影の守護者

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第5章 過去の影

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「何?あんた達も転生者なの?」
「その喋り方は……」
「中学で年齢止まったの?」

子爵令嬢が口を開くたびに項垂れたくなる。子爵とは言えど貴族令嬢として教養は行われていたのではないのか?否、それを放棄してしまってる私が言える事でもないけれど、ここまで酷いといっそ清々しいと言うか、前世世界では教育水準が低いと思われてしまうのではと恥ずかしくなってしまう。……まぁ、この世界に比べれば低いと思うけどね!?主にマナー面に対しては!!

「失礼ね!楽しければ良いじゃない!それより転生者なのか聞いてるの!」
「前世の記憶ならあるけど?」
「同じく。日本の記憶ですけどね」

喚く令嬢の質問に答えると、子爵令嬢はフンっと鼻息荒く吐いて、腰に手を当てて胸をはる。
曰く、記憶がある癖に役割を放棄した愚か者だとか、あんなイケメン放置するなんて勿体ないとか、ゲームの世界を楽しむ事も出来ないつまらない奴だとか。
そんな事をつらつらと喚かれている中、私とカローラの口元はどんどんと引きつっていき、ポピーも呆気にとられているように口が開いていく。それとは正反対にセドリックやシャルルの笑みは深くなっていっている。

「ゲームの世界に来られるなんて素晴らしいじゃない!さすが神絵師だけあるわって感動したのよ!!」

目を輝かせてそんな事を言う子爵令嬢は理解しているのだろうか。確かに神絵師のスチルは素晴らしかったし、それなりに皆さん美形だとは思う……思うんだけど……この中学生だった子は、ゲームの全体をクリアしているのだろうか?
……あれ年齢制限どうだったかな、なんて変な方向に思考が偏ってしまう。

「ねぇ……アディエス子爵令嬢……?これ現実だと理解している?大丈夫??ゲームと違って、この後も現実は続くのよ……?」

心配になったのか、カローラが諭すように言葉をかける。この令嬢の名前を覚えていたのは、流石侯爵令嬢と言ったところか。言われた子爵令嬢は、キョトンとした顔をしたかと思うと、すぐに怪訝な表情をして口を開いた。

「え?何言ってんの?嫉妬?」
「いやいやいや!違うから!嫉妬なんてするわけないから!!」

思わず盛大な突っ込みを入れて、首だけでなく両手も左右に力強く振る。どこをどう解釈したらそうなるの!?
そんな私に信じられないとでも言いたげな子爵令嬢は目を大きく見開いている。え!?何で!?それに気がついたのだろうカローラが静かに口を開いた。

「……茨のラビリンス……エンディングを見たの?」
「全ルート攻略したわ!!」
「そう……そしてこれは逆ハーレムエンドね?」
「そうよ!!」

ここのシャルルやセドリックが居る事も忘れたのか、声高に子爵令嬢は答え、その答えに対して二人はとても面白そうな者を見る目で眺めている……あぁ……なんと言えば良いのか……。
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