続・ゆびさきから恋をするーclose the distance

sae

文字の大きさ
上 下
4 / 72
エピソード1

とまどいの一カ月④

しおりを挟む
引き寄せられて重なったくちびるが熱い。

何度も何度も甘く、形を確かめられてるように触れられて体がだんだんと痺れてきた。



(どうしよう、頭の中が空っぽになる)



実験室で初めて交わしたキスも甘かった。

優しくて息ができなくなるような胸が詰まるキスだった。今はあれ以上に甘くて熱い。

くちびるから溶けていってしまいそうになる。



「んぁ……」



どれくらいしていたのか、胸の高鳴りと呼吸が乱れて心拍数が上がりまくっている。

その証拠に胸の上下が激しい。



「はぁ……」



思わず息を吐き出すと笑われた。



「ダメだな……」久世さんが小さな声で呟く。



「我慢しようと思ってたけど、やっぱり無理かも」



「……ぇ?」自分の声と思えないほど艶っぽい声がでて自分で驚いた。



「したい。していい?」



胸が余計に弾んだ。腰をグッと抱きしめられてこれ以上ないほど身体が密着した。



「……ぁ、んっ」



返事をする前にまたくちびるを塞がれて骨が折れそうなほど強く抱きしめられた。





(苦しいのに、なに?この高揚感、幸福感?)





久世さんの抱きしめる力はいつも強い。そのうえこんな甘いキスをされたらもう立ってられなくて、思わず腕が背中に回る。

それを返事と取られたのか、久世さんの手がワンピースのファスナーに触れて思わずのけぞった。



「ンッ、あ!」

「……」久世さんも驚いてる。



「ぁ、あの、その」

「ごめん、嫌ならしないよ」

「嫌なんっ、じゃ……ない、です、よ?」



「なにそのカタコト」笑われてもなにも言い返せない。



「違います。その、えっと、だから」



言い淀む唇を長い指先が弄ぶようになぞるから身をよじる。



「ぁ、あの……」



「なに?」そう言う顔が意地悪で。



「……っんもぉ!遊ばないで、ください!」

「ごめん、なに?」





(なにと聞かれるとまた困るんだけど)





「……わたし」



頭ではあれやこれや思うけれど言葉にまた結局出来なくて。

言いたいことや言えないことや言いたくないことや言わないとダメなことやもうパンクしかけてきたらギュッと抱きしめられた。



「俺が悪かったよ。急ぎすぎた、ごめん」





(違うの)





そんな言葉を言わせたかったんじゃない。

私はまだなにも久世さんに気持ちを伝えられてない気がする。





「違います。同じ、気持ちです、私も」広い背中に腕を回して抱きしめ返す。





「私で良ければ……お願いします」



「……なにそれ」吹き出されてまた折れそうなほどに強く抱きしめられた。





「いちいちオモロいな」



「面白いって……」



どこが面白かったのか。腕の力が弱まって見つめ合うとチュッとキスされた。





「シャワーする?」聞かれて頷く。

「……させてもらえると、嬉しいです」



とてもじゃないけど、このままするのは無理すぎる。脱衣所まで連れて行かれてお風呂の使い方を簡単に聞いた。メイクは落とせないから軽くシャワーを身体に浴びた。浴びながら自分の身体を見て不安が湧き上がる。





(大丈夫かな、私。こんな体を久世さんの前に晒しても)





そもそもさっき馬鹿みたいに食べたことをひたすら後悔している。





(なにも考えず、なぜあんな量を腹におさめてしまったのか。自分が馬鹿すぎる)





それだけじゃない。





「え、何年ぶり?ていうか、カウントしてもいいの?前のことって」





思わず声になってこぼれたが、シャワーの音にかき消される。

考えても沼にハマりそうなので、もうそのことは考えないようにした。





(ボディソープ借りてもいいかな)





ワンプッシュして匂いを嗅ぐと久世さんの匂いがした。それだけでドキドキがまた復活した。





(どうしよう)





嗅覚から全身を刺激されてこれから起きることを想像するとそれだけでのぼせそうになった。







――――――――――――――――――――





脱衣所の扉が開いて不意にそちらを向くとワンピースを着た彼女が恥ずかしそうに出てきた。



「ボディソープ、借りました」少しだけ濡れた髪が妙に色っぽくて目が離せなくなる。



「……どうぞ」



どこかそわそわした様な落ち着かない感じで近寄ってこないから俺から近づく。



「緊張してる?」



「……してます」





「なんで?」



「しますよ!普通!」





(噛み付いてくるから通常運転だと思う)は、飲み込んだ。





「じゃあ少し一人になって落ち着いてて下さい」



ポンっと頭に手を置いて撫でると恥ずかしそうに見上げてくる。



「俺もシャワーしてくる」そう言うとまた顔を赤くした。





(なんか、全然慣れてない感じするな)





見た目からはそんな風にはあまり見えないのに近づくと途端にウブな反応をする。

触れたらどうなるんだろう、と内心ワクワクしてしまった気持ちは悟られないようにする。



部屋に戻るとソファに座っていた彼女は少し落ち着いたようにみえた。何も飲み物を渡してなかったことに今気づいて水を持っていく。



「ひゃあ!」頬にペットボトルを当てたら悲鳴を上げた。



「ごめん、うち水しかない」



「水、好きです」いただきます、と受け取る。





「なんか……」



「ん?」



「メールがひっきりなしになってましたよ」

開いた状態のパソコンを指差されて視線がそちらに向く。





「あー、ちょっと確認していい?」



「もちろん」



ソファから降りてパソコンに向き合ってると視線を感じる。振り向くと目が合った。





「なに?」



「家でも仕事してます?」





「んー……少しだけ」



「忙しいですね」





「どうなんだろう、要領悪いんじゃない?」



「そんなわけない」笑われた。





「家に仕事持ち帰るってそうじゃん?」



「持ち帰ってるわけじゃないですよね?」





「家でしてたら一緒」



「すごいなぁ」流れる様な会話から感心する様な声で言うから思わず手を止めた。





「いや、そこ怒っていいと思うけど」



「へ?」



「家でさ、二人でいるのに仕事してたら構ってとかなるでしょ?てか、なっていいよ」





(俺もなに仕事してんだ)





「仕事優先でいいですけど」



「それ、おかしいし」メールを閉じてパソコンの電源を落としていると彼女が呟く。





「私、仕事してる久世さんが一番好き」



「……」





「仕事してる久世さんが好きでいつも隠れて見てた。盗み見しなくていいってむしろ贅沢……んんっ!」



それ以上聞けなくて口を塞いだ。



「ん、はぁ」





「あのさ、俺のこと煽るのやめた方がいいよ?」



「……あ、おってませんけど」ソファに押し倒して彼女を見下ろす形になる。



「一応さ、我慢してたの、俺」



「……は、い」



「我慢してんの」



「……は……ぃ」



大事にしたいと思っているのに。



「煽った責任とって」



なにか言おうとした言葉をそのままキスで飲み込んだ。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

デキナイ私たちの秘密な関係

美並ナナ
恋愛
可愛い容姿と大きな胸ゆえに 近寄ってくる男性は多いものの、 あるトラウマから恋愛をするのが億劫で 彼氏を作りたくない志穂。 一方で、恋愛への憧れはあり、 仲の良い同期カップルを見るたびに 「私もイチャイチャしたい……!」 という欲求を募らせる日々。 そんなある日、ひょんなことから 志穂はイケメン上司・速水課長の ヒミツを知ってしまう。 それをキッカケに2人は イチャイチャするだけの関係になってーー⁉︎ ※性描写がありますので苦手な方はご注意ください。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 ※この作品はエブリスタ様にも掲載しています。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

処理中です...