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本章
Episode26/巡る
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何度も繰り返されるキスが甘くて夢うつつな気持ちになっている。あかりはもう、思考回路が狂ってそのキスにただ酔いしれていた。
「――もういい加減ここから出さないとヤバいな」
「ん――、ぁ……」
「どんだけ話してんだよって思われるよな」
笑いながらキスを続ける不破は、そう言いながらも抱き締める腕を離そうとはしない。あかりも当然それを突き放すことなどできない。
できるならこのまま、もうずっとこのまま不破の腕の中にいたい、そう思い始めている。
1on1で呼び出して閉じ込めてからどれくらいの時間が経ったのか。明らかに長い時間はきっと部署内でも気にかけられていると不破は分かっている。いきなり扉を開けられるとは思ってはいないが鍵はかけていない。それでもどこかで扉が開いてもいいくらいの気持ちで不破はあかりを抱きしめていた。
「あかり」
「――は、い」
熱い吐息が絡み合う仲、囁くように名前を呼ばれてあかりは瞼をうっすらと開けた。目の中に飛び込んできたのは、胸をときめかせる紅茶色の瞳をした不破がいる。視界に不破が埋め尽くされるだけで嬉しさで胸が震えて体の奥が熱を孕んでいくようだ。
「そんな目で見るなよ」
「――ぇ?」
「可愛すぎてキスだけで終われない」
そう言われてあかりも照れる。心の中だけでなく身体の状態まで見透かされたようで恥ずかしい以外ない。それでも嘘はつけない、心も身体ももう不破が支配しているのだ。
「なに?」
赤くなったあかりに不破が首を傾げるので、ためらいながらもあかりは本音をこぼした。
「……わたし、も」
「ん?」
「……その、キス、だけじゃ……足りない」
不破を感じたい、身体の中に、誰も届かない奥が不破を求めて疼きだす。
「――お前な。俺を試してるだろ」
「そんなつもりは……」
「辛抱のしどころだな、これ」
不破はそう言って最後にチュッとリップ音付きのキスを落として頭を撫でた。
「色々限界。立てる?」
不破に手を取られてあかりは身体を起こしたら、不破が乱れた髪や服を軽く整えてくれる。そんな優しさと甲斐甲斐しさにまた胸がときめく。
「す、すみません」
「ん」
されるがままで気恥ずかしいが心地よくて拒否などできない。本音はもっと触れてほしい、そう思うあかりを見つめる不破の瞳はやっぱり優し気でまだ熱を含んだように見える。
「泣かせてごめん」
「これはっ……私が勝手に泣いたんです」
「でも俺のこと思って泣いたんだろ?」
それはそうだが……と、思わず黙ると不破がくしゃっと微笑んで。
「俺のことであかりが振り回されてんのがたまんないとかやばいわ、思考がクズってる」
「……え」
「俺のことで泣いてるのさえ嬉しいなって話、ごめんな?」
そう言った不破の顔は全然悪びれもしていない、いたずらっ子のようなしたり顔で……不破はこんな顔もするのかとあかりはまだまだ知らない不破の顔に驚かされる。
「今晩空いてる?」
「え?」
「ちゃんとやり直させてほしいんだけど、あかりとの関係」
「……やり直す、ですか?」
「最初のあのホテルな。今晩、時間取って、俺のために」
そうして長過ぎた1on1は終わった。いつもよりもはるかに時間がかかったことを心配していた部署のメンバーたちは扉が開いたらぎこちなく視線を反らしたが、部屋から出てきたあかりの顔を見て誰もが知らんぷりをしにくく、井原が勢いよく駆けつけてきてあかりを更衣室まで引っ張っていった。
あかりが何か大変なことをしでかして、不破にかなりひどく責め立てられたのだろう、そんな風に誰もが思っていた。不破もあかりもその噂に何も答えないのでもうそういうことなのだと勝手に納得されて、みなあかりを不憫に思って腫れ物に触る様な扱いをしていた。
あかりがなにをそこまで怒らせたのか、それはだれも突っ込まないのでもう理由はわからない。
井原と本田だけはしつこく何をやらかした、何があったのだと問い詰めてきたがあかりは何も答えなかった。答えられるわけがないだけだが。そして井原でさえ諦めたので、これはもう皆が静かに見守ろうとあえて触れずにいることになった。
そんな風に周りに気遣われた当の本人は先ほどの不破の言葉だけを脳内で思いめぐらせている。
不破と心が通い合った。
そして今夜、やり直したいと言われた。その言葉にただ胸を高鳴らせていた。
「――もういい加減ここから出さないとヤバいな」
「ん――、ぁ……」
「どんだけ話してんだよって思われるよな」
笑いながらキスを続ける不破は、そう言いながらも抱き締める腕を離そうとはしない。あかりも当然それを突き放すことなどできない。
できるならこのまま、もうずっとこのまま不破の腕の中にいたい、そう思い始めている。
1on1で呼び出して閉じ込めてからどれくらいの時間が経ったのか。明らかに長い時間はきっと部署内でも気にかけられていると不破は分かっている。いきなり扉を開けられるとは思ってはいないが鍵はかけていない。それでもどこかで扉が開いてもいいくらいの気持ちで不破はあかりを抱きしめていた。
「あかり」
「――は、い」
熱い吐息が絡み合う仲、囁くように名前を呼ばれてあかりは瞼をうっすらと開けた。目の中に飛び込んできたのは、胸をときめかせる紅茶色の瞳をした不破がいる。視界に不破が埋め尽くされるだけで嬉しさで胸が震えて体の奥が熱を孕んでいくようだ。
「そんな目で見るなよ」
「――ぇ?」
「可愛すぎてキスだけで終われない」
そう言われてあかりも照れる。心の中だけでなく身体の状態まで見透かされたようで恥ずかしい以外ない。それでも嘘はつけない、心も身体ももう不破が支配しているのだ。
「なに?」
赤くなったあかりに不破が首を傾げるので、ためらいながらもあかりは本音をこぼした。
「……わたし、も」
「ん?」
「……その、キス、だけじゃ……足りない」
不破を感じたい、身体の中に、誰も届かない奥が不破を求めて疼きだす。
「――お前な。俺を試してるだろ」
「そんなつもりは……」
「辛抱のしどころだな、これ」
不破はそう言って最後にチュッとリップ音付きのキスを落として頭を撫でた。
「色々限界。立てる?」
不破に手を取られてあかりは身体を起こしたら、不破が乱れた髪や服を軽く整えてくれる。そんな優しさと甲斐甲斐しさにまた胸がときめく。
「す、すみません」
「ん」
されるがままで気恥ずかしいが心地よくて拒否などできない。本音はもっと触れてほしい、そう思うあかりを見つめる不破の瞳はやっぱり優し気でまだ熱を含んだように見える。
「泣かせてごめん」
「これはっ……私が勝手に泣いたんです」
「でも俺のこと思って泣いたんだろ?」
それはそうだが……と、思わず黙ると不破がくしゃっと微笑んで。
「俺のことであかりが振り回されてんのがたまんないとかやばいわ、思考がクズってる」
「……え」
「俺のことで泣いてるのさえ嬉しいなって話、ごめんな?」
そう言った不破の顔は全然悪びれもしていない、いたずらっ子のようなしたり顔で……不破はこんな顔もするのかとあかりはまだまだ知らない不破の顔に驚かされる。
「今晩空いてる?」
「え?」
「ちゃんとやり直させてほしいんだけど、あかりとの関係」
「……やり直す、ですか?」
「最初のあのホテルな。今晩、時間取って、俺のために」
そうして長過ぎた1on1は終わった。いつもよりもはるかに時間がかかったことを心配していた部署のメンバーたちは扉が開いたらぎこちなく視線を反らしたが、部屋から出てきたあかりの顔を見て誰もが知らんぷりをしにくく、井原が勢いよく駆けつけてきてあかりを更衣室まで引っ張っていった。
あかりが何か大変なことをしでかして、不破にかなりひどく責め立てられたのだろう、そんな風に誰もが思っていた。不破もあかりもその噂に何も答えないのでもうそういうことなのだと勝手に納得されて、みなあかりを不憫に思って腫れ物に触る様な扱いをしていた。
あかりがなにをそこまで怒らせたのか、それはだれも突っ込まないのでもう理由はわからない。
井原と本田だけはしつこく何をやらかした、何があったのだと問い詰めてきたがあかりは何も答えなかった。答えられるわけがないだけだが。そして井原でさえ諦めたので、これはもう皆が静かに見守ろうとあえて触れずにいることになった。
そんな風に周りに気遣われた当の本人は先ほどの不破の言葉だけを脳内で思いめぐらせている。
不破と心が通い合った。
そして今夜、やり直したいと言われた。その言葉にただ胸を高鳴らせていた。
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