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気づかなかった気持ち-2

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 言わなくてもいい言葉を投げつけた。今さら後悔しも遅いのに。


「お姉ちゃん」
「ん?」
「話が……あるんだけど」

 神妙な顔つきのエリザに不思議と心は落ち着いていた。エリザが自分から気持ちを溢そうとしてくれることが嬉しかった。やはり待っていて良かった、私にちゃんと自分の口から話そうとしてくれることが嬉しい。


「うん……なぁに?」
「……私ね……今、お腹に赤ちゃんがいる」

 自分のお腹をさすりながら俯いた状態でこぼすエリザ。不安そうだけれど、後悔している風には見えなかった。


「そっか……」
「え?怒らないの?」
「怒ってほしいの?」
「……怒られると、思ってたからびっくりしただけ」
「……エリザだってもう大人だもんね。いろんなことわかってそういうことになってるんでしょ?」

 聞くと頷く。


「結婚も……考えてる」
「え?」
「え?なんで?」

 結婚?まさかの言葉に驚きを隠せない。


「あんまりお金は持ってなさそうだけど……これから仕事も頑張るって言ってるし、本当に最近は頑張ってるし」


(ん?お金がない?すごい持ってそうだけど……物欲なさそうで案外金遣いが荒いの?)


 欲しいと言っていたミスリルソード……予想以上に高価なものを買ったのか?なんにせよ金銭的な計画性もないのかもしれない。


「口ばっかりなのかなって思ってたんだけど、なんか案外真面目だし、私のことも本当に好きって言ってくれて……ワガママとか結構言えちゃうんだよね。一緒にいて楽って言うか……」



(口ばっかり……まぁ口約束しても守らないもんな。好きとか言うんだ、ふうん……ワガママも聞いてくれるんだ、へぇ……自分こそたまに幼稚な発言とかするくせに……あっそう)


 聞いていたらだんだんムカムカしてきた。エリザの綻んだ表情を見ていると祝福したい気持ちはあるもののやっぱりどうしたって面白くない。


「先に妊娠しちゃったからお姉ちゃんに怒られるってすっごいビビッてるんだけどね」

 あはは、と笑うエリザ。一発くらいは殴ってもいいかもしれない、そんな機会でもなければあんな戦闘狂を殴れる日なんかないだろう。


「そうだね。大事な妹の未来を担っていくんだから何かしら言われても文句言えないと思うけど」
「あんまり厳しく怒んないでね?これは私にも責任はあることだし」
「どう考えても相手に責任があります!」
「ふはは!なんか久しぶりにお姉ちゃんに怒られたぁ!」

 そんな風に笑うエリザが可愛くないわけがない。可愛いんだ、可愛くて可愛くて……ずっと可愛いと思って一緒に暮らしてきた。生きてきたんだ……。


「幸せにならないと……許さない」

 お母さんと約束したの。血まみれのエリザを抱きしめながらお母さんに約束したんだよ?


 ――エリザは、私がちゃんと育てて幸せにする。


「幸せになってね」
「……ありがとう、お姉ちゃん」
「心配事、多そうだけど……考えただけで心配だけど……はぁ」
「……まぁでもこれからだし?あんまり戦闘向いてないから常時依頼をこまめにして採集や護衛とか頑張るって言ってたよ?」
「は?」
「え?」

 戦闘が向いていない?バリバリ戦闘狂じゃないか、なにをエリザは言っているんだ。

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