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ネカフェを出たあとは…

あの朝の続き・1

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 羽鳥くんが自然に手を繋いで街を歩くからなんとなく気恥ずかしいけどその手を握り返していた。
 横に並んで歩くだけでなんだかドキドキするのは新鮮で。瑛太と付き合いだした頃の事を思い出したけど、手を繋いで歩いてた時期なんか一時のことだったなぁと思い返してなんとなくしゅんとなる。

「どした?」
「んん?んー、手……」
「やだ?」
「ううん……羽鳥くんってしっかりギュッと握ってくれるんだなぁって……」
 そこまで言ったらまた呆れられた顔をされた。

「ごめん。でもさ、やっぱりなんか比較しちゃう、ごめん」
「比較されんのはいーけどさ。めちゃくちゃハードル低いよな」
「え?」
「こんなこと?みたいなしょうもないことで友香子喜びそうじゃん」
「そ、そんなことないと思うけど」
「そー?手ぇ繋いで感動してる時点でレベル低すぎ。何してもらってたんだって聞きたくなるわ。むしろ比較してその都度教えてほしいね」
 比較されるのとか嫌じゃないのかな、そんな気持ちで見つめたら心を読まれたのか。

「別に嫌じゃねぇけど。どうやったて過去は過去だし無視できねぇよ」
 それってつまり……羽鳥くんも前の彼女や昔の恋人を思い出したり私と比較したりするってこと……?

 自分は瑛太をいちいち引っ張り出してきて何様だと思ったけれどそれこそ無視できなかった。過去を思い出す羽鳥くんが嫌だ、なんて。昔の恋人と自分を比べられたら……どうしよう、嫌だ。

 でも本当に情けないが……付き合ってたくせにたいした思い出もないんだ。一年近く付き合っていたのに逆に不思議だ。瑛太となにをして過ごしていたんだろう。職場で顔を合わす時間も多かったから基本は会っていた。それでも仕事帰りにご飯へいくとかもないし、休みは家でゆっくりすることが多かったり、出張で会えないことも日常。いきなりフラッと家に来られることもあったけど、基本は瑛太の都合。いつもだいたい私の部屋で、瑛太の部屋に呼ばれることなんか数回だけだった。

「……私って、大切にされてなかったんだね」
「……」
 ぽつり溢す言葉に羽鳥くんは何も言ってくれない。

「ねぇ、そう思う?そうだよね?私って全然大切にされてないよね?」
「……」
「いいから言ってよ」
 シラッとした瞳で見つめるくせに何も言ってくれないからムッとした声になってしまった。

「お前がされてないって思うならそうだよな」
「そうじゃなくって!客観的に!男側からしてどう思うかって聞いてるの!」
「されてねぇ」


 ガーン。

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