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目標のある幸せ 第五話
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それからは、まあやることはやったんだし、考えてもどうにもならないからと気持ちを切り替えて、あまり考えないようにしていた。
春代の方が何か聞きたそうにソワソワしているのも感じたが、言い出さないということはまだ落ちてはいないのだろうと思って、守秘義務とかいろいろあるだろうと気を使ったのか、そのことを話そうとせずにいてくれるのも分かったので、当たり障りのない内容の会話に終始して過ごした。
家に帰るとお母さんが合否の通知が来ていることを教えてくれた。
開けてみせてよと言われたので、今回は隠す必要もなくなりリビングで一緒にあけることにする。
「三次審査に合格されましたことをご連絡申し上げます」そう書いてあった。
隣でお母さんが「良かったわね」と頭をポンポンとしながら微笑む。
「四次審査もあるのよね」
「そのはず、審査の日程も書いてある」
なんとか受かった。春代にも三次に受かったことを教えてあげたら私以上に喜んでくれた。
まだ続けられると思いながら内容を読んで見ても、次の審査の課題は何も書いていないので、何をするのかと不思議に思っていた。
四次審査も平日で金曜日だったが、前はみんなだいたい一人で来ていたし、大丈夫そうだから何かあったら電話しなさい、こっちが緊張しちゃうからとお母さんは付いてこなかった。
私はというと最後はお気に入りのワンピースにして、さすがに宙返りはやめようと決めて審査に挑むことにする。
審査会場に着くとすぐにさなえが話しかけてきた。
「紗良ちゃん。久しぶり」
さなえは以前見た時よりもさらに可愛らしさを増したように感じる。
「さなえさん。お久しぶりです」
とは言え、さなえのコミュニケーション力にはつい身構えてしまう。
「さぁちゃんで良いって。敬語もやめて。友達でしょう?」
「それほど親しくなった覚えはないですけど」
「冷たっ。一緒に審査を受けてきた仲間じゃない」
「仲間?」
「そう。ここまで来たらもう仲間よ」
「でも、今日で終わりかもしれないですし」
「それはそうだけど、じゃあ今日で受かったら仲間でいいよね」
「同僚ということになるので、仲間といえばそうですね」
「なんか面倒くさいなぁ。審査会場で宙返りまでした人とは思えない」
私はその場にいなかったさなえが知っていることに驚いた。
「なんで知っているの?」
「私たちのなかでは有名だよ。審査で特技披露として椅子を使って宙返りした人がいるって」
いや特技披露は似顔絵だったが、誰なんだ、そんなことを広めるのは、守秘義務とかどう思っているのか。
「紗良ちゃん。おはよう」
菅井真由美が話しかけてきた。
「菅井さん。おはようございます」
「真由って呼んでって言ったのに」
「私は名前で呼んでくれるわよ」
さなえは何のマウントを取ろうとしているのかわからないが、ただ単に春代と区別しているだけということは黙っておいた。
「ごめんなさい。私がそういう人がいたって話したの。でも名前とかは言ってないよ」
「後から会った真由に訊いたら審査員の前で宙返りをした人がいるっていうから、どんな子? って訊いたわけ。そしたら制服の子っていうから間違いないなって思ったの。名前を聞いたわけじゃないよ」
そこまでわかれば、名前を言わないまでもほぼ確定なのだが。
「それで、お二人は昔からの知り合いですか?」
「このオーディションで知り合ってなんか友達になったの」
コミュ力が高い人間が集まると、こうも簡単に友達とかになれるのかと感心する。
「みんなで受かるといいね」
「そうですね」
二人なら受かるのではないかと言おうかと思ったが、結果が変わるわけでもないので黙って席に着くと周りを観察する。
見ると自分を入れて九人しかおらず、この中で何人が受かるのだろう? そう思いながら待っていると係の人が入ってきて今日の予定を伝えますと言われた。
「お疲れ様です。今日の四次審査は面接だけです」
「どういうこと?」
さなえが小さい声で呟く。
「皆さんにはこの前もアピールしていただいていますので、今更同じことをしていただかなくてもわかりますから、今日は一人ずついろいろとお話を聞かせてもらいたいと思います。連絡していたように大体一日かかると思いますのでよろしくお願いします」
アイドルの審査、オーディションとかを受けたことがあるわけではないから、どういうものが正解なのかわからなかったので、こういうこともあるのかと自分の中で納得する。
「一番目の人お願いします。入ったら名前を言ってください」
席の名前があいうえお順に並んでいると思ったらそのまま面接番号順だった。
「失礼します」
扉を閉めて椅子の横に立ち、名前を言った。
「相羽紗良です。よろしくお願いします」
お辞儀をして前を向いた。
「座ってください」
そういわれて椅子に座って見渡すと、三次審査でいたプロデューサーとマネージャーのおじさんは今日もいたが、人数が十人ほどに増えていた。
「それでは始めさせていただきます」
端にいる若干若そうな人が進行をすると、面接という名の審査が始まった。
「相羽さんは学生だよね」
「そうです」
「今までこういったことに応募したことはあるの?」
「いえ。全然ありません」
プロデューサーが質問してきた。
「アイドルになりたいと思っていたの?」
「今まではそんなことは思っていませんでした。ライブの映像をテレビで見てもっと知りたいと思ったのがきっかけです」
「知りたいとは?」
「アイドルというものが何なのか、もっと知りたいと思ったんです」
「なりたいというわけではないの?」
「勿論なりたいと思っていますが、なってみなければすべてを知ることができないと思って応募しました」
「すべてねぇ。知りたいことのために最も有効な手段として自分がなってみるという方法を選んだというわけだ」
「簡潔に言うとそうです」
「でも、全力でやるんでしょう?」
「全力でやらなければ知ることができないと思いますので」
「やっぱり変わった子だな」
プロデューサーはそういって何か書き始めた。
「ところで、相羽さんはSNSとかしてるの?」
若めの人が訊いてきた。
「いえ。それも全然していません」
「コミュニケーションアプリとかも?」
「そうですね。知り合いは近所ですので、連絡したいことがあれば行けばいいですし、最悪ショートメールで用件は済みますので。一応コミュニケーションアプリもすることはできますが、交換したのは二人だけです。それも基本的に見ませんが」
「SNSとか見ることもないの?」
「今までの生活では必要性を感じませんでしたので、そういうことはしませんでした。でも知識としては知っています」
どう答えたらよいのか全くわからなかったので、とりあえず本当のことを話しておくことにした。
いくつかのやりとりの後、今日は制服ではないのかと訊かれたので、最後なのでお気に入りのワンピースにしましたと答えたところで、立って微笑んで見せてと言われ、得意ではないものの頑張ってそのようにした後、終了を告げられて、待機室で待っていてくださいと言われた。
今回は今日この場で合否を教えてくれるらしい。
「失礼します」
お辞儀をして扉を出ると、さっきとは違う部屋に案内されて、係の人がお昼は用意してあるが、とりあえずそれまで自由にしていてもらって構わないと言われる。
もしもアイドルとかになると待機時間というのは結構あるので、これも経験ですよと言ってから出て行った。
ネットで撮影の合間に二時間待ちとか普通にあるようなことも書かれていたので、なるほどと思いながら、持ってきた本でも読むしかないとカバンから出して、もうこれで最後だからお昼のお弁当だけは記念にしっかりと食べて帰ろうと思った。
面接から帰ってきた子たちでだんだん控室がにぎやかになってきたので本を読みながら横目で朝のように観察する。
私の次に帰ってきた二人目になる子はちょっと泣きながら入ってきたので、何があったのかと思ったがうまく受け答えができなかったことで、落ちたに違いないと思っているようだった。
三人目は私より少し低いくらいで、すらっとしたモデルのようなハーフかと思う顔をした子で、チラ見した感じでは落ち着いた印象だったので年齢も私よりは上かな。
四人目は入ってくるなり、「あー、緊張したー」と言いながら、みんなにお疲れ様ですと挨拶してから、「ここ空いてます?」と訊いて私の隣に座った。私から見ても子供かと思うくらい幼い彼女は「浦部美香です。宜しくお願いします」とにこにこしながら言われたので、私も「相羽紗良です」と挨拶を返す。
特に私から話すこともないので、結局そのまま本を読み始めたら、つまらなさそうに居眠りをしだした。
これは年齢が低そうなのに大物だなと思ったことを覚えている。
五人目の子はちらっと見たところでは、ちょっとボーイッシュな見た目の小顔な可愛らしい子だった。私を見ると何か話したそうな感じだったが、こちらがあまり意識しないようにしていたので、話をするタイミングが見つからず少し離れたところに座ってスマホを見ていた。見た目ほど男の子っぽいわけではないみたい、そう思いながらまた本を読み始める。
六人目の子は三番目の子と知り合いらしく隣に行くと面接のことについて話をしていた。
七人目に真由が帰ってきて私の隣が空いてないと言いながら、後ろに座ってスマホを見始めた。
八人目の子は、明らかにお嬢さんと言った雰囲気の子でちょっと緊張した感じだったが、優し気な感じが見て取れる。
最後に九人目としてさなえが帰ってきて、係の人から面接が終わって全員そろったので合格発表をする前にお弁当を取りにきてくださいと言われた。
「これが、アイドルが食べるロケ弁というものか」
そう言って、とりあえず記念だ記念だと私がお弁当を持ってくると、さなえがこれは結構いい現場に行かないと出てこないよと教えてくれた。
さなえと真由美からみんなで食べようと言い出し、机の向きを替えてもいいかと係の人に訊いて動かしていた。
個人的には一人で楽しみたかったが、空気的にそんなことを言い出すことはできずに、とりあえず流されるまま同じようにする。
みんなが向き合ったところで名前だけでも自己紹介しましょうというので、順番に名前を言うことになり、面接順でということになったので私から挨拶をすると。全員が知ってるという目でこっちを見たのは、誰かさんのおかげで有名人になっているからだった。
それから全員の紹介が終わり、面接の内容がどうだったかという話になった。
私はSNSをやっているかと訊かれたので何も見ないしやっていないと答えた時、さなえがコミュニケーションアプリの既読すらつかないので本当だというと、全員から化石だと言われた。
どうやら、SNSをやっている子は、受かった場合にはできるだけ消すようにしてもらうと言われたらしく、ブランドイメージの維持もしなければいけないので、載せていいことといけないことなどを選別する必要があるから個人では勝手にしないでほしいということらしい。
コミュ力モンスターのさなえ達にすればかなりの苦痛にはなるだろうが、私は何ともなくノーダメージですむ。
そんなことは結局受かってからの話だということで、最後にはちょっと雰囲気が暗くなり、気分が上がったり下がったり忙しい子たちだなと私は客観的に見ながら思っていた。
お昼の時間が終わり、いよいよ発表の時がきた。
「それでは皆さんこちらにお願いします」
案内されたところは、私たちには知らされていなかったが合格発表の式場となっており、記者のカメラマンやテレビカメラも来ているのが見える。
「こんなの、突然すぎるし聞いてないよ」
帰ってきたときに泣いていた飯塚朋子が、会場の袖に並んでからその光景をみて、また涙目になっていた。
「私も聞いてない」みんなが口々にいうと、司会の人がヴァルコスマイルの二期生となった方々の紹介をしますというアナウンスをして、名前を呼ばれた人から広がるように順に左右に行ってくださいと言った。
ついに合格者の名前が呼ばれる。
「井手愛美《いであみ》」
彼女は喜びと驚きと戸惑いを隠しきれずに、みんなにお辞儀をすると、緊張した顔で立ち位置に歩いて行った。
「終わった」私はそう小声で言うと、飯塚朋子と目を合わせた。飯塚朋子は始めから涙目になっていたが、今は本当に泣いていた。
小さい声で「入りたかった」と肩を震わせていたが、私は残念だったと思うものの、そこまでの感情はこのときにはわかなかった。
ただ朋子が可哀そうになって、同じ境遇として頭をなでて慰めてあげた。
「浦部美香」
と呼ばれて美香がこちらを見て小さく返事をしてから歩いていく。
「服部未来」
そうアナウンスがあり、彼女は「はいっ」と元気な声で返事をして歩いていった。
アイドルはいつも明るくないといけないなと思いながら、声を殺して泣く朋子の肩を抱いて、その光景を眺めていた。
「木下朱里」
その名前が呼ばれた時、朱里を含めて順番で呼ばれなかった子はみんなが「あれっ?」そう思った。
泣いている朋子は全然聞いていないみたいだったので、小さい声で「なんか、順番じゃないみたいだよ。まだチャンスはある」と教えてあげたら、顔を上げて朋子は周りを見た。
涙であふれた目を手でぬぐおうとしたので、化粧が崩れると言ってハンカチでそっと吹いてあげる。
残ったみんなでアナウンサーの方を見ていると「河合陽子」「菅井真由美」の後に「飯塚(いいづか)朋子(ともこ)」と呼ばれたので、「ほらっ、行って」と背中を押してあげた。
そのあと、「山岸さなえ」と呼ばれ、私に「行ってきます」と言いながらでていった。
最後に残った空間、私はその立ち位置に何と言ったらいいのか複雑な感情を抱いていた。
「真ん中とかないでしょ。なんの冗談なのよ」
本気でそう思っていた。
アイドルにはなりたいしできれば受かりたいと思ってはいたが、真ん中に立っていくことまでは想定していない、それは私ではないと考えていた。
司会の人がマイクに向かって告げる。
「相羽紗良」
自分の名前が呼ばれてから一瞬逃げ出そうかとも思ったが、それなら何のためにここに来たのか、ここまで来たら行くしかない。
「はいっ!」
背筋を伸ばせと自分に言い聞かせ会場中央に歩いていくと、係の人がこちらにお願いしますと、やはり真ん中を指さしたので、内心とは裏腹にできるだけ堂々と歩いていく。
全員がそろったところでカメラのフラッシュがたかれ、司会の人が告げた。
「以上九名がヴァルコスマイルの二期生オーディション合格者です」
そう言われたとき、周りから拍手が起こった。
会場に来ていた関係者以外の人は私たちが今日九人集められて、名前を呼ばれなかった時に、その中から落ちたのだと思ってジェットコースターのような気持ちを味わったということは知らない。
今度はうれし泣きだったが、結局のところ朋子はまた泣いていた。
私はというと受かったことへの実感もあまりなく、場違いなところに来てしまったという感じがしていた。それでもライトに照らされていると、ここからがスタートなのだという気持ちがだんだんと湧いてくる。
しばらくカメラのフラッシュがたかれた後、司会の人が進行をしはじめた。
「それでは、真ん中の相羽さんから自己紹介とこれからの意気込み等をお願いします」
周りの視線が集中する。
これだけの知らない人の前で挨拶をすることなど、当然今までなかった。
むしろ目立たないようにしてきたのに、アイドルというものが知りたかったとは言え、今していることは今までの人生とは全く真逆だ。
「大丈夫か? 私」そう心の中で思ったが、お母さんに「今やりたいことができたなら、やりなさい」そう言われたことを思い出して顔を上げる。
「東京都出身、十七才、相羽紗良です。特技は(とりあえず)似顔絵を描くことです。これから頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします」
と、それだけは絞り出した。
写真撮影の時間が終わり、二期生のお披露目会をするという日程を発表して合格発表は幕を閉じた。
そのあと会議室に呼ばれ今後について契約をするため未成年者は保護者の承認が必要であることやお披露目会に向けてレッスンがあることなどの連絡と書類やスケジュールを渡された。
その他の連絡は随時メールやコミュニケーションアプリで行うので、スマホの確認をしない人は一日に最低一回、五時過ぎには確認をするようにしてほしいと言われた時、みんなが私を見たのは気のせいか。
お母さんに「受かった」という短いメールを送ったら、「おめでとう」という短いメールがすぐに帰ってきた。
気を付けて帰宅して下さいということで、みんなそれぞれ迎えが来たりして帰っていく。
いろいろありすぎて時間の感覚がおかしくなってきたが、私もみんなに合わせて帰るように書類を鞄に詰めていると、朋子がやってきて「名前を呼ばれる時にそばにいてくれてありがとう」とお礼を言いに来た。
「いや、私も落ちたと思ったけど、あまりにも横でショックを受けているようだったから」
普通だよと言いながら軽く微笑む。
「そっそれでも、お礼が言いたかっただけ」
そう言って、またねと手を振りながら逃げるように去っていった。
私が戸惑いながらも手を振っていると、審査員のおじさんが話しかけてきた。
「相羽さん。合格おめでとう」
「村雨さん。ありがとうございます。村雨さんは年上なのですから、呼び捨てでも、紗良でも結構ですので気を使わないでください」
合格後のミーティングで村雨という紹介があったのだが、心の中ではおじさんと呼んでいる。
ヴァルコスマイルの統括責任者で部長という偉い人だが、二次審査で審査員の席に座っていたのは当日体調不良で来られなかった人の代わりに来ていたらしい。
思い返すと他の審査員の人たちの雰囲気が変な感じはしていた。
二次審査にそんな偉い人が来ることはないので戸惑っていたということのようだ。
東京の会場でなければそういうことはなかっただろう。
「申し訳ないが、正式にメンバーになった時には、これからアイドルとしてスタートすることに加えて、暫定的ではあるが頼みたいことがある」
「何でしょうか?」
「相羽が二期生の他の八人をまとめていってほしい」
「グループにはリーダーもいますし、私よりも年上の人もいますよね」
「全体のリーダーはいるけど、二期のまとめ役としてだ」
「私は、あまりコミュニケーション力がないので、そこまではできないと思いますけど」
うーんと顎に手をあててどう言おうか言葉を選ぶように説明をした。
「まとめ役と言ってもアイドルは結局個々の集まりだから競技のキャプテンみたいなものではなくて、何というか精神的な支柱としてだな」
「精神的な支柱ぅ?」
さなえとかコミュ力の高い人がいるでしょうにと思いながら、腑に落ちない顔をしていた。
「知らなかったか? 今日来たあの八人に頼れそうだと思うのはだれかと訊いたんだ」
「私は訊かれていないです」
「そらそうだよ。相羽のことを訊いているんだから」
村雨部長はみんなが待ってるときなどの状況をみて、どういう子たちなのか、どういう雰囲気なのかを見ていたらしい。
「でも私が普通に話をしたことがあるのは、山岸さんと、菅井さんだけです」
「みんな相羽はなんでもできそうだし、きれいで落ち着いた感じがすごいから、話しかけたいけど近寄れないと二人以外は言っていたぞ」
そういえば面接の後、陽子は何か言いたそうに目の前を通って行ったし、美香は隣に座ったものの、私が本を読んでいるからかつまらなそうにしていた。
何か話しかけてあげた方がよかったのかな、今度そういう時があったらできるだけ話しをしてみようと思う。
「みんなが多分相羽は受かると思ってたみたいだから、相羽の名前が最初に呼ばれなかったときはさぞ驚いただろう。まあそれはさておき、自分自身もこれから大変なこともあるかと思うが頼むよ。頑張ってな」
腕時計をみて「初めてみた時から推しているんだから期待しているよ」そういいながら去っていった。
「ありがとうございます。頑張ります」
さなえの言う通り嫌がらせとかではなかったんだなと思い、ダンスの時とか嫌がらせかと思って頭の中で三回くらいは罵倒したことを心で謝りながら、去っていく背中に向かってお辞儀をした。
春代の方が何か聞きたそうにソワソワしているのも感じたが、言い出さないということはまだ落ちてはいないのだろうと思って、守秘義務とかいろいろあるだろうと気を使ったのか、そのことを話そうとせずにいてくれるのも分かったので、当たり障りのない内容の会話に終始して過ごした。
家に帰るとお母さんが合否の通知が来ていることを教えてくれた。
開けてみせてよと言われたので、今回は隠す必要もなくなりリビングで一緒にあけることにする。
「三次審査に合格されましたことをご連絡申し上げます」そう書いてあった。
隣でお母さんが「良かったわね」と頭をポンポンとしながら微笑む。
「四次審査もあるのよね」
「そのはず、審査の日程も書いてある」
なんとか受かった。春代にも三次に受かったことを教えてあげたら私以上に喜んでくれた。
まだ続けられると思いながら内容を読んで見ても、次の審査の課題は何も書いていないので、何をするのかと不思議に思っていた。
四次審査も平日で金曜日だったが、前はみんなだいたい一人で来ていたし、大丈夫そうだから何かあったら電話しなさい、こっちが緊張しちゃうからとお母さんは付いてこなかった。
私はというと最後はお気に入りのワンピースにして、さすがに宙返りはやめようと決めて審査に挑むことにする。
審査会場に着くとすぐにさなえが話しかけてきた。
「紗良ちゃん。久しぶり」
さなえは以前見た時よりもさらに可愛らしさを増したように感じる。
「さなえさん。お久しぶりです」
とは言え、さなえのコミュニケーション力にはつい身構えてしまう。
「さぁちゃんで良いって。敬語もやめて。友達でしょう?」
「それほど親しくなった覚えはないですけど」
「冷たっ。一緒に審査を受けてきた仲間じゃない」
「仲間?」
「そう。ここまで来たらもう仲間よ」
「でも、今日で終わりかもしれないですし」
「それはそうだけど、じゃあ今日で受かったら仲間でいいよね」
「同僚ということになるので、仲間といえばそうですね」
「なんか面倒くさいなぁ。審査会場で宙返りまでした人とは思えない」
私はその場にいなかったさなえが知っていることに驚いた。
「なんで知っているの?」
「私たちのなかでは有名だよ。審査で特技披露として椅子を使って宙返りした人がいるって」
いや特技披露は似顔絵だったが、誰なんだ、そんなことを広めるのは、守秘義務とかどう思っているのか。
「紗良ちゃん。おはよう」
菅井真由美が話しかけてきた。
「菅井さん。おはようございます」
「真由って呼んでって言ったのに」
「私は名前で呼んでくれるわよ」
さなえは何のマウントを取ろうとしているのかわからないが、ただ単に春代と区別しているだけということは黙っておいた。
「ごめんなさい。私がそういう人がいたって話したの。でも名前とかは言ってないよ」
「後から会った真由に訊いたら審査員の前で宙返りをした人がいるっていうから、どんな子? って訊いたわけ。そしたら制服の子っていうから間違いないなって思ったの。名前を聞いたわけじゃないよ」
そこまでわかれば、名前を言わないまでもほぼ確定なのだが。
「それで、お二人は昔からの知り合いですか?」
「このオーディションで知り合ってなんか友達になったの」
コミュ力が高い人間が集まると、こうも簡単に友達とかになれるのかと感心する。
「みんなで受かるといいね」
「そうですね」
二人なら受かるのではないかと言おうかと思ったが、結果が変わるわけでもないので黙って席に着くと周りを観察する。
見ると自分を入れて九人しかおらず、この中で何人が受かるのだろう? そう思いながら待っていると係の人が入ってきて今日の予定を伝えますと言われた。
「お疲れ様です。今日の四次審査は面接だけです」
「どういうこと?」
さなえが小さい声で呟く。
「皆さんにはこの前もアピールしていただいていますので、今更同じことをしていただかなくてもわかりますから、今日は一人ずついろいろとお話を聞かせてもらいたいと思います。連絡していたように大体一日かかると思いますのでよろしくお願いします」
アイドルの審査、オーディションとかを受けたことがあるわけではないから、どういうものが正解なのかわからなかったので、こういうこともあるのかと自分の中で納得する。
「一番目の人お願いします。入ったら名前を言ってください」
席の名前があいうえお順に並んでいると思ったらそのまま面接番号順だった。
「失礼します」
扉を閉めて椅子の横に立ち、名前を言った。
「相羽紗良です。よろしくお願いします」
お辞儀をして前を向いた。
「座ってください」
そういわれて椅子に座って見渡すと、三次審査でいたプロデューサーとマネージャーのおじさんは今日もいたが、人数が十人ほどに増えていた。
「それでは始めさせていただきます」
端にいる若干若そうな人が進行をすると、面接という名の審査が始まった。
「相羽さんは学生だよね」
「そうです」
「今までこういったことに応募したことはあるの?」
「いえ。全然ありません」
プロデューサーが質問してきた。
「アイドルになりたいと思っていたの?」
「今まではそんなことは思っていませんでした。ライブの映像をテレビで見てもっと知りたいと思ったのがきっかけです」
「知りたいとは?」
「アイドルというものが何なのか、もっと知りたいと思ったんです」
「なりたいというわけではないの?」
「勿論なりたいと思っていますが、なってみなければすべてを知ることができないと思って応募しました」
「すべてねぇ。知りたいことのために最も有効な手段として自分がなってみるという方法を選んだというわけだ」
「簡潔に言うとそうです」
「でも、全力でやるんでしょう?」
「全力でやらなければ知ることができないと思いますので」
「やっぱり変わった子だな」
プロデューサーはそういって何か書き始めた。
「ところで、相羽さんはSNSとかしてるの?」
若めの人が訊いてきた。
「いえ。それも全然していません」
「コミュニケーションアプリとかも?」
「そうですね。知り合いは近所ですので、連絡したいことがあれば行けばいいですし、最悪ショートメールで用件は済みますので。一応コミュニケーションアプリもすることはできますが、交換したのは二人だけです。それも基本的に見ませんが」
「SNSとか見ることもないの?」
「今までの生活では必要性を感じませんでしたので、そういうことはしませんでした。でも知識としては知っています」
どう答えたらよいのか全くわからなかったので、とりあえず本当のことを話しておくことにした。
いくつかのやりとりの後、今日は制服ではないのかと訊かれたので、最後なのでお気に入りのワンピースにしましたと答えたところで、立って微笑んで見せてと言われ、得意ではないものの頑張ってそのようにした後、終了を告げられて、待機室で待っていてくださいと言われた。
今回は今日この場で合否を教えてくれるらしい。
「失礼します」
お辞儀をして扉を出ると、さっきとは違う部屋に案内されて、係の人がお昼は用意してあるが、とりあえずそれまで自由にしていてもらって構わないと言われる。
もしもアイドルとかになると待機時間というのは結構あるので、これも経験ですよと言ってから出て行った。
ネットで撮影の合間に二時間待ちとか普通にあるようなことも書かれていたので、なるほどと思いながら、持ってきた本でも読むしかないとカバンから出して、もうこれで最後だからお昼のお弁当だけは記念にしっかりと食べて帰ろうと思った。
面接から帰ってきた子たちでだんだん控室がにぎやかになってきたので本を読みながら横目で朝のように観察する。
私の次に帰ってきた二人目になる子はちょっと泣きながら入ってきたので、何があったのかと思ったがうまく受け答えができなかったことで、落ちたに違いないと思っているようだった。
三人目は私より少し低いくらいで、すらっとしたモデルのようなハーフかと思う顔をした子で、チラ見した感じでは落ち着いた印象だったので年齢も私よりは上かな。
四人目は入ってくるなり、「あー、緊張したー」と言いながら、みんなにお疲れ様ですと挨拶してから、「ここ空いてます?」と訊いて私の隣に座った。私から見ても子供かと思うくらい幼い彼女は「浦部美香です。宜しくお願いします」とにこにこしながら言われたので、私も「相羽紗良です」と挨拶を返す。
特に私から話すこともないので、結局そのまま本を読み始めたら、つまらなさそうに居眠りをしだした。
これは年齢が低そうなのに大物だなと思ったことを覚えている。
五人目の子はちらっと見たところでは、ちょっとボーイッシュな見た目の小顔な可愛らしい子だった。私を見ると何か話したそうな感じだったが、こちらがあまり意識しないようにしていたので、話をするタイミングが見つからず少し離れたところに座ってスマホを見ていた。見た目ほど男の子っぽいわけではないみたい、そう思いながらまた本を読み始める。
六人目の子は三番目の子と知り合いらしく隣に行くと面接のことについて話をしていた。
七人目に真由が帰ってきて私の隣が空いてないと言いながら、後ろに座ってスマホを見始めた。
八人目の子は、明らかにお嬢さんと言った雰囲気の子でちょっと緊張した感じだったが、優し気な感じが見て取れる。
最後に九人目としてさなえが帰ってきて、係の人から面接が終わって全員そろったので合格発表をする前にお弁当を取りにきてくださいと言われた。
「これが、アイドルが食べるロケ弁というものか」
そう言って、とりあえず記念だ記念だと私がお弁当を持ってくると、さなえがこれは結構いい現場に行かないと出てこないよと教えてくれた。
さなえと真由美からみんなで食べようと言い出し、机の向きを替えてもいいかと係の人に訊いて動かしていた。
個人的には一人で楽しみたかったが、空気的にそんなことを言い出すことはできずに、とりあえず流されるまま同じようにする。
みんなが向き合ったところで名前だけでも自己紹介しましょうというので、順番に名前を言うことになり、面接順でということになったので私から挨拶をすると。全員が知ってるという目でこっちを見たのは、誰かさんのおかげで有名人になっているからだった。
それから全員の紹介が終わり、面接の内容がどうだったかという話になった。
私はSNSをやっているかと訊かれたので何も見ないしやっていないと答えた時、さなえがコミュニケーションアプリの既読すらつかないので本当だというと、全員から化石だと言われた。
どうやら、SNSをやっている子は、受かった場合にはできるだけ消すようにしてもらうと言われたらしく、ブランドイメージの維持もしなければいけないので、載せていいことといけないことなどを選別する必要があるから個人では勝手にしないでほしいということらしい。
コミュ力モンスターのさなえ達にすればかなりの苦痛にはなるだろうが、私は何ともなくノーダメージですむ。
そんなことは結局受かってからの話だということで、最後にはちょっと雰囲気が暗くなり、気分が上がったり下がったり忙しい子たちだなと私は客観的に見ながら思っていた。
お昼の時間が終わり、いよいよ発表の時がきた。
「それでは皆さんこちらにお願いします」
案内されたところは、私たちには知らされていなかったが合格発表の式場となっており、記者のカメラマンやテレビカメラも来ているのが見える。
「こんなの、突然すぎるし聞いてないよ」
帰ってきたときに泣いていた飯塚朋子が、会場の袖に並んでからその光景をみて、また涙目になっていた。
「私も聞いてない」みんなが口々にいうと、司会の人がヴァルコスマイルの二期生となった方々の紹介をしますというアナウンスをして、名前を呼ばれた人から広がるように順に左右に行ってくださいと言った。
ついに合格者の名前が呼ばれる。
「井手愛美《いであみ》」
彼女は喜びと驚きと戸惑いを隠しきれずに、みんなにお辞儀をすると、緊張した顔で立ち位置に歩いて行った。
「終わった」私はそう小声で言うと、飯塚朋子と目を合わせた。飯塚朋子は始めから涙目になっていたが、今は本当に泣いていた。
小さい声で「入りたかった」と肩を震わせていたが、私は残念だったと思うものの、そこまでの感情はこのときにはわかなかった。
ただ朋子が可哀そうになって、同じ境遇として頭をなでて慰めてあげた。
「浦部美香」
と呼ばれて美香がこちらを見て小さく返事をしてから歩いていく。
「服部未来」
そうアナウンスがあり、彼女は「はいっ」と元気な声で返事をして歩いていった。
アイドルはいつも明るくないといけないなと思いながら、声を殺して泣く朋子の肩を抱いて、その光景を眺めていた。
「木下朱里」
その名前が呼ばれた時、朱里を含めて順番で呼ばれなかった子はみんなが「あれっ?」そう思った。
泣いている朋子は全然聞いていないみたいだったので、小さい声で「なんか、順番じゃないみたいだよ。まだチャンスはある」と教えてあげたら、顔を上げて朋子は周りを見た。
涙であふれた目を手でぬぐおうとしたので、化粧が崩れると言ってハンカチでそっと吹いてあげる。
残ったみんなでアナウンサーの方を見ていると「河合陽子」「菅井真由美」の後に「飯塚(いいづか)朋子(ともこ)」と呼ばれたので、「ほらっ、行って」と背中を押してあげた。
そのあと、「山岸さなえ」と呼ばれ、私に「行ってきます」と言いながらでていった。
最後に残った空間、私はその立ち位置に何と言ったらいいのか複雑な感情を抱いていた。
「真ん中とかないでしょ。なんの冗談なのよ」
本気でそう思っていた。
アイドルにはなりたいしできれば受かりたいと思ってはいたが、真ん中に立っていくことまでは想定していない、それは私ではないと考えていた。
司会の人がマイクに向かって告げる。
「相羽紗良」
自分の名前が呼ばれてから一瞬逃げ出そうかとも思ったが、それなら何のためにここに来たのか、ここまで来たら行くしかない。
「はいっ!」
背筋を伸ばせと自分に言い聞かせ会場中央に歩いていくと、係の人がこちらにお願いしますと、やはり真ん中を指さしたので、内心とは裏腹にできるだけ堂々と歩いていく。
全員がそろったところでカメラのフラッシュがたかれ、司会の人が告げた。
「以上九名がヴァルコスマイルの二期生オーディション合格者です」
そう言われたとき、周りから拍手が起こった。
会場に来ていた関係者以外の人は私たちが今日九人集められて、名前を呼ばれなかった時に、その中から落ちたのだと思ってジェットコースターのような気持ちを味わったということは知らない。
今度はうれし泣きだったが、結局のところ朋子はまた泣いていた。
私はというと受かったことへの実感もあまりなく、場違いなところに来てしまったという感じがしていた。それでもライトに照らされていると、ここからがスタートなのだという気持ちがだんだんと湧いてくる。
しばらくカメラのフラッシュがたかれた後、司会の人が進行をしはじめた。
「それでは、真ん中の相羽さんから自己紹介とこれからの意気込み等をお願いします」
周りの視線が集中する。
これだけの知らない人の前で挨拶をすることなど、当然今までなかった。
むしろ目立たないようにしてきたのに、アイドルというものが知りたかったとは言え、今していることは今までの人生とは全く真逆だ。
「大丈夫か? 私」そう心の中で思ったが、お母さんに「今やりたいことができたなら、やりなさい」そう言われたことを思い出して顔を上げる。
「東京都出身、十七才、相羽紗良です。特技は(とりあえず)似顔絵を描くことです。これから頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします」
と、それだけは絞り出した。
写真撮影の時間が終わり、二期生のお披露目会をするという日程を発表して合格発表は幕を閉じた。
そのあと会議室に呼ばれ今後について契約をするため未成年者は保護者の承認が必要であることやお披露目会に向けてレッスンがあることなどの連絡と書類やスケジュールを渡された。
その他の連絡は随時メールやコミュニケーションアプリで行うので、スマホの確認をしない人は一日に最低一回、五時過ぎには確認をするようにしてほしいと言われた時、みんなが私を見たのは気のせいか。
お母さんに「受かった」という短いメールを送ったら、「おめでとう」という短いメールがすぐに帰ってきた。
気を付けて帰宅して下さいということで、みんなそれぞれ迎えが来たりして帰っていく。
いろいろありすぎて時間の感覚がおかしくなってきたが、私もみんなに合わせて帰るように書類を鞄に詰めていると、朋子がやってきて「名前を呼ばれる時にそばにいてくれてありがとう」とお礼を言いに来た。
「いや、私も落ちたと思ったけど、あまりにも横でショックを受けているようだったから」
普通だよと言いながら軽く微笑む。
「そっそれでも、お礼が言いたかっただけ」
そう言って、またねと手を振りながら逃げるように去っていった。
私が戸惑いながらも手を振っていると、審査員のおじさんが話しかけてきた。
「相羽さん。合格おめでとう」
「村雨さん。ありがとうございます。村雨さんは年上なのですから、呼び捨てでも、紗良でも結構ですので気を使わないでください」
合格後のミーティングで村雨という紹介があったのだが、心の中ではおじさんと呼んでいる。
ヴァルコスマイルの統括責任者で部長という偉い人だが、二次審査で審査員の席に座っていたのは当日体調不良で来られなかった人の代わりに来ていたらしい。
思い返すと他の審査員の人たちの雰囲気が変な感じはしていた。
二次審査にそんな偉い人が来ることはないので戸惑っていたということのようだ。
東京の会場でなければそういうことはなかっただろう。
「申し訳ないが、正式にメンバーになった時には、これからアイドルとしてスタートすることに加えて、暫定的ではあるが頼みたいことがある」
「何でしょうか?」
「相羽が二期生の他の八人をまとめていってほしい」
「グループにはリーダーもいますし、私よりも年上の人もいますよね」
「全体のリーダーはいるけど、二期のまとめ役としてだ」
「私は、あまりコミュニケーション力がないので、そこまではできないと思いますけど」
うーんと顎に手をあててどう言おうか言葉を選ぶように説明をした。
「まとめ役と言ってもアイドルは結局個々の集まりだから競技のキャプテンみたいなものではなくて、何というか精神的な支柱としてだな」
「精神的な支柱ぅ?」
さなえとかコミュ力の高い人がいるでしょうにと思いながら、腑に落ちない顔をしていた。
「知らなかったか? 今日来たあの八人に頼れそうだと思うのはだれかと訊いたんだ」
「私は訊かれていないです」
「そらそうだよ。相羽のことを訊いているんだから」
村雨部長はみんなが待ってるときなどの状況をみて、どういう子たちなのか、どういう雰囲気なのかを見ていたらしい。
「でも私が普通に話をしたことがあるのは、山岸さんと、菅井さんだけです」
「みんな相羽はなんでもできそうだし、きれいで落ち着いた感じがすごいから、話しかけたいけど近寄れないと二人以外は言っていたぞ」
そういえば面接の後、陽子は何か言いたそうに目の前を通って行ったし、美香は隣に座ったものの、私が本を読んでいるからかつまらなそうにしていた。
何か話しかけてあげた方がよかったのかな、今度そういう時があったらできるだけ話しをしてみようと思う。
「みんなが多分相羽は受かると思ってたみたいだから、相羽の名前が最初に呼ばれなかったときはさぞ驚いただろう。まあそれはさておき、自分自身もこれから大変なこともあるかと思うが頼むよ。頑張ってな」
腕時計をみて「初めてみた時から推しているんだから期待しているよ」そういいながら去っていった。
「ありがとうございます。頑張ります」
さなえの言う通り嫌がらせとかではなかったんだなと思い、ダンスの時とか嫌がらせかと思って頭の中で三回くらいは罵倒したことを心で謝りながら、去っていく背中に向かってお辞儀をした。
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