大変な日だったね」アレクが言った。

セラは頷いた。「ええ。でも、希望も見えた気がします」

アレクはセラの手を取った。「そうだな。新たな仲間たち、そして...」

彼はセラの目をまっすぐ見つめた。

「君という、かけがえのないパートナーがいる」

セラは、頬を赤らめた。「アレク...」

二人の唇が、そっと重なる。

月明かりに照らされた二人の姿は、まるで光と影が溶け合うかのようだった。

新たな戦いの幕が上がり、そして新たな絆が生まれた夜。

世界の運命は、まだ誰にもわからない。

しかし、セラとアレクは確信していた。

どんな困難が待ち受けていようとも、共に乗り越えていけると。

そして、その絆こそが、世界を救う鍵になるのだと。
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