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本章
Episode9/戸惑い~あかりside~
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妊娠確率を上げるためには週二回コンスタントに性交渉をすることがお勧めってネットでは書いていたけれど――。
(その頻度だと、一年で80%……週一回になると70%に低下、か)
不破さんとのセックス頻度は多いか少ないかだと多いかもしれない。
週二回するときもあるが、二週間開くときもある。生理がかぶれば三週間開いたこともある。基本は不破さんの仕事の都合とタイミング。でもそれはしょうがないことに思えた。
(自分の周期のタイミングより不破さんの身体の空き情況のが大事……そもそも忙しいんだもん、なんだったら私のために時間割いてくれてるのかもしれないもんなぁ)
数カ月経ったが未だ妊娠はしていない。
避妊していても妊娠するって聞いていたのに、なんて浅はかに思っていた自分が恥ずかしい。
(私の年齢もあるのかな……)
年齢という名の壁、女はいつでも年齢にぶつかる気がする。そのどうしようもない現実にため息がこぼれた。ため息は妊娠していないことだけが理由でもないけれど。
こんな関係を始めたのは間違いだったかなって最近すごく思い始めてる。精子バンクで精子を買ったほうが良かったかもしれないまで思いだしていた。
(赤ちゃん欲しい……でも、それよりも感じてしまってるこの気持ち……ダメだって)
「はぁ」
思わずオフィスでため息を吐いた。それと同時だった。
「井原、さっき送ったデータ確認しといて」
オフィスに響く不破さんの声にだけ身体が反応するとかもう病気だ。身体がもう麻痺してる気がする、不破さんにだけ敏感になるようにしつけられた動物みたい。
身体だけの関係と言い聞かせているせいか、もう身体は完全に不破さんのいいなり状態。
声だけで震える。
考えるだけで疼く。
身体の奥が、欲しいと叫ぶように、不破さんを求める自分がいる。
(やらしい……)
自分が浅ましかった。求められたら嬉しくなって、触れられたらもっとなんて求めてしまう。セックスなんか今まで自分の中で必要なものでもなかったのに、どうしてか。
身体がもう快楽に染められているのか、声だけ聴いて身体の奥を震わせている自分が恥ずかしかった。そんな自分を不破さんに知られたらって思うと余計恥ずかしくてなんだか変に避けてしまうほどだ。
妊娠するため、その為のセックス。妊娠したいのに、生理が来たらホッとする自分がいて驚いた。
まだこの関係が続けられると、その安堵が自分の心の中に滲んでそれがまたショックだった。
(何を望んでいるの、私は。子供が欲しいって不破さんに頼っているのに……)
子どもが、なのか。本当に求めているのはそれだけ?
悶々する頭を左右に振って余計なことは考えないようにする。だって、不破さんにとって私はただの性欲の捌け口のようなもの、その代償は不破さんの人生に影響させるほど大きなものをもらうんだから。だからその時が来るまで自分は出来る限り不破さんに応えよう、自分にっ出来ることはそれだけだ、そう思って自分を責める様に言い聞かせた。
あんなに欲しかった子供。
繋がりたいものがほしくて望んだのに、どうして不確かなものを求め出してるんだろう……。
「天野さーん」
呼び声に振り向くと、本田君が困った顔で近寄ってきた。
「ちょっと手伝ってくださいよ~これぇー、俺添削まで無理っす」
「あぁ、新藤さんか……」
例の異動してきた新藤真琴は男かと思いきや可愛い女の子で。帰国子女らしく英語はペラペラだったが日本語がいまひとつ……簡単に言えば文章を書く能力が低かった。
丁寧語、尊敬語、謙譲語、その辺のオフィス用語が全面的に苦手そうで書類関係の修正がひどい。本田くんはそれに手を焼いていて最近は私にとばっちりがきている。
「いいよ。私が見ておく。これだけ?」
「あとフォルダにもあるんですよ、ちょっといいっすか?」
そう言って背中越しでマウスを触ろうとしてきたから思わず身構えた。背後から囲われるような体勢ははたからはどう映るだろう。内心は不快だ、いい気分はしない。もう少し距離を取ってほしい、そう思うが簡単に口にはできない。
「あ、すんません。ちょっと借りますねー」
一瞬手が触れたが本田くんは軽く謝っただけ。その行為に特に何も思ってなさそうだったがどこまでわかってやっているのかわからない。フランクと言えばそうだが若い子らしいフットワークの軽さ、歳の差のせいか、自分が自意識過剰なのかもしれないが、少し馴れ馴れしいなとは感じている。
「これです、この報告書……マジひどいっす」
会話の内容のせいだろうけど耳元で囁くように言われて内心ゾッとした。
今自分の耳元で囁いてくれるのはひとりだけ、その人以外の声には身体が瞬間で嫌悪感を抱いたのがわかる。
「そ、そっか……確認しとく」
身を捩るように体を離したら背中から気配が去ってホッと胸をなでおろす。
(重症かも)
このままだとこの先不破さん以外の男の人と触れ合うなんてできないかもしれない。
「不破部長~」
仕事に集中しようと思った矢先、視界に入ったのはその新藤さんだ。
彼女はまだ若く、自分に自信を持った明るい性格で、行動力もありいろんなことに前向きだった。仕事も熱心だし新しい部署に来て頑張っていると思う。でもそれはきっと不破さんがいるからな気もする。
(グイグイいくな……帰国子女だから?距離がいちいち近い……)
体が触れそうなほど近づいて上司と話をする、その精神が単純にすごい。
部下としてではなく、女として近づいている、それが誰が見てもわかるほどわかりやすくて――。
(肌もピチピチして小顔にスタイルもいいってなんだよ……あの胸とくびれ……ずるいわ)
アラサーの嫉妬ほど醜いものはない。
いままで自分に対して費やしてやらなかったことを今さら後悔しても遅いのに。
目の前で若い女の子が不破さんに近づくだけで胸の中が荒れた、それがまた嫌だった。
(何様……私。勘違いも甚だしい)
この嫉妬は容姿や見た目だけ?
問いかけてもあえて答えを出さずにいる。出したらダメだ、出せば不破さんを困らせる。
私たちの関係に、心なんか絡ませてはいけないんだから――。
(その頻度だと、一年で80%……週一回になると70%に低下、か)
不破さんとのセックス頻度は多いか少ないかだと多いかもしれない。
週二回するときもあるが、二週間開くときもある。生理がかぶれば三週間開いたこともある。基本は不破さんの仕事の都合とタイミング。でもそれはしょうがないことに思えた。
(自分の周期のタイミングより不破さんの身体の空き情況のが大事……そもそも忙しいんだもん、なんだったら私のために時間割いてくれてるのかもしれないもんなぁ)
数カ月経ったが未だ妊娠はしていない。
避妊していても妊娠するって聞いていたのに、なんて浅はかに思っていた自分が恥ずかしい。
(私の年齢もあるのかな……)
年齢という名の壁、女はいつでも年齢にぶつかる気がする。そのどうしようもない現実にため息がこぼれた。ため息は妊娠していないことだけが理由でもないけれど。
こんな関係を始めたのは間違いだったかなって最近すごく思い始めてる。精子バンクで精子を買ったほうが良かったかもしれないまで思いだしていた。
(赤ちゃん欲しい……でも、それよりも感じてしまってるこの気持ち……ダメだって)
「はぁ」
思わずオフィスでため息を吐いた。それと同時だった。
「井原、さっき送ったデータ確認しといて」
オフィスに響く不破さんの声にだけ身体が反応するとかもう病気だ。身体がもう麻痺してる気がする、不破さんにだけ敏感になるようにしつけられた動物みたい。
身体だけの関係と言い聞かせているせいか、もう身体は完全に不破さんのいいなり状態。
声だけで震える。
考えるだけで疼く。
身体の奥が、欲しいと叫ぶように、不破さんを求める自分がいる。
(やらしい……)
自分が浅ましかった。求められたら嬉しくなって、触れられたらもっとなんて求めてしまう。セックスなんか今まで自分の中で必要なものでもなかったのに、どうしてか。
身体がもう快楽に染められているのか、声だけ聴いて身体の奥を震わせている自分が恥ずかしかった。そんな自分を不破さんに知られたらって思うと余計恥ずかしくてなんだか変に避けてしまうほどだ。
妊娠するため、その為のセックス。妊娠したいのに、生理が来たらホッとする自分がいて驚いた。
まだこの関係が続けられると、その安堵が自分の心の中に滲んでそれがまたショックだった。
(何を望んでいるの、私は。子供が欲しいって不破さんに頼っているのに……)
子どもが、なのか。本当に求めているのはそれだけ?
悶々する頭を左右に振って余計なことは考えないようにする。だって、不破さんにとって私はただの性欲の捌け口のようなもの、その代償は不破さんの人生に影響させるほど大きなものをもらうんだから。だからその時が来るまで自分は出来る限り不破さんに応えよう、自分にっ出来ることはそれだけだ、そう思って自分を責める様に言い聞かせた。
あんなに欲しかった子供。
繋がりたいものがほしくて望んだのに、どうして不確かなものを求め出してるんだろう……。
「天野さーん」
呼び声に振り向くと、本田君が困った顔で近寄ってきた。
「ちょっと手伝ってくださいよ~これぇー、俺添削まで無理っす」
「あぁ、新藤さんか……」
例の異動してきた新藤真琴は男かと思いきや可愛い女の子で。帰国子女らしく英語はペラペラだったが日本語がいまひとつ……簡単に言えば文章を書く能力が低かった。
丁寧語、尊敬語、謙譲語、その辺のオフィス用語が全面的に苦手そうで書類関係の修正がひどい。本田くんはそれに手を焼いていて最近は私にとばっちりがきている。
「いいよ。私が見ておく。これだけ?」
「あとフォルダにもあるんですよ、ちょっといいっすか?」
そう言って背中越しでマウスを触ろうとしてきたから思わず身構えた。背後から囲われるような体勢ははたからはどう映るだろう。内心は不快だ、いい気分はしない。もう少し距離を取ってほしい、そう思うが簡単に口にはできない。
「あ、すんません。ちょっと借りますねー」
一瞬手が触れたが本田くんは軽く謝っただけ。その行為に特に何も思ってなさそうだったがどこまでわかってやっているのかわからない。フランクと言えばそうだが若い子らしいフットワークの軽さ、歳の差のせいか、自分が自意識過剰なのかもしれないが、少し馴れ馴れしいなとは感じている。
「これです、この報告書……マジひどいっす」
会話の内容のせいだろうけど耳元で囁くように言われて内心ゾッとした。
今自分の耳元で囁いてくれるのはひとりだけ、その人以外の声には身体が瞬間で嫌悪感を抱いたのがわかる。
「そ、そっか……確認しとく」
身を捩るように体を離したら背中から気配が去ってホッと胸をなでおろす。
(重症かも)
このままだとこの先不破さん以外の男の人と触れ合うなんてできないかもしれない。
「不破部長~」
仕事に集中しようと思った矢先、視界に入ったのはその新藤さんだ。
彼女はまだ若く、自分に自信を持った明るい性格で、行動力もありいろんなことに前向きだった。仕事も熱心だし新しい部署に来て頑張っていると思う。でもそれはきっと不破さんがいるからな気もする。
(グイグイいくな……帰国子女だから?距離がいちいち近い……)
体が触れそうなほど近づいて上司と話をする、その精神が単純にすごい。
部下としてではなく、女として近づいている、それが誰が見てもわかるほどわかりやすくて――。
(肌もピチピチして小顔にスタイルもいいってなんだよ……あの胸とくびれ……ずるいわ)
アラサーの嫉妬ほど醜いものはない。
いままで自分に対して費やしてやらなかったことを今さら後悔しても遅いのに。
目の前で若い女の子が不破さんに近づくだけで胸の中が荒れた、それがまた嫌だった。
(何様……私。勘違いも甚だしい)
この嫉妬は容姿や見た目だけ?
問いかけてもあえて答えを出さずにいる。出したらダメだ、出せば不破さんを困らせる。
私たちの関係に、心なんか絡ませてはいけないんだから――。
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