35歳刑事、乙女と天才の目覚め

dep basic

文字の大きさ
上 下
10 / 11

第9章:真の力

しおりを挟む
医療チェックの結果が出るまでの数日間、尚子は通常業務をこなしながらも、内心では不安を抱えていた。そんなある日、警察署に衝撃的なニュースが飛び込んできた。

「大変です!佐藤元警部が脱獄しました!」

署内が騒然となる中、尚子は冷静さを保っていた。

「みんな、落ち着いて。まずは情報を整理しましょう」

尚子のリーダーシップのもと、捜査チームは素早く動き出した。しかし、佐藤の行方を追う中で、尚子の頭痛が再び激しくなっていった。

「くっ...」

レイナが心配そうに尚子を見つめる。「大丈夫ですか?」

その時、尚子の視界が急に変化した。周囲の景色が流れるように歪み、別の場所が見えてきた。

「見える...佐藤がいる場所が...」

尚子は目を閉じ、集中した。「港...倉庫...番号は...」

レイナは驚きの表情を浮かべながらも、すぐに行動に移った。「分かりました。すぐに応援を要請します」

捜査チームが現場に到着すると、そこには確かに佐藤の姿があった。しかし、状況は予想外の展開を見せる。

佐藤は、何やら奇妙な装置を操作していた。「やあ、尚子君。来てくれたね」

「佐藤...あなたは一体何を...」

「人類進化の最終段階だよ。君の能力は序章に過ぎなかった。この装置で、全人類の能力を覚醒させるんだ」

尚子は佐藤の狂気じみた表情に戸惑いを覚えながらも、冷静に対応しようとした。

「やめて。そんなことをすれば、社会が崩壊してしまう」

「進化には犠牲が付きものさ。さあ、君も加わらないか?」

佐藤が装置のスイッチに手をかけた瞬間、尚子の中で何かが覚醒した。

時間が止まったかのように感じる。尚子の意識が拡大し、佐藤の過去、現在、そして未来の可能性までもが見えてきた。

「分かったわ...あなたの苦しみも、願いも」

尚子は静かに佐藤に近づいた。「でも、これは間違っている。本当の進化は、一人一人の中にあるのよ」

佐藤の手が震える。「だが...私は...」

尚子は優しく佐藤の手を取った。「あなたの研究は、正しい形で生かせるはず。一緒に考えましょう」

その瞬間、佐藤の目から涙がこぼれた。「私は...何てことを...」

装置は無事に停止され、佐藤は再び逮捕された。しかし今回は、彼の表情に悔悟の色が見えた。

事件後、尚子は医療チェックの結果を受け取った。

「あなたの脳の activity は、通常の人の何倍もの速さで処理を行っています。しかし、そのストレスがあなたの体に負担をかけています」

尚子は深く考え込んだ。自分の能力の本質、そしてそれをどう使うべきか。答えはまだ見つからないが、一つだけ確かなことがあった。

「私の力は、人々を守るためにある。それだけは、絶対に変わらない」

レイナが尚子の傍らに立ち、優しく微笑んだ。「私たちがいます。一緒に、正しい道を見つけていきましょう」

尚子は頷いた。これからの道のりは決して平坦ではないだろう。しかし、彼女の中には強い意志と、仲間たちとの絆があった。

真の力とは何か。その答えを探す旅は、まだ始まったばかりだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...