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本章
Episode6/始まり~不破side~
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「本気です、私は……樹さんが、本当にいいなら……抱いてください。私の中に、だして……」
イッた後の快感に包まれた表情でそんなセリフを吐く。これをもし、自分以外の誰かに囁いていたと思うとゾッとした。
好きな女が、自ら足を広げて自分の中に導こうとするその姿は興奮を超えてむしろ疑いたくなるほどだった。
(やべぇな、これ。いきなりここから始まるとか……)
「俺も本気だよ……お前の中に出したい、だから……」
覚悟がなかったのは俺の方か?
いや、そんなことはない。俺はずっと、天野あかりが好きだった。毎日毎日、特別な目で見つめて心の底で自分のものにしたい気持ちを押し殺していた。
自分のものにできる征服欲。
しかも未来まで手に入る、この瞬間で俺たちの関係が一瞬で変わる、それに身震いした。
「欲しい……出して、奥に……」
こんなセリフ、ここで吐くな。破壊力が半端ない。
身体だけじゃない、心まで暴発するだろうが。
あかりの指先が頬に伸びてきて潤んだ瞳で見つめながら喘ぐから、もう我慢の限界だった。
「あかり……」
「あ、ぅ、んん……」
ぬるりとした熱いナカに導かれて身体の芯が震える。
女を何度も抱いているけど、避妊は絶対していたし、こんな感情が震えるようなセックスはしたことがない。
自分の欲を受け入れられる、それも無条件に、望まれて――。
(ここにあかりの気持ちが追い付けばどんな気持ちになるのか……)
俺を愛して求めてくれたらどうなるだろう、と。それを考えただけで自分が、もうまともではいれない気がする。
「は、ぁ……あかり……お前のナカ、熱い……気持ちよすぎ……」
「あん、ぅ、は、あ、んっ――」
「あかりも気持ちいい?腰揺れてるぞ、ほんとに可愛いな」
「はぅん、あ、はあぁ、あ、ん、ぁっ、はっ」
「あかり?なぁ、目、開けてよ。俺のこと見てよ」
「ん、あ――はぁ、あ」
言われるがまま潤んだ瞳を開けて俺を見つめてくる、その揺れた瞳を見つめ返して愛しさが湧いた。
この身体の中に、俺の熱を注ぎ込む。
はやく、心にまで届かせたい、身体の奥から全体に流れるように、最後は心に沁み込ませたい――。
「出すよ……あかりの奥にっ――」
「あっ、はあぁっ――」
俺とあかりはこうして関係を繋ぎ始めた。
まだ心は通っていない。
その心を手に入れるために、俺はその日から全身であかりを愛することに決めた。
あかりの心を落とすために。
====
関係を初めて一カ月が経った頃。
オフィス内でも少し落ち込んだ様子のあかりが気になって、定時後打ち合わせ室に呼んだ。
「ダメでした……」
項垂れてそう言ったあかりはやはり落ち込んでいた。少し、に見えていたのは業務中だったからか。二人になったらわかりやすく落ち込むからかなり気落ちしているのだろう。
「ふぅん。そんなすぐできないだろ」
「そりゃあっ!そう、ですけどぉ……でも、できてるかなぁって思ってたから」
(そんなに早く出来てもらっても困るけど)
そんな気持ちは言葉にはできないが本音だった。子どもが出来たら終わってしまう。あかりは笑顔で俺の元を去るんだろう、それが想像できすぎてまた震える。あかりはこの関係に恐ろしくドライだ。
「そんなしてるっけ?」
「しっ!……てます、よね?」
真っ赤になって俯くから可愛い。
言い出したことややってることを考えたらそこで照れるのおかしいだろう、とは思うけど性格なんだろうな。あかりは結構ウブだ、あまりセックスにだって慣れていない。
「じゃあ今生理ってこと?」
「昨夜きました」
(残念、ならしばらくあかりを抱けないのか)
「またお願いします」
真面目にそう頭を下げるから吹き出した。
「だから。どんだけ真面目なんだよ」
「でも、そういうお話ですから」
そうだけど。そんな事務的に言われると本音は萎える。不妊治療で男がセックスに憂鬱になる気持ちがなんとなくわかってしまった。
男と女の脳の違いなのか。
感情の問題か?
あかりが俺に惚れていたらこんなセリフは出なかったのだろうか。俺にあかりへの愛情がなければそんなセリフにももっと素直に義務的に受け止めて返せるものなのか。
結局気持ちの壁にぶつかって歯がゆいことが多いのは悩みの一つだ。まだなにもあかりの心と触れ合えない。身体は触れあっているのに、おそらく誰よりもあかりの近くにずっと奥に触れているのに、どうしてだろう。
身体を重ねるほど親しくはなれる。お互いを必要と感じる。それなのに――。
「難しいものですね……妊娠って」
あかりの声は暗い。
それで何よりも感じるんだ、あかりは俺を必要としているけれどあくまでも妊娠するための手段でしかないのだと。
俺自身を――求めていない。
俺の心になんか、きっと興味などないんだろう、と。
「OK、タイミングはあかりが言って?生理明けとかは俺もわかんないし。いつでもどうぞ」
「――はい。ありがとうございます、すみません……私の都合で」
「あのな、仕事じゃねぇんだよ。そんな固くなるのやめろ。そんなつもりでヤッてねぇよ」
そう返したら目を見開いて驚いた表情を見せるものの、すぐにくしゃっとくだけた笑顔を見せて照れたように微笑む。
「すみません……不破さんに甘えてばかりで、そのプライベートまで面倒見てもらって」
前までは部長と呼んでいたのが、二人になると不破さんになった。
(セックスの時だけは意地でも名前で呼ばせてるけどな)
あかりなりに防御線を引いている感じはするがそれも徐々に取れればいい。
まだ俺たちの関係は始まったばかりなのだから。
イッた後の快感に包まれた表情でそんなセリフを吐く。これをもし、自分以外の誰かに囁いていたと思うとゾッとした。
好きな女が、自ら足を広げて自分の中に導こうとするその姿は興奮を超えてむしろ疑いたくなるほどだった。
(やべぇな、これ。いきなりここから始まるとか……)
「俺も本気だよ……お前の中に出したい、だから……」
覚悟がなかったのは俺の方か?
いや、そんなことはない。俺はずっと、天野あかりが好きだった。毎日毎日、特別な目で見つめて心の底で自分のものにしたい気持ちを押し殺していた。
自分のものにできる征服欲。
しかも未来まで手に入る、この瞬間で俺たちの関係が一瞬で変わる、それに身震いした。
「欲しい……出して、奥に……」
こんなセリフ、ここで吐くな。破壊力が半端ない。
身体だけじゃない、心まで暴発するだろうが。
あかりの指先が頬に伸びてきて潤んだ瞳で見つめながら喘ぐから、もう我慢の限界だった。
「あかり……」
「あ、ぅ、んん……」
ぬるりとした熱いナカに導かれて身体の芯が震える。
女を何度も抱いているけど、避妊は絶対していたし、こんな感情が震えるようなセックスはしたことがない。
自分の欲を受け入れられる、それも無条件に、望まれて――。
(ここにあかりの気持ちが追い付けばどんな気持ちになるのか……)
俺を愛して求めてくれたらどうなるだろう、と。それを考えただけで自分が、もうまともではいれない気がする。
「は、ぁ……あかり……お前のナカ、熱い……気持ちよすぎ……」
「あん、ぅ、は、あ、んっ――」
「あかりも気持ちいい?腰揺れてるぞ、ほんとに可愛いな」
「はぅん、あ、はあぁ、あ、ん、ぁっ、はっ」
「あかり?なぁ、目、開けてよ。俺のこと見てよ」
「ん、あ――はぁ、あ」
言われるがまま潤んだ瞳を開けて俺を見つめてくる、その揺れた瞳を見つめ返して愛しさが湧いた。
この身体の中に、俺の熱を注ぎ込む。
はやく、心にまで届かせたい、身体の奥から全体に流れるように、最後は心に沁み込ませたい――。
「出すよ……あかりの奥にっ――」
「あっ、はあぁっ――」
俺とあかりはこうして関係を繋ぎ始めた。
まだ心は通っていない。
その心を手に入れるために、俺はその日から全身であかりを愛することに決めた。
あかりの心を落とすために。
====
関係を初めて一カ月が経った頃。
オフィス内でも少し落ち込んだ様子のあかりが気になって、定時後打ち合わせ室に呼んだ。
「ダメでした……」
項垂れてそう言ったあかりはやはり落ち込んでいた。少し、に見えていたのは業務中だったからか。二人になったらわかりやすく落ち込むからかなり気落ちしているのだろう。
「ふぅん。そんなすぐできないだろ」
「そりゃあっ!そう、ですけどぉ……でも、できてるかなぁって思ってたから」
(そんなに早く出来てもらっても困るけど)
そんな気持ちは言葉にはできないが本音だった。子どもが出来たら終わってしまう。あかりは笑顔で俺の元を去るんだろう、それが想像できすぎてまた震える。あかりはこの関係に恐ろしくドライだ。
「そんなしてるっけ?」
「しっ!……てます、よね?」
真っ赤になって俯くから可愛い。
言い出したことややってることを考えたらそこで照れるのおかしいだろう、とは思うけど性格なんだろうな。あかりは結構ウブだ、あまりセックスにだって慣れていない。
「じゃあ今生理ってこと?」
「昨夜きました」
(残念、ならしばらくあかりを抱けないのか)
「またお願いします」
真面目にそう頭を下げるから吹き出した。
「だから。どんだけ真面目なんだよ」
「でも、そういうお話ですから」
そうだけど。そんな事務的に言われると本音は萎える。不妊治療で男がセックスに憂鬱になる気持ちがなんとなくわかってしまった。
男と女の脳の違いなのか。
感情の問題か?
あかりが俺に惚れていたらこんなセリフは出なかったのだろうか。俺にあかりへの愛情がなければそんなセリフにももっと素直に義務的に受け止めて返せるものなのか。
結局気持ちの壁にぶつかって歯がゆいことが多いのは悩みの一つだ。まだなにもあかりの心と触れ合えない。身体は触れあっているのに、おそらく誰よりもあかりの近くにずっと奥に触れているのに、どうしてだろう。
身体を重ねるほど親しくはなれる。お互いを必要と感じる。それなのに――。
「難しいものですね……妊娠って」
あかりの声は暗い。
それで何よりも感じるんだ、あかりは俺を必要としているけれどあくまでも妊娠するための手段でしかないのだと。
俺自身を――求めていない。
俺の心になんか、きっと興味などないんだろう、と。
「OK、タイミングはあかりが言って?生理明けとかは俺もわかんないし。いつでもどうぞ」
「――はい。ありがとうございます、すみません……私の都合で」
「あのな、仕事じゃねぇんだよ。そんな固くなるのやめろ。そんなつもりでヤッてねぇよ」
そう返したら目を見開いて驚いた表情を見せるものの、すぐにくしゃっとくだけた笑顔を見せて照れたように微笑む。
「すみません……不破さんに甘えてばかりで、そのプライベートまで面倒見てもらって」
前までは部長と呼んでいたのが、二人になると不破さんになった。
(セックスの時だけは意地でも名前で呼ばせてるけどな)
あかりなりに防御線を引いている感じはするがそれも徐々に取れればいい。
まだ俺たちの関係は始まったばかりなのだから。
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