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元カノ編
第六話 躾けられる飼い主
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床上に押し倒されて背中が少しだけ痛い。少し長めの黒い前髪の中から見下ろしてくる黒い瞳が静かに揺れている。この瞳は――怒っている。
「あのねぇ?!なんにもないの!話す内容もないくらいなにもないんだってば!」
「なんもないのにライン交換するってなんやの。なんもないことないやろが」
「りゅうが心配したり疑うようなことが何もないって意味!って、手ぇ!ちょ……手がはやい!」
「服脱げ」
「なんでよぉ!」
脱げと言う割には自分の手でさくさく脱がしていき気づくと一瞬で下着姿。春なのに初夏みたいな暑さでロンT被っているだけではすぐ脱がされてしまう。しかもよりによって今日のブラはフロントホック!りゅうの手によってあっさりとブラは外されて前が開かれるようにはだけてしまう。
「あ……ま、待って」
外れたブラを思わず手で拾い上げるように胸元を隠したらジッと見つめてくる。
「隠さんで良くない?」
「はず、はずかしいじゃん!」
「なにが?」
「なんか、こう、さ?オープン!みたいなのがっ!」
必死で言ったら吹き出された。りゅうの冷たかった空気が瞬間で和らぐ。
「フロントホックってさ、よけいやらしない?」
男性受けはあまりないのでは?と思っていた手前予想外のセリフにキョトンとしてしまう。
「そ、そう?ブラのホックは後ろのスタンダードな方がよくないの?」
「なんで?」
「わ、わかんないけど。男の子ってそうなのかなって。ブラジャーって基本はそうだし、女の子はそれを着けてるって思ってるんじゃない?」
「俺は別にどっちでもええかな」
淡々と言うりゅう。本当にどっちでも良さそうな言い方だ。
「着けてへんのもええで」
「ノーブラの女なんか早々いないわ!」
バカなのか!そんな気持ちで噛みついたら笑われた。
「後ろやったら抱きしめながらでも外せるし、前からやったら秘密のドア開けるみたいやんな?」
さっきのオープン!に引っかけるみたいに揶揄られる。
「フロントホック……それも後ろから抱きしめて外すとかええな。お前が胸晒されんの真上から見てんねん。俺の手が胸の間にあってさ、手が触れそうで触れへんの。ホック外す瞬間はお前も見ててさ……」
りゅうの言葉がまるで再現されるかのように話すから、頭の中ではりゅうに背後から包まれて胸前でホックを外されることを想像する。耳に息がかかって、見上げたらりゅうがいる。手が触れそうで胸には触れないからドキドキするのに、その指はホックに触れて……。
「ふぎゃぁあ!な、なんかエッチすぎる!」
「どっちも楽しい。好きな女脱がすのって楽しいしかないやん。俺の手で全部剥がしていくのん、めっちゃええやん。前でも後ろでもなんでもええ」
りゅうがにやっと笑って肩紐に指をかけてピッと引っ張る。
「あ……」
「前から外しやすいし好きやけどなぁ」
後ろでもなんなく器用に外すじゃないか、は飲み込んだ。
「見せて」
「や、だぁ」
その笑顔が眩しくて憎らしいがそんな誘いに素直に頷けるわけがない。頑なに手を胸の前にして隠していたらりゅうが言う。
「手、離せこら」
さっきとは打って変わっての強気な声と共にグイッと手首を引っ張られてブラと一緒に胸元が開かれた。まさに秘密のドア、オープン。別に秘密にしているわけではないけれど。りゅうに秘密にしている体の部分なんかひとつだってないんだが。
(はず、はずかしいんだもん!)
「りゅう、真っ直ぐ見てくるじゃん!それが恥ずかしいんだもん!」
「は?じゃあどうせぇ言うん。見るなってこと?」
「見るな!」
「ないない、見るに決まってるやろ。皮剥いでも見るわ」
恐ろしいことを言うな。
「さ、最近ちょっと太ったの!」
夜のアイスがやめられなくなっている。本格的な夏になったらどうしようと思っているところだ。
「俺がそれ気づいてへんおもてんの?」
「気づいてたの?」
がーん!ゆるっとしたオーバーサイズのTシャツで誤魔化していたのに!
「乳になるやん」
「そんな器用についてほしいところにはついてくれないよ!」
「ほな腰振ろか」
このエロ猫が!
「もう諦めろや、なにしても無駄やぞ。茜が誰のもんか、ちゃんと印つけんねん。手ぇどけろや」
「や!だめ、見えるところはだめ!」
「見えるところにつけんねん。アホか」
「だめぇ!」
体を押しのけようとしても強い力で抑え込まれて耳裏首筋あたりにキューッと痛みが走った。りゅうはキスマークをつけるのが好きだ。消えかけたら、またつけての繰り返し。どこにどれくらいつけられているか自分で把握はしていないけれど一応見えるところは避けてくれている(はずだ)
「りゅう!だめだよ、やめて!」
「こんなとこ大して見えへんやろ。髪の毛で隠れてるやん」
「えぇ、でも……」
ボブの髪型がもうすぐ肩にまでつきそうで。暑くなってきたら少しくくれるかも、なんて思っていたのにくくれそうにない。
「見えへんやろ?」
優し気に見つめられてしぶしぶ受け入れようとしたのが甘かった。
「んあ!」
鎖骨の上、顎下あたりの首筋にがぶっと噛みつくみたいに吸い付いてきた。
「ちょぉ!……っん!」
ジュッと唇が離されたから怒ってやろうと顔を見つめたら、優しかった瞳が嘘みたいに怒っている。
「お前あんまり調子乗ってんなよ」
「乗ってないし!」
「なに男とライン交換とかしてんねん、苛つくわ。ブロックせぇ」
「無理だし!」
「自分でできへんのやったら俺がしたろか?貸せ」
「だから心配するようなこと何もないってば!必要最低限のラインしかしてないしよっぽど連絡なんか来ないの!」
上半身裸にされて埒が明かない言い合い。そもそも常盤くんだって私に好意などないのに心配する方がおかしいんだ。なんでもかんでも男女が絡んで恋愛に発展するもんでもない。りゅうに近寄ってくる女の子たちと同じように思わないで欲しいんだが。
(だいたい私はそんなモテる女じゃないんだってばぁぁ!)
「必要最低?なにそれ、必要なことってなんなん、なに必要なことがあんねん。そいつと茜が連絡し合わなあかんことあるんがめっさ腹立つ!」
今本気で毛羽立つみたいな殺気!りゅうはやっぱり獣では?
「違うってば!だから、その……しゅぅ……」
「しゅう?」
言い淀んでいた私だけれど、刺すような痛すぎる視線に責められて……負けた。
「就活のため!」
「……就活?」
結局言わされてしまうのだ……。
「あのねぇ?!なんにもないの!話す内容もないくらいなにもないんだってば!」
「なんもないのにライン交換するってなんやの。なんもないことないやろが」
「りゅうが心配したり疑うようなことが何もないって意味!って、手ぇ!ちょ……手がはやい!」
「服脱げ」
「なんでよぉ!」
脱げと言う割には自分の手でさくさく脱がしていき気づくと一瞬で下着姿。春なのに初夏みたいな暑さでロンT被っているだけではすぐ脱がされてしまう。しかもよりによって今日のブラはフロントホック!りゅうの手によってあっさりとブラは外されて前が開かれるようにはだけてしまう。
「あ……ま、待って」
外れたブラを思わず手で拾い上げるように胸元を隠したらジッと見つめてくる。
「隠さんで良くない?」
「はず、はずかしいじゃん!」
「なにが?」
「なんか、こう、さ?オープン!みたいなのがっ!」
必死で言ったら吹き出された。りゅうの冷たかった空気が瞬間で和らぐ。
「フロントホックってさ、よけいやらしない?」
男性受けはあまりないのでは?と思っていた手前予想外のセリフにキョトンとしてしまう。
「そ、そう?ブラのホックは後ろのスタンダードな方がよくないの?」
「なんで?」
「わ、わかんないけど。男の子ってそうなのかなって。ブラジャーって基本はそうだし、女の子はそれを着けてるって思ってるんじゃない?」
「俺は別にどっちでもええかな」
淡々と言うりゅう。本当にどっちでも良さそうな言い方だ。
「着けてへんのもええで」
「ノーブラの女なんか早々いないわ!」
バカなのか!そんな気持ちで噛みついたら笑われた。
「後ろやったら抱きしめながらでも外せるし、前からやったら秘密のドア開けるみたいやんな?」
さっきのオープン!に引っかけるみたいに揶揄られる。
「フロントホック……それも後ろから抱きしめて外すとかええな。お前が胸晒されんの真上から見てんねん。俺の手が胸の間にあってさ、手が触れそうで触れへんの。ホック外す瞬間はお前も見ててさ……」
りゅうの言葉がまるで再現されるかのように話すから、頭の中ではりゅうに背後から包まれて胸前でホックを外されることを想像する。耳に息がかかって、見上げたらりゅうがいる。手が触れそうで胸には触れないからドキドキするのに、その指はホックに触れて……。
「ふぎゃぁあ!な、なんかエッチすぎる!」
「どっちも楽しい。好きな女脱がすのって楽しいしかないやん。俺の手で全部剥がしていくのん、めっちゃええやん。前でも後ろでもなんでもええ」
りゅうがにやっと笑って肩紐に指をかけてピッと引っ張る。
「あ……」
「前から外しやすいし好きやけどなぁ」
後ろでもなんなく器用に外すじゃないか、は飲み込んだ。
「見せて」
「や、だぁ」
その笑顔が眩しくて憎らしいがそんな誘いに素直に頷けるわけがない。頑なに手を胸の前にして隠していたらりゅうが言う。
「手、離せこら」
さっきとは打って変わっての強気な声と共にグイッと手首を引っ張られてブラと一緒に胸元が開かれた。まさに秘密のドア、オープン。別に秘密にしているわけではないけれど。りゅうに秘密にしている体の部分なんかひとつだってないんだが。
(はず、はずかしいんだもん!)
「りゅう、真っ直ぐ見てくるじゃん!それが恥ずかしいんだもん!」
「は?じゃあどうせぇ言うん。見るなってこと?」
「見るな!」
「ないない、見るに決まってるやろ。皮剥いでも見るわ」
恐ろしいことを言うな。
「さ、最近ちょっと太ったの!」
夜のアイスがやめられなくなっている。本格的な夏になったらどうしようと思っているところだ。
「俺がそれ気づいてへんおもてんの?」
「気づいてたの?」
がーん!ゆるっとしたオーバーサイズのTシャツで誤魔化していたのに!
「乳になるやん」
「そんな器用についてほしいところにはついてくれないよ!」
「ほな腰振ろか」
このエロ猫が!
「もう諦めろや、なにしても無駄やぞ。茜が誰のもんか、ちゃんと印つけんねん。手ぇどけろや」
「や!だめ、見えるところはだめ!」
「見えるところにつけんねん。アホか」
「だめぇ!」
体を押しのけようとしても強い力で抑え込まれて耳裏首筋あたりにキューッと痛みが走った。りゅうはキスマークをつけるのが好きだ。消えかけたら、またつけての繰り返し。どこにどれくらいつけられているか自分で把握はしていないけれど一応見えるところは避けてくれている(はずだ)
「りゅう!だめだよ、やめて!」
「こんなとこ大して見えへんやろ。髪の毛で隠れてるやん」
「えぇ、でも……」
ボブの髪型がもうすぐ肩にまでつきそうで。暑くなってきたら少しくくれるかも、なんて思っていたのにくくれそうにない。
「見えへんやろ?」
優し気に見つめられてしぶしぶ受け入れようとしたのが甘かった。
「んあ!」
鎖骨の上、顎下あたりの首筋にがぶっと噛みつくみたいに吸い付いてきた。
「ちょぉ!……っん!」
ジュッと唇が離されたから怒ってやろうと顔を見つめたら、優しかった瞳が嘘みたいに怒っている。
「お前あんまり調子乗ってんなよ」
「乗ってないし!」
「なに男とライン交換とかしてんねん、苛つくわ。ブロックせぇ」
「無理だし!」
「自分でできへんのやったら俺がしたろか?貸せ」
「だから心配するようなこと何もないってば!必要最低限のラインしかしてないしよっぽど連絡なんか来ないの!」
上半身裸にされて埒が明かない言い合い。そもそも常盤くんだって私に好意などないのに心配する方がおかしいんだ。なんでもかんでも男女が絡んで恋愛に発展するもんでもない。りゅうに近寄ってくる女の子たちと同じように思わないで欲しいんだが。
(だいたい私はそんなモテる女じゃないんだってばぁぁ!)
「必要最低?なにそれ、必要なことってなんなん、なに必要なことがあんねん。そいつと茜が連絡し合わなあかんことあるんがめっさ腹立つ!」
今本気で毛羽立つみたいな殺気!りゅうはやっぱり獣では?
「違うってば!だから、その……しゅぅ……」
「しゅう?」
言い淀んでいた私だけれど、刺すような痛すぎる視線に責められて……負けた。
「就活のため!」
「……就活?」
結局言わされてしまうのだ……。
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