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友達編
置いていけぼりな気持ち
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駅から少し外れたメイン通りにはたくさんカフェやお店もあってとりあえずすぐに座れそうな店に入った。なんとなく落ち込んでいた風な千秋くんはりゅうと話すおかげで気が晴れてきたのか(調子が戻ってきたのか)色々話し始めた。
どうやらこれから久しぶりに会おうとしていたお姉さんに彼氏がいたみたいでその彼氏と会う算段をつけたらしい。
「てか、お前しつこすぎん?ねぇちゃんもうすぐ三十とかちゃうん?行き遅れやったら完全に千秋のせぇやん。責任とれんの?」
「別に別れさせようとか思ってへん、どんな男か確認するだけや」
「その確認いるぅ?頼まれてもないやろ」
「千夏は男慣れしてへんから騙されとるかもしれん」
「男に慣れてへんのもお前のせぇやろ」
お姉さんが心配でたまらない、そんな感じの千秋くんは単純に可愛かった。私にも弟がいるけれどこんな風に私を気にしたり心配なんかしてくれた記憶は思い起こしてもない。少し羨ましいな、そんな眼差しで見ていたのをりゅうに気づかれたのか、横でフッと笑われた。
「千秋のシスコンは病気やぞ、騙されんなよ」
「ええ?そうかなぁ、お姉さん思いの弟って感じで好感しか今のところないけど」
「茜ちゃんはええ子やな。腐った龍二と付き合ってんのに清い心持ってんなぁ、一緒におっても腐らんといてや、ほんまに」
「たいがい腐った千秋に言われたないねん、黙れ」
「煩い弟が出てきてめんどくさがったりうっとーしーってなりよるんやったらそんだけの男やん。それこそ将来的なことも考えられへんのやなって線引きしたほうがええ」
「それは言えてるかもしれないね!」
思わず身を乗り出して千秋くんの意見に賛同した。
「そやろ?そういうところでそいつの性格がわかるんやって。遊びかどうかもわかるやん」
「もう会う言うとんのやろ?無駄に心配してるだけちゃうん」
りゅうはどこまでも呆れてめんどくさそうに言いながら携帯を取り出すと「あ」と声を上げた。
「やば、充電もうなくなりそうや」
「俺、モバイルバッテリー持ってるで。これ、めっちゃええのん、充電えらい早いねん」
「え、まじ?どこのん」
千秋くんも家電が好きなのか、二人でまたわいわいと盛り上がってとにかく楽しそうに話している。新鮮、新鮮しかない。りゅうが同世代の男の子と楽しそうに話している姿は正直初めて見るのだ。大学ではつとめて静かにクールに過ごしている。
ダルそうに、話しかけるなオーラを出しながらも雰囲気があるから結局人の視線を集めている。それでも誰にも媚びず、馴染まない。なのに浮いた感じもないから不思議な人。
(本当に仲がいいんだな……)
また胸がチクリとする。
知らない顔があるのは当たり前、りゅう自身と知り合ってまだ単純に年数も経っていない、付き合い遍歴は千秋くんの方が断然長くて多い。そこに同性、地元も同じ、高校生の頃だ、もっとくだらないことをして話して青春を過ごしていたはずだ。その積み重ねてきたであろう二人の時間に私が割って入れるわけがない。
そんなこと、わかっているのに――。
(寂しいな)
え?
一瞬こぼれた言葉に自分で問いかけた。
「そいやさー、龍二こっち戻ってくんの?」
「んー、もう少し考えるわ」
「ふーん」
(え?なんか今サラッと重大なこと言わなかった?)
「千秋は目星の企業見つけてんのやろ?」
「まぁ……そこが一番研究してることとやってること近いしなぁ……ほんまは自分で一番やりたいこと出来る会社作んのが一番ええしおもろいよな」
「そりゃな。雇われるより雇う側になった方がおもろそう」
「ニッシーがさぁ、今度大阪である国際イノベーション会議参加する言うてたで」
「マジか。年末会おうたら聞かなあかんなそれ」
なんか、なんか、全然話についていけない。
男の子ってこんな話するの?なんかこんな会話になるの?
「あそこの女子おっぱい大きいな」とか、「あの子めっちゃタイプや~」とかそういうこと話すんじゃないの?
研究がどうとか会社作るとか雇われるより雇いたいとか、国際イノベなんとかとか何?!
りゅうも千秋くんもなんかいろんなこと考えてる!!なんで!?
(私なんか、健くんシリーズを読んで二次元の世界に酔ってるだけなのに……)
また襲うさっきよりもひどい疎外感。
私の知らないりゅうがいる。私なんかにはそんな話も顔も見せてくれたことがない。
「茜?」
「――え!?」
りゅうに呼ばれてハッとして顔をあげたら二人が心配そうに私を見つめていた。
「俺らが話してたら茜ちゃんおもんないよな、ごめんな?」
「ううん!いいの、そんなせっかく会うんだから私のことなんか気にしないで二人で楽しんでくれたらいいんだし!」
「二人で楽しんだらって……それやったら茜連れてきた意味ないやん」
そう言いながらさらっと前髪をかきあげられてそのまま頭を撫でられた。
「うわー、龍二が女にデレてるぅー。動画に撮ってニッシーに送ろ」
「やめろボケ」
そんな風に笑いながら話す二人を見つめながら胸の中でモヤモヤする気持ちをどうしても無視できなかった。
どうやらこれから久しぶりに会おうとしていたお姉さんに彼氏がいたみたいでその彼氏と会う算段をつけたらしい。
「てか、お前しつこすぎん?ねぇちゃんもうすぐ三十とかちゃうん?行き遅れやったら完全に千秋のせぇやん。責任とれんの?」
「別に別れさせようとか思ってへん、どんな男か確認するだけや」
「その確認いるぅ?頼まれてもないやろ」
「千夏は男慣れしてへんから騙されとるかもしれん」
「男に慣れてへんのもお前のせぇやろ」
お姉さんが心配でたまらない、そんな感じの千秋くんは単純に可愛かった。私にも弟がいるけれどこんな風に私を気にしたり心配なんかしてくれた記憶は思い起こしてもない。少し羨ましいな、そんな眼差しで見ていたのをりゅうに気づかれたのか、横でフッと笑われた。
「千秋のシスコンは病気やぞ、騙されんなよ」
「ええ?そうかなぁ、お姉さん思いの弟って感じで好感しか今のところないけど」
「茜ちゃんはええ子やな。腐った龍二と付き合ってんのに清い心持ってんなぁ、一緒におっても腐らんといてや、ほんまに」
「たいがい腐った千秋に言われたないねん、黙れ」
「煩い弟が出てきてめんどくさがったりうっとーしーってなりよるんやったらそんだけの男やん。それこそ将来的なことも考えられへんのやなって線引きしたほうがええ」
「それは言えてるかもしれないね!」
思わず身を乗り出して千秋くんの意見に賛同した。
「そやろ?そういうところでそいつの性格がわかるんやって。遊びかどうかもわかるやん」
「もう会う言うとんのやろ?無駄に心配してるだけちゃうん」
りゅうはどこまでも呆れてめんどくさそうに言いながら携帯を取り出すと「あ」と声を上げた。
「やば、充電もうなくなりそうや」
「俺、モバイルバッテリー持ってるで。これ、めっちゃええのん、充電えらい早いねん」
「え、まじ?どこのん」
千秋くんも家電が好きなのか、二人でまたわいわいと盛り上がってとにかく楽しそうに話している。新鮮、新鮮しかない。りゅうが同世代の男の子と楽しそうに話している姿は正直初めて見るのだ。大学ではつとめて静かにクールに過ごしている。
ダルそうに、話しかけるなオーラを出しながらも雰囲気があるから結局人の視線を集めている。それでも誰にも媚びず、馴染まない。なのに浮いた感じもないから不思議な人。
(本当に仲がいいんだな……)
また胸がチクリとする。
知らない顔があるのは当たり前、りゅう自身と知り合ってまだ単純に年数も経っていない、付き合い遍歴は千秋くんの方が断然長くて多い。そこに同性、地元も同じ、高校生の頃だ、もっとくだらないことをして話して青春を過ごしていたはずだ。その積み重ねてきたであろう二人の時間に私が割って入れるわけがない。
そんなこと、わかっているのに――。
(寂しいな)
え?
一瞬こぼれた言葉に自分で問いかけた。
「そいやさー、龍二こっち戻ってくんの?」
「んー、もう少し考えるわ」
「ふーん」
(え?なんか今サラッと重大なこと言わなかった?)
「千秋は目星の企業見つけてんのやろ?」
「まぁ……そこが一番研究してることとやってること近いしなぁ……ほんまは自分で一番やりたいこと出来る会社作んのが一番ええしおもろいよな」
「そりゃな。雇われるより雇う側になった方がおもろそう」
「ニッシーがさぁ、今度大阪である国際イノベーション会議参加する言うてたで」
「マジか。年末会おうたら聞かなあかんなそれ」
なんか、なんか、全然話についていけない。
男の子ってこんな話するの?なんかこんな会話になるの?
「あそこの女子おっぱい大きいな」とか、「あの子めっちゃタイプや~」とかそういうこと話すんじゃないの?
研究がどうとか会社作るとか雇われるより雇いたいとか、国際イノベなんとかとか何?!
りゅうも千秋くんもなんかいろんなこと考えてる!!なんで!?
(私なんか、健くんシリーズを読んで二次元の世界に酔ってるだけなのに……)
また襲うさっきよりもひどい疎外感。
私の知らないりゅうがいる。私なんかにはそんな話も顔も見せてくれたことがない。
「茜?」
「――え!?」
りゅうに呼ばれてハッとして顔をあげたら二人が心配そうに私を見つめていた。
「俺らが話してたら茜ちゃんおもんないよな、ごめんな?」
「ううん!いいの、そんなせっかく会うんだから私のことなんか気にしないで二人で楽しんでくれたらいいんだし!」
「二人で楽しんだらって……それやったら茜連れてきた意味ないやん」
そう言いながらさらっと前髪をかきあげられてそのまま頭を撫でられた。
「うわー、龍二が女にデレてるぅー。動画に撮ってニッシーに送ろ」
「やめろボケ」
そんな風に笑いながら話す二人を見つめながら胸の中でモヤモヤする気持ちをどうしても無視できなかった。
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