無責任な飼い主

sae

文字の大きさ
上 下
13 / 42
外伝

芹沢視点②

しおりを挟む
 火曜の二限目の講義は板書必須の教授で、ノートを取らんとあとで大変なことになる。だいたいみんな必死にノートを取っているけど、うまく手を抜くヤツはどこにでもいる。


 見た目が派手で綺麗と持て囃されている女が一人いて、そいつは講義中も携帯片手に余所見したりネイルを気にしたりして講義に対しての姿勢が目に見てわかった。
 こんなヤツがろくにノートを取ってるわけがないのにいつも課題をうまくすり抜けているのは手当たり次第周りに声をかけて人のノートを借りとるから。


 声をかけられた男は喜んで見せよるし、女はそのおこぼれにあたりたいのか媚びて見せとる。
 そうやって自分の価値を売り物にしてノートを漁る女は茜にも当然声をかけていた。


「それって自分のためにならないよね」
 断られたことがなかったのか、女は一瞬言葉を失っていた。


「それにみんなちゃんと授業受けてノート取ってるんだよ?良くないと思う」


(あんなんに正論かますてアホか)


 茜を初めて意識したのはそこ。


「……三間さんには頼まないしもーいーよ」
 ツン、とわかりやすくそっぽを向いて女は茜の前を去っていき、懲りもせず他の女に声をかけてノートを借りていた。それを後ろで静かに見ていた茜の表情はわからへんたけど、背中はどこか寂しそうで。


(お人よしやなぁ。振り回されるだけ損やのに。ほっとけばええねん、あんなんどっかで後悔しよったらええやん)


 基本自分第一主義の俺。人に利益をタダでやることはないし、利益がたとえあったとしてもむやみやたらに人にやりたくはない。そう思うほど人と絡むのはダルいし面倒くさいし好きやない。
 人と絡むといらん感情に振り回されるし、変に思いやった時裏切られたりすると虚しくなる。それが嫌で極力人とは絡まんようにしてた。
 
 でも、その日をキッカケになんとなく茜を意識し始めた俺は、茜が女の集団にあまり絡まず一人でいることが多いなと気づく。
 一匹狼タイプでもなさそうやのに、親しそうな友達がおらん感じ。誰かしらとは話したりはしてるけど、いつもあいつとおるな、みたいなヤツが見当たらへん。


(ぼっち?)


 そういう俺もぼっちやけどな。


 ぼっちにもいろんな種類がいる。
 人見知りぼっち、自分から一人を好んでるぼっち、ハブられてるぼっち……茜はどれやろう。


 声をかけたキッカケもその講義のノートやった。
 カバンから落とした茜のノートを俺が拾って開かれたそのノートが目についた。めちゃくちゃ綺麗にまとめられてて見た瞬間にわかりやすいのがわかったから思わずこぼした。


「めっちゃまとめんのうまいな」
 それに茜が驚いたような顔をして一瞬で赤くなったから俺の方がビビった。

 今までそこそこ女にはモテてきて、声をかけられることは多かったし告白されることもあった。そのたび頬を染める女はいっぱいいたけど、そのどれとも違う。


 俺にやない。
 自分のまとめられたノートを褒められて頬を染める女。


「そんなこと……ないと思う」
「ほうかな。見てもええ?」
「え……いい、けど……芹沢くんもうまくまとめてるでしょ?」
「人の見るのはええ刺激になるよな」
「それはわかる」
 なんとなくそんな会話をしてなんとなく一緒に教室を出てなんとなく一緒に過ごしてたら居心地がええなと感じた。その居心地の良さにその時はまだ名前をつけられへんたんや。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼氏が完璧すぎるから別れたい

しおだだ
恋愛
月奈(ユエナ)は恋人と別れたいと思っている。 なぜなら彼はイケメンでやさしくて有能だから。そんな相手は荷が重い。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...