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本章
Episode29/芽吹く
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スイートルームに差し込まれる朝日はこんなに白くて奇麗なのか。
眠気眼のあかりは大きな窓にかけられたレースのカーテンの隙間から入り込んでくる朝日を見つめながらそんなことを思った。
広い部屋の中、ベッドの下に乱れ落ちたバスローブがなんだかいやらしい。それを横目にしながらあかりは自分の背後から聞こえる小さな寝息に振り向いた。
不破の寝顔を見るのは初めてだった。
不破と何度か身体を重ねてもこんな風に朝を迎えたことなはい。寝顔を見るのも初めて、寝息を聞くのも初めて、これからもっと不破の初めてを知れると思うだけで胸が高鳴った。いつも見つめてくれる紅茶色の瞳が今は閉じられている。案外まつげも長いのか。スッと通った鼻筋に形のいい唇から規則正しい寝息が聞こえる。静かな寝息で息をしているのかな?そう思えるほど静かだ。こういう寝方なのか、深い眠りについているのか、これから不破と朝を迎えるたびそれが一つずつ解明されていくのかもしれない。それを思うと自然と頬が緩んだ。
(寝顔までかっこいいってなんなんだろう……私、寝起きなんか年々目も当てられないけどな)
そんな気持ちがわくととても不破に寝起きの顔を晒せられない。寝ている隙に少しでも顔や髪の毛を整えたい、そう思ってあかりはベッドを抜け出した。
顔を洗って軽くメイクをして髪の毛を整えた。鏡に映る自分を見ながら肌を触る。
不破と関係を始めてからいろんなことが変わった。肌の調子も体型も。自分はこんな顔をしていただろうか、こんな肌の色をしていたのか、髪だって艶が戻った気がする。おろそかにしていた頃の自分は今では思い出せない、こんな風に自分の顔をゆっくり眺めるすらしていなかったのだから。
持ち物だって変わった、化粧直しも今までは最低限だったが、ベースメイクも直せるほどのものは持ち歩くようにしたし、洗い流さなくてもいいトリートメントも鞄に入れている。香水類は苦手だが、髪や体から香るものは意識はしたい。不破に触れられた時、不破自身にも心地よく思ってもらいたい気持ちがある。
「あかり?」
パウダールームに顔をのぞかせた不破はまたバスローブを羽織っていた。少し乱れて、鎖骨が露わになっていて目に毒だ。そこに寝起き、アンニュイさも混じって無駄に色気がすごい。化粧したあかりよりも確実に色気を放つ不破を見つめながらあかりは思う。
(化粧しておいてよかった……。明るい部屋の中、しかもこの樹さん前にしてとてもじゃないけどスッピン晒せる勇気ないわ)
「起きたらいないからびっくりした」
そう言って抱きしめてくるからあかりは固まった。
「す――すみません」
「起こしてよ」
「気持ちよさそうに寝てたから……起こしたら可哀想って思って……」
すり寄るみたいな甘え方をされてあかりの胸はキュンキュンしてくる。
「起こして……目が覚めてひとりやだ」
(か――っ、可愛いかよ!!)
色気放ちながらのその甘え方と甘さにあかりの心拍数が加速していく。抱きしめられているから自分の今の顔が見られなくてすんでホッとしていた。見られていたらきっと笑われる、それくらいにやけて赤いであろう自分の顔が想像できているからだ。
「朝から何でこんな誘うような匂いさせんだよー」
「え?」
「本田じゃないけど……なんだよ、これ。誘ってるくらいいい匂いする、ダメ」
「……ただのトリートメント……」
あかりの呟くような言葉に不破の腕が緩んで肩を掴まれた。その手が首筋に入り込んできて頬に添えられる。
「ダメ。なんか、疼くわ、これ。しかももう服着てる……なんで?なんか急いでんの?用事あんの?」
もう片方の手が毛先を持て遊ぶようにいじりながら覗き込んでくるからあかりは照れながらも首を横に振った。
「用事なんか……服着ないと、その、落ちつかなかっただけで……」
「ふぅん?じゃあ脱がそ」
「は?」
会話がなんだかおかしい。
「脱ごっか」
ニコリと微笑まれてあかりもつられて微笑み返してしまう。そしてハッとする、違うだろ、と。
「なん、え?脱ぐの?なんで――」
「朝セックスしたことないし。せっかくだししとこうか」
「……」
スイートルームの朝セックス――ニコニコしながらの不破の提案にあかりは一瞬呆気に取られるものの脳がその言葉を理解したら途端に身構えてしまった。
(えー!この真っ白な眩しい世界で裸ぁぁ?!)
心の中であかりは絶叫した。
眠気眼のあかりは大きな窓にかけられたレースのカーテンの隙間から入り込んでくる朝日を見つめながらそんなことを思った。
広い部屋の中、ベッドの下に乱れ落ちたバスローブがなんだかいやらしい。それを横目にしながらあかりは自分の背後から聞こえる小さな寝息に振り向いた。
不破の寝顔を見るのは初めてだった。
不破と何度か身体を重ねてもこんな風に朝を迎えたことなはい。寝顔を見るのも初めて、寝息を聞くのも初めて、これからもっと不破の初めてを知れると思うだけで胸が高鳴った。いつも見つめてくれる紅茶色の瞳が今は閉じられている。案外まつげも長いのか。スッと通った鼻筋に形のいい唇から規則正しい寝息が聞こえる。静かな寝息で息をしているのかな?そう思えるほど静かだ。こういう寝方なのか、深い眠りについているのか、これから不破と朝を迎えるたびそれが一つずつ解明されていくのかもしれない。それを思うと自然と頬が緩んだ。
(寝顔までかっこいいってなんなんだろう……私、寝起きなんか年々目も当てられないけどな)
そんな気持ちがわくととても不破に寝起きの顔を晒せられない。寝ている隙に少しでも顔や髪の毛を整えたい、そう思ってあかりはベッドを抜け出した。
顔を洗って軽くメイクをして髪の毛を整えた。鏡に映る自分を見ながら肌を触る。
不破と関係を始めてからいろんなことが変わった。肌の調子も体型も。自分はこんな顔をしていただろうか、こんな肌の色をしていたのか、髪だって艶が戻った気がする。おろそかにしていた頃の自分は今では思い出せない、こんな風に自分の顔をゆっくり眺めるすらしていなかったのだから。
持ち物だって変わった、化粧直しも今までは最低限だったが、ベースメイクも直せるほどのものは持ち歩くようにしたし、洗い流さなくてもいいトリートメントも鞄に入れている。香水類は苦手だが、髪や体から香るものは意識はしたい。不破に触れられた時、不破自身にも心地よく思ってもらいたい気持ちがある。
「あかり?」
パウダールームに顔をのぞかせた不破はまたバスローブを羽織っていた。少し乱れて、鎖骨が露わになっていて目に毒だ。そこに寝起き、アンニュイさも混じって無駄に色気がすごい。化粧したあかりよりも確実に色気を放つ不破を見つめながらあかりは思う。
(化粧しておいてよかった……。明るい部屋の中、しかもこの樹さん前にしてとてもじゃないけどスッピン晒せる勇気ないわ)
「起きたらいないからびっくりした」
そう言って抱きしめてくるからあかりは固まった。
「す――すみません」
「起こしてよ」
「気持ちよさそうに寝てたから……起こしたら可哀想って思って……」
すり寄るみたいな甘え方をされてあかりの胸はキュンキュンしてくる。
「起こして……目が覚めてひとりやだ」
(か――っ、可愛いかよ!!)
色気放ちながらのその甘え方と甘さにあかりの心拍数が加速していく。抱きしめられているから自分の今の顔が見られなくてすんでホッとしていた。見られていたらきっと笑われる、それくらいにやけて赤いであろう自分の顔が想像できているからだ。
「朝から何でこんな誘うような匂いさせんだよー」
「え?」
「本田じゃないけど……なんだよ、これ。誘ってるくらいいい匂いする、ダメ」
「……ただのトリートメント……」
あかりの呟くような言葉に不破の腕が緩んで肩を掴まれた。その手が首筋に入り込んできて頬に添えられる。
「ダメ。なんか、疼くわ、これ。しかももう服着てる……なんで?なんか急いでんの?用事あんの?」
もう片方の手が毛先を持て遊ぶようにいじりながら覗き込んでくるからあかりは照れながらも首を横に振った。
「用事なんか……服着ないと、その、落ちつかなかっただけで……」
「ふぅん?じゃあ脱がそ」
「は?」
会話がなんだかおかしい。
「脱ごっか」
ニコリと微笑まれてあかりもつられて微笑み返してしまう。そしてハッとする、違うだろ、と。
「なん、え?脱ぐの?なんで――」
「朝セックスしたことないし。せっかくだししとこうか」
「……」
スイートルームの朝セックス――ニコニコしながらの不破の提案にあかりは一瞬呆気に取られるものの脳がその言葉を理解したら途端に身構えてしまった。
(えー!この真っ白な眩しい世界で裸ぁぁ?!)
心の中であかりは絶叫した。
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