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本編
序章
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私の好きなタイプは、真面目で誠実でちょっとドジだなと思うところも可愛くて小動物なんかも大事に育てられるような優しい人。
実際前の彼氏はそんな人だった。
「猫ぉ?無理やわ、そもそも生きもんが無理やねん、殺してまうわ。死なせる自信ある」
ダルそうにそんな怖い言葉を自信たっぷりに平気でこぼすこんな男を好きになるわけがない。
そう……思っていたのに。
「三間は捨て猫とか見捨てられへんくて毎日餌やりに通ってしもて」
「……」
「このままやとあかん思て飼い主探して、でも結局最後は愛着が勝って自分で飼ってまうとかいうタイプやろぉ?」
「そ……んなことないし」
強気に言い返したいが完全否定できない自分が情けない。
「一番あかんタイプやな。はじめに可哀想で手をつけたらあかんのやで?」
「捨てられてたら可哀想って思うの普通だよ!」
「優しいなぁー。でもそれ自己満足の優しさやん?捨てられた猫は案外幸せかもしれんで?そんな無責任な飼い主と暮らしてるより自由でよっぽど幸せやん」
「……それで死んじゃったら元も子もない」
「それはそいつの運命か寿命や。生き残るヤツはちゃんと生きよる。大事に飼われてても死ぬ奴は死ぬねん」
正論かもしれないけれど、容赦がなくて聞いてて嫌になる。
芹沢龍二はそう言う人。
「三間はやさしーなぁー。ほやから浮気されんねんなぁ」
そこに言わなくていいことまで突き刺すように言ってくる。今その話は関係ない。
「どうせ男見る目ないよ」
「ほんまない」
(芹沢みたいな男を好きになった時点でないよ)
来るもの拒まず去るもの追わず、束縛嫌いで執着なし。芹沢と付き合って泣いてる子はたくさん見てる。それでも好きだとまた泣く子もいる。そんな風に女の子を夢中にさせるくせに、いつもダルそうに適当に女の子と遊んでいる。芹沢は誰にも本気になんかならない。気まぐれに懐かず飼い慣らされることのない猫のように。
でも――。
「芹沢は捨て猫そうに見えて無責任な飼い主の方だね」
「はぁ?」
飽きたら捨てるんでしょ?無理だと思ったら平気で手放せる。相手の気持ちや望みなんか何も聞かずに。
「気まぐれに猫拾っていらなくなったら捨てる飼い主と同じじゃん。可愛いだけで手をつけるのだって罪だよ」
「……それ、猫の話なん?」
ニヤッと笑いながら聞いてくるその顔も腹立だしいけどイケメンでグッと喉を鳴らしてしまう。
(猫だよ。可愛い可愛いきゃあきゃあ鳴く女の子)
私はそうなりたくないのに。捨てられる子猫にはなりたくないのに。
「拾われた猫はとりあえずおとなしく飼われてた方がええなぁー、なぁ?三間ぁー」
芹沢は私を拾ってくれた。捨てられそうだった私を見捨てず抱き抱えるように。
気まぐれの、飽きたら捨てられる、そんな男。
わかってたのに。
ボロボロになりかけた私はその手を振り払えなくて、差し伸ばされた手を迷わず掴んでしまった。
またきっと捨てられる、きっと、前よりも傷つく。
わかってるのに。
芹沢を好きになってしまった。
実際前の彼氏はそんな人だった。
「猫ぉ?無理やわ、そもそも生きもんが無理やねん、殺してまうわ。死なせる自信ある」
ダルそうにそんな怖い言葉を自信たっぷりに平気でこぼすこんな男を好きになるわけがない。
そう……思っていたのに。
「三間は捨て猫とか見捨てられへんくて毎日餌やりに通ってしもて」
「……」
「このままやとあかん思て飼い主探して、でも結局最後は愛着が勝って自分で飼ってまうとかいうタイプやろぉ?」
「そ……んなことないし」
強気に言い返したいが完全否定できない自分が情けない。
「一番あかんタイプやな。はじめに可哀想で手をつけたらあかんのやで?」
「捨てられてたら可哀想って思うの普通だよ!」
「優しいなぁー。でもそれ自己満足の優しさやん?捨てられた猫は案外幸せかもしれんで?そんな無責任な飼い主と暮らしてるより自由でよっぽど幸せやん」
「……それで死んじゃったら元も子もない」
「それはそいつの運命か寿命や。生き残るヤツはちゃんと生きよる。大事に飼われてても死ぬ奴は死ぬねん」
正論かもしれないけれど、容赦がなくて聞いてて嫌になる。
芹沢龍二はそう言う人。
「三間はやさしーなぁー。ほやから浮気されんねんなぁ」
そこに言わなくていいことまで突き刺すように言ってくる。今その話は関係ない。
「どうせ男見る目ないよ」
「ほんまない」
(芹沢みたいな男を好きになった時点でないよ)
来るもの拒まず去るもの追わず、束縛嫌いで執着なし。芹沢と付き合って泣いてる子はたくさん見てる。それでも好きだとまた泣く子もいる。そんな風に女の子を夢中にさせるくせに、いつもダルそうに適当に女の子と遊んでいる。芹沢は誰にも本気になんかならない。気まぐれに懐かず飼い慣らされることのない猫のように。
でも――。
「芹沢は捨て猫そうに見えて無責任な飼い主の方だね」
「はぁ?」
飽きたら捨てるんでしょ?無理だと思ったら平気で手放せる。相手の気持ちや望みなんか何も聞かずに。
「気まぐれに猫拾っていらなくなったら捨てる飼い主と同じじゃん。可愛いだけで手をつけるのだって罪だよ」
「……それ、猫の話なん?」
ニヤッと笑いながら聞いてくるその顔も腹立だしいけどイケメンでグッと喉を鳴らしてしまう。
(猫だよ。可愛い可愛いきゃあきゃあ鳴く女の子)
私はそうなりたくないのに。捨てられる子猫にはなりたくないのに。
「拾われた猫はとりあえずおとなしく飼われてた方がええなぁー、なぁ?三間ぁー」
芹沢は私を拾ってくれた。捨てられそうだった私を見捨てず抱き抱えるように。
気まぐれの、飽きたら捨てられる、そんな男。
わかってたのに。
ボロボロになりかけた私はその手を振り払えなくて、差し伸ばされた手を迷わず掴んでしまった。
またきっと捨てられる、きっと、前よりも傷つく。
わかってるのに。
芹沢を好きになってしまった。
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