上 下
8 / 37
本章

Episode8/逢瀬

しおりを挟む
(ちょっと~ちょっと待ってよぉ~~!!)

 託された仕事を真面目にしようと思っていた、さっきまでは。なのに今、仕事どころではなくなっている。なぜなら、不破の膝上に座らされているからだ。毅然とした態度で仕事をしようとは思うのに集中できるわけがない。不破の手は自分の身体をまさぐっているのだから。

「ちょ、ん、そこやだ……」
「そこまで刺激してないだろ、はやく入力終わらせろよ」
「そんなぁ、なら触るの……ゃあ、ぁん」
 ブラウスのボタンを外されて胸の前は半分ほどはだけている。下着が見えて脱がすことはせず指先だけが胸の膨らむ部分に差し込まれていた。

「今日つけてる下着可愛いな、俺好き、こういうの」
 今日は薄いオレンジ色のブラッシュアップタイプの下着。井原ではないが新しく購入したものだ。エンブロイダリーレースをカップにあしらい咲き誇る花が印象的なデザイン、土台にはアイラッシュレースをかけ合わせたデザインのブラジャーだ。胸のボリュームを出し過ぎずにスタイルアップできると謳われているだけあって本当にいつもよりもバストアップに成功している。
 不破が抱きたいとき、は本当に抱きたいときだった。
 はじめて職場で求められたときは驚いた。トラブルで不破と二人で残業していたオフィスでいきなり求められて困惑した。普段仕事をしているデスク周りで不破が自分にのしかかってくちびるを奪ってきたから異様に興奮したことは言えないが本音だ。
 そんな経験を身を持ってしたら構えるようになった。このようなことが今後もあるかもしれない、それなら――。

(下着がやばい!!)

 あかりの心配事はそれしかなかった。
 今まで生活に雑だったあかりが下着にまで気にかけていたわけがない。見せる機会もない、着心地と服に響かないだけを目的にした下着、色気など二の次だった。
 慌てて下着売り場に走って数枚新調した。そのひとつは不破のツボを突けたらしい。

(こういうの好きなんだ……良かった、でもなんか嬉しいな、相手が喜ぶかなって考えて下着選ぶとか……そんなの今までしたことないかも)

「ぁんん……」
 下着の中に指先を滑り込ませ反応している突起物を撫でられて身を捩る。部分的に触れられるだけではだんだん物足りず下半身も疼き始めるのに不破はそれ以上は触れてこない。

「はぁ、ん……」
「早く終わらせてよ……あかりのナカに入る時間減る」
「そんなぁ……」
 刺激され焦らされて仕事を急かすなんて鬼じゃないだろうか、あかりはもう脳内がクラクラしてまともに入力などできそうにないと思い始める。

「も、無理……樹さん、無理ですぅ……」
「何が無理?どっちが無理なの?仕事?我慢すること?」
「――がまん、するの……」
「じゃあもう先にしよっか」
 そんな風に言う不破はいつもよりも幼く感じる。部長としてオフィスで部下に指示を出しているデキる男には見えなかった。あかりの縋るような甘え方に嬉しそうに微笑む顔はオフィスで見ることはできない。

 背中越しで抱かれていたあかりは一度席を立たされて向かい合わせになるように立たされた。そのときスカートが腰まで持ち上げらて不破の視線が痛いほど下半身に注がれる。

「なにこれ、エロー」
 不破がそう言ったのはあかりが履いていたTショーツのことだ。ウエスト脇にアイラッシュレースをほどこし、レーシィなデザインのソングタイプ。Tショーツといっても絶妙なTシルエットでお尻も綺麗に見せてくれた。全体的に可愛いがセクシーさも含んだそれは着けたあかり自身もテンションを高くした。

「こんなのつけて仕事してんの?ダメじゃん、誰に見られるかわかんないのに」
「……見るの、樹さんだけです」
 あかりの熱を含んだ目に見つめられて不破も見つめ返す。指先はウエスト脇のレースにかけられて、不破の顔はあかりに近づいていく。

「ン」
「あかりとするときってさ……」
 キスの合間に不破が話しかけてきて、キスに酔わされているあかりは思考を戻すのに必死だ。

「ん、ぁ――は、い」
「ゴムいらないじゃん」
「は、ぁっ――」
 ショーツは脱がされて、濡れた部分に指先が侵入してくる。それをあかりの身体は抵抗なく受け入れる。素直に感じて濡れていくその身体を不破は嬉しそうに見つめながら指を器用に動かしてまたくちびるに吸い付く。

「はぁ……だからさ……」
 不破の声が甘い。
 あかりはその声も好きだと抱き合うようになって感じている。どんどん好きだと思うところが増える、あかりはその気持ちに戸惑いだしていた。

「いつでも、どこでも抱ける……」

 ――抱きたいときに抱ける女がいたらいいなって、ごめんな、俺そんなこと思う男だよ

 甘い言葉に声に騙される、勘違いさせられる。
 不破は最初にそう言った、不破のメリットはそこしかない。それこそが自分が求められる意味がある。

 子どもを望んでいるのは自分だけ。不破はそんなセリフ、一度も言ってはいない。

「あん!」
「あかり……」
 いつも、いつも不破はひとつになったら名前を呼ぶ。それも愛しそうに。それもまたあかりの胸を震わせた、同時に胸を切なく締め付けてくる。

(ダメだ……どうしよう……抱かれるたびに胸が痛くなる……)

 肌を重ねることに慣れると怖くなる。
 抱き締められるたびに切なくなって、時間を積み重ねるほど、好きが見つかる。
 自分こそ、不破を子供を産むための手段として利用しているくせに――。

「ぁ――、はぁ……いつき、さ……」
 抱き締めて不破を感じる、身体の中で疼く思いを不破が突いてくる。
 それがどうしようもなく苦しくて、あかり自身がその苦しさを受けとめられなくなってきていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~

真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

勘違いで別れを告げた日から豹変した婚約者が毎晩迫ってきて困っています

Adria
恋愛
詩音は怪我をして実家の病院に診察に行った時に、婚約者のある噂を耳にした。その噂を聞いて、今まで彼が自分に触れなかった理由に気づく。 意を決して彼を解放してあげるつもりで別れを告げると、その日から穏やかだった彼はいなくなり、執着を剥き出しにしたSな彼になってしまった。 戸惑う反面、毎日激愛を注がれ次第に溺れていく―― イラスト:らぎ様

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

昨日、課長に抱かれました

美凪ましろ
恋愛
金曜の夜。一人で寂しく残業をしていると、課長にお食事に誘われた! 会社では強面(でもイケメン)の課長。お寿司屋で会話が弾んでいたはずが。翌朝。気がつけば見知らぬ部屋のベッドのうえで――!? 『課長とのワンナイトラブ』がテーマ(しかしワンナイトでは済まない)。 どっきどきの告白やベッドシーンなどもあります。 性描写を含む話には*マークをつけています。

処理中です...