ネカフェに住むチャラそうな男について行ったら抱きしめられてプロポーズされました。

本編

2

　羽鳥くんはいろんなことをサラッとケロッと言い過ぎじゃないかな。どこまで本気？え？本気なの？


　――本気で言ってるの？


「わ、私、まだ彼氏……」
「うるせぇな。いつまであんなヤツ彼氏にしてんだよ」
　いつまでもなにも……まだ付き合っている、それを言いかけたら先に言われた。

「どうせ祇園で女と遊んでんだよ」
「……」
　そんな気はしてたけど、考えないようにしてたんだよ？いつもいつもいろんなところで他の女の子にいい顔してるんだろうなって。私は……実は本気の彼女なんかじゃないんじゃないかって。

　だから飲み込んで、傷つかないように、自分から……都合のいい女に成り下がっていただけ。

「お前が義理立てしたところで、あっちはお前になんも誠実じゃねぇよ」

　”誠実”……それは私が一番好きな言葉だって、羽鳥くん知ってる？自分の中にあるものや周りを大切にすることが誠実であるって思ってた。相手との約束をきちんと守ること、”ありがとう”や”ごめんね”を素直に言葉にすること、相手が悲しむようなことはしないこと。大切な人と向き合う時こそそれを一番大事にしたかった。


　大事にしてほしかった。上辺の言葉だけじゃなく、真摯にその姿勢を見せて欲しかった。
　でも私だって――なにも見せれていなかった。瑛太にありのままの私なんか見せてこなかった。


「……別れる勇気、なかった」
　好きと言われた言葉を信じたかったんじゃない。羨ましがられるから縋っていたんじゃない。ただ、自分に素直になって、自分の幸せってなんだろうって向き合えなかっただけ。瑛太がいなくなったら自分は誰のために頑張ればいいんだって。

「別れるなんか我慢することじゃねぇし。お前の人生、あいつがすべてみたいなのクソ腹立つんだけど」
　そんなこと言ってくれる人、今までいなかった。

「私の人生？」
「お前の人生じゃん。行きたいところ行って、食いたいもん食って、欲しいもん買えばいい」


　私の人生は、私のもの。そう言ってくれる人の傍にいたいって言うのも我儘じゃないのかな。


「ちゃんと、さよならするから待っててくれる？」


　わがまま言って、甘えて、愛してほしいって相手に言える勇気がなかったの。


「別れたら……一緒にいてくれる？」


　愛してくれる？私だけを、ずっと。この先もずっと。

　
「これ以上待つの無理だし今日中な？」
　時間厳守、納期絶対、報連相確実、状況把握徹底。羽鳥くんはやっぱり絶対真面目だよね？

　チャラそうで女遊びしてそうなのに、ちゃんと未来の約束してくれる真面目な人。そんな人とだから、私も自分のために未来を見つめられるんだ。

　
～END～


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羽鳥視点続きます＾＾