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第5章:転機 - 家族の新しい形

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夏休みが近づいてきた頃、村上家では久しぶりの家族旅行が計画された。目的地は、大輔が幼い頃によく訪れた海辺の町。

出発の朝、大輔は少し緊張気味に車に乗り込んだ。運転席には父親となった綾、助手席には母親となった浩二。見慣れた光景なのに、どこか新鮮だ。

「みんな、準備はいい?」綾が元気よく声をかけた。
「はい、出発しましょう」浩二が優しく微笑んだ。

車が動き出すと、大輔はふと思い出した。
(そういえば、昔もこんな感じだったな…)

道中、家族三人で昔話に花を咲かせた。

「覚えてる?大輔が5歳の時、海で溺れそうになって」浩二が懐かしそうに話し始めた。
「ああ、あの時は焦ったよな。でも、浩二がすぐに助けに行ってくれて…」綾が続けた。

大輔は驚いた。
「え?お母さんが助けてくれたの?」

浩二は少し照れくさそうに答えた。
「そうよ。私、昔から泳ぎが得意だったの」

「へえ…知らなかった」大輔は新たな発見に目を輝かせた。

宿に着くと、三人で近くの海岸に出かけた。夕暮れ時の海は穏やかで、オレンジ色に輝いていた。

砂浜を歩きながら、綾が口を開いた。
「大輔、最近どうだ?俺たちのことで」

大輔は少し考えてから答えた。
「正直、まだ完全には慣れてないけど…でも、お父さんもお母さんも、昔と変わらず僕の両親だってことはわかってきた」

浩二が優しく大輔の肩に手を置いた。
「ありがとう、大輔。私たちも、あなたが一生懸命受け入れようとしてくれていることがわかるわ」

その時、大輔は思い切って聞いてみた。
「二人は…幸せ?」

綾と浩二は顔を見合わせ、にっこりと笑った。
「ああ、とても幸せだよ」綾が答えた。
「本当の自分でいられることが、こんなに素晴らしいことだったなんて」浩二が付け加えた。

その言葉を聞いた瞬間、大輔の中で何かが変わった。両親の幸せそうな表情を見て、これが本当の家族の形なのだと実感したのだ。

「僕も…幸せだよ」大輔は小さな声でつぶやいた。

綾が大輔を優しく抱きしめた。
「ありがとう、息子よ」

三人は寄り添いながら、夕日に染まる海を見つめた。波の音が心地よく響く中、大輔は思った。
(これが僕たちの新しい家族の形なんだ。そして、それでいいんだ)

その夜、大輔は久しぶりに心から笑顔で眠りについた。家族旅行は、彼にとって大きな転機となったのだった。
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