イケメン上司と秘密の子作り契約始めます〜あなたの子供を産んでいいですか?〜

sae

文字の大きさ
上 下
26 / 37
本章

Episode26/巡る

しおりを挟む
 何度も繰り返されるキスが甘くて夢うつつな気持ちになっている。あかりはもう、思考回路が狂ってそのキスにただ酔いしれていた。

「――もういい加減ここから出さないとヤバいな」
「ん――、ぁ……」
「どんだけ話してんだよって思われるよな」
 笑いながらキスを続ける不破は、そう言いながらも抱き締める腕を離そうとはしない。あかりも当然それを突き放すことなどできない。
 できるならこのまま、もうずっとこのまま不破の腕の中にいたい、そう思い始めている。

 1on1で呼び出して閉じ込めてからどれくらいの時間が経ったのか。明らかに長い時間はきっと部署内でも気にかけられていると不破は分かっている。いきなり扉を開けられるとは思ってはいないが鍵はかけていない。それでもどこかで扉が開いてもいいくらいの気持ちで不破はあかりを抱きしめていた。


「あかり」
「――は、い」
 熱い吐息が絡み合う仲、囁くように名前を呼ばれてあかりは瞼をうっすらと開けた。目の中に飛び込んできたのは、胸をときめかせる紅茶色の瞳をした不破がいる。視界に不破が埋め尽くされるだけで嬉しさで胸が震えて体の奥が熱を孕んでいくようだ。

「そんな目で見るなよ」
「――ぇ?」
「可愛すぎてキスだけで終われない」
 そう言われてあかりも照れる。心の中だけでなく身体の状態まで見透かされたようで恥ずかしい以外ない。それでも嘘はつけない、心も身体ももう不破が支配しているのだ。

「なに?」
 赤くなったあかりに不破が首を傾げるので、ためらいながらもあかりは本音をこぼした。

「……わたし、も」
「ん?」
「……その、キス、だけじゃ……足りない」
 不破を感じたい、身体の中に、誰も届かない奥が不破を求めて疼きだす。

「――お前な。俺を試してるだろ」
「そんなつもりは……」
「辛抱のしどころだな、これ」
 不破はそう言って最後にチュッとリップ音付きのキスを落として頭を撫でた。

「色々限界。立てる?」
 不破に手を取られてあかりは身体を起こしたら、不破が乱れた髪や服を軽く整えてくれる。そんな優しさと甲斐甲斐しさにまた胸がときめく。

「す、すみません」
「ん」
 されるがままで気恥ずかしいが心地よくて拒否などできない。本音はもっと触れてほしい、そう思うあかりを見つめる不破の瞳はやっぱり優し気でまだ熱を含んだように見える。

「泣かせてごめん」
「これはっ……私が勝手に泣いたんです」
「でも俺のこと思って泣いたんだろ?」
 それはそうだが……と、思わず黙ると不破がくしゃっと微笑んで。

「俺のことであかりが振り回されてんのがたまんないとかやばいわ、思考がクズってる」
「……え」
「俺のことで泣いてるのさえ嬉しいなって話、ごめんな?」
 そう言った不破の顔は全然悪びれもしていない、いたずらっ子のようなしたり顔で……不破はこんな顔もするのかとあかりはまだまだ知らない不破の顔に驚かされる。

「今晩空いてる?」
「え?」
「ちゃんとやり直させてほしいんだけど、あかりとの関係」
「……やり直す、ですか?」
「最初のあのホテルな。今晩、時間取って、俺のために」
 
 そうして長過ぎた1on1は終わった。いつもよりもはるかに時間がかかったことを心配していた部署のメンバーたちは扉が開いたらぎこちなく視線を反らしたが、部屋から出てきたあかりの顔を見て誰もが知らんぷりをしにくく、井原が勢いよく駆けつけてきてあかりを更衣室まで引っ張っていった。

 あかりが何か大変なことをしでかして、不破にかなりひどく責め立てられたのだろう、そんな風に誰もが思っていた。不破もあかりもその噂に何も答えないのでもうそういうことなのだと勝手に納得されて、みなあかりを不憫に思って腫れ物に触る様な扱いをしていた。

 あかりがなにをそこまで怒らせたのか、それはだれも突っ込まないのでもう理由はわからない。
 井原と本田だけはしつこく何をやらかした、何があったのだと問い詰めてきたがあかりは何も答えなかった。答えられるわけがないだけだが。そして井原でさえ諦めたので、これはもう皆が静かに見守ろうとあえて触れずにいることになった。

 そんな風に周りに気遣われた当の本人は先ほどの不破の言葉だけを脳内で思いめぐらせている。

 不破と心が通い合った。
 そして今夜、やり直したいと言われた。その言葉にただ胸を高鳴らせていた。


  
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

処理中です...