35歳刑事、乙女と天才の目覚め

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第2章:二つの覚醒

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朝。
目覚めた瞬間、尚樹は自分の中で何かが決定的に変わったことを感じ取った。

頭の中は、まるでスーパーコンピューターのように高速で思考を処理している。そして同時に、体の感覚も驚くほど研ぎ澄まされていた。

鏡を見て、尚樹は息を呑んだ。

「これは...俺?」

そこに映っていたのは、身体的な外見こそ変わらないものの、明らかに女性的な雰囲気を漂わせる自分の姿だった。目の輝き、表情の柔らかさ、そして立ち振る舞い。すべてが、これまでの「男性刑事・高橋尚樹」とは違っていた。

混乱する中、携帯が鳴った。レイナからだ。

「高橋さん、大変です!新たな殺人事件が...」

その瞬間、尚樹の頭の中で無数の情報が交錯し始めた。これまでの被害者のデータ、現場の状況、そして新たな事件の断片的情報。それらが瞬時に結びつき、驚くべき結論に達する。

「分かった。現場に向かう」

冷静な声で答えながら、尚樹は急いで準備を始めた。しかし、いつものスーツに手を伸ばした瞬間、強い違和感を覚える。

「こんな時に...」

戸惑いながらも、尚樹はクローゼットから女性物のパンツスーツを取り出した。それを着ると、不思議なほどしっくりくる。

「なんてことしてるんだ、俺は...」

自己嫌悪の思いを抱きながらも、尚樹は出発した。

現場に到着すると、レイナが駆け寄ってきた。

「高橋さん、こちらで...あれ?」

レイナは尚樹の姿を見て、言葉を詰まらせた。

「どうしたの?」

尚樹の口調は、自然と女性的になっていた。

「あ、いえ...その、髪型が変わりました?」

「え?ああ、少し伸びただけだよ」

動揺を隠しながら、尚樹は現場に向かった。

遺体の周りには、すでに科学捜査班が忙しく動いている。尚樹は現場を一瞥しただけで、多くの情報を掴んだ。

「被害者の服装、傷の位置、周囲の状況...全て犯人からのメッセージね」

レイナは驚いた表情で尚樹を見つめた。

「高橋さん、どうしてそこまで?」

「説明している時間はないわ。これを見て」

尚樹は被害者の額の傷跡を指さした。

「この傷、暗号になってるの。解読すると...」

尚樹の説明は、論理的で説得力があった。しかし、その姿は明らかに女性的な雰囲気を醸し出していた。柔らかな物腰、繊細な表情の変化。レイナはそんな尚樹の変化に、困惑と共に奇妙な魅力を感じていた。

「素晴らしい洞察力です、高橋さん」

レイナの言葉に、尚樹は複雑な表情を浮かべた。知性を褒められることへの誇りと不快感が入り混じる。彼女の中で、刑事としての自負と、新たに芽生えた女性的な感覚が衝突する。

その日の捜査は、尚樹の驚異的な推理力によって大きく進展した。しかし同時に、彼女の変化も周囲の目に明らかになっていった。

夜、自宅に戻った尚樹は、鏡の前で立ち尽くしていた。

「私は...誰なんだ?」

男性としての過去と、今の自分。そして、驚異的に発達した知能。それらが、彼女の中で渦を巻いていた。

突然、携帯が鳴った。仲の良い後輩刑事、佐々木からだ。

「先輩、今晩飲みに行きませんか?」

その誘いに、尚樹は戸惑った。今の自分をさらけ出してもいいのか?しかし、何かに突き動かされるように、彼女は返事をした。

「ええ、行くわ」

その晩、尚樹は女性の服装で待ち合わせ場所に向かった。そこで待っていた佐々木の驚いた表情。戸惑い、そして受け入れてくれる温かさ。

酒を交わしながら、尚樹は自分の変化について少しずつ打ち明けていった。知能の覚醒、そして性別に関する新たな自覚。

「先輩...いや、先輩の選択を俺は支持します。でも、これからどうするんですか?」

佐々木の質問に、尚樹は深く考え込んだ。

「まだ...分からないわ。でも、一つだけ確かなことがある」

「何ですか?」

「私は、この新しい自分の力を使って、事件を解決する。それが、私の使命よ」

その言葉に、佐々木は強くうなずいた。

二人が店を出ると、夜の街が妙に騒がしかった。
そして、尚樹の携帯が鳴った。

「高橋だ...え?もう一件?」

電話を切った尚樹の表情が急に引き締まる。

「佐々木、行くわよ」

「はい!」

二人は夜の街に消えていった。新たな事件の現場に向かって。
尚樹の中で、刑事としての使命感と、新たに目覚めた自己との調和が、少しずつ形作られ始めていた。
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