愛を知らないAランク冒険者は最愛を手に入れる

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諦めない思い-2

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 ぬるりとした熱いモノが首筋を撫でるように這ってくるから思わず声が出た。


「ん、っぁ!」
「可愛い声で鳴くんだな、もっと抵抗しろよ。泣いて喚く女が諦めていくのが好きなんだよ……」

 趣味が悪すぎてゾッとした。そんな男に羽交い絞めにされて片腕を拘束されて首筋を舐められたのか、そう思うと吐き気まで襲ってきて不快感だけが増していく。恐怖よりもっと不快で気持ち悪い、嫌悪感……それに耐えられなくなる。がさついた手が首筋をデコルテを撫でる。その動きが嫌すぎて思わず身じろいで叫んでいた。
 

「弱い相手押さえつけてそれのどこが強いのよ!」

 悲鳴みたいに叫んで抵抗したら襟元を掴まれてひっぱりあげられたらボタンが飛び散った。その拍子に首元を掴まれる。


「……っ!」
「細い首だな」

 ぎゅうっとゆっくり力がこめられたら息が詰まりかける。はぁ、と吐きだした息が徐々に息切れのように言葉になって落ちるだけ。


「……っぁ、あ」
「お前の抵抗なんか可愛いもんなんだけどさ……発言は気をつけろよ?俺の手でお前なんか簡単に殺せる、あいつと一緒……」
 

 ――ぎゅうううっ。


 首が絞められていく。本当に、今はまだいたぶっているだけだろう。でも言葉の通り、本気を出されたら息が止まる、それを感じるんだ……殺気がある、手に、目に。


 それでも――。

 思わず手首を掴んでいた。悔しくて、言い返したくて、でも言えなくて。涙が滲むのだって悔しい。こんな手と一緒にしないで、弱いものを苦しめて楽しむみたいな手と同じ扱いしないで、それを言い返したいのに言えない自分が悔しくて……爪先に力を込めて必死で抵抗した。


「そんなに一緒扱いされたくないわけ?」
「……っ、ぅ」
「もし……あいつがまだ生きてたら、お前の目の前で殺してやろうか」

 
 ――ぎゅううう……。


 息が……視界がもうぼやけだしてきた時だった。



「誰を殺すって?」


 苦しかった首元は喉が開かれたみたいに楽になったけれどこみ上がってくる嗚咽に咳き込んだ。同時に涙が溢れて視界がやっぱり滲んで前が見えない。脳内が酸欠みたいにクラクラして事態についていけない。ただ激しい物音とうめき声がして何かが起きているのだけはわかる。


「死ぬのお前だわ」


 涙で滲んだ視界の中でさっきまで私を押さえつけていたのが嘘みたいに首を掴まれて持ち上げられている。体格なんかそんなに変わらないはずなのに、腕力の差なのか。片手で持ち上げられてる彼は掴まれている腕を必死で剥がそうとしているけれど無駄な足掻きの様に見える。それよりも思う、これは夢なのかと。目の前にいるのは本当に?これは私が見てる夢や幻?幻想ではないのか。そう思わずにはいられないほどすぐには信じられない。


(夢……?わかんない……でも……)



「死に方くらい選ばせてやろうか?お前もいろんなヤリ方知ってんだから好みもあんだろ?」
「……っ、ふ、ざけんなっ」
「ふざけてんのてめぇだろ。俺に喧嘩も売らずになにこいつに手ぇ出してんだ」
「――っ!」
「楽に死ねると思うなよ」

 そう言った金眼が本気で殺気を放っているから腕に思わず私はその腕に抱きついた。

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