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夢なら覚めて-3
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お酒が入ると途端に脳がぽわっとしてくる。目の前のジルの整った綺麗な顔を見つめていたら余計にポワポワ。見つめていたら金色の眼に見つめ返されてドキドキ。感情の波が激しい。これまでの暮らしに無縁だった音が頭の中で体の中で響き出す。
フワフワして、ポワポワして。ドキドキしてキュンとなる。全部お酒のせいだ。体が熱くなるのも、鼓動が早まるのも。慣れないお酒が体をおかしくさせている。
そこに昨夜の寝不足が容赦なく私の脳に襲いかかってくるから……。
「アリス?」
ジルの声って……こんなに低くて甘い声だったっけ?
「なぁに?」
「……お前酒、弱すぎじゃね?」
そうかもしれない。飲まないとやっぱり弱くなるんだね、は言葉にできたのか脳内でつぶやいているのか。
「ジルは……強いねぇ?」
「……」
お酒が……強いのはお酒にも強かったんだね、またひとつジルの知らない一部を知った。そんなことを思いながら徐々に視界が狭まっていく。
「アリス」
ジルの声で名前を呼ばれるの……嫌いじゃない。でもそれは敬称で私の名前はアリシアだよ?知ってる?
「……アリシア」
知ってたんだ。なんだ、知っていてくれたんだ。そうなの、私、アリスじゃなくてアリシアなの。ああ、もうなんだかすごく気持ちよくて、どうしよう。
ユラユラ揺れるのは夢の中だから?フワフワしてポワポワしてあったかいのは夢だから?
でもこんな心地よい夢の中ならずっといたい。いられるならずっと……いてもいいならずっと……。だからこのまま夢から覚めなかったらいいのに。
「……」
これは夢?どれが夢?
眩しい光が差す部屋の中。部屋には見覚えがある。なんなら見慣れた自分の部屋だ。見慣れないのは目の前に端正なイケメン顔が眠っているから。
夢なら覚めて。
「ん……」
起き掛けの声はいつもより掠れてずっと甘い。一言だけで耳が震えた。震えたのは耳だけでもないけれど。
「……起きた?」
そう言って起きたのはジルの方。
「……寝不足で酒、飲むなよ?」
「……そ、そうする……」
真っ白になった頭で素直にそう返したらフッと微笑まれる。その破壊力、朝の光の中、ベッド上で微笑むジルの笑顔の殺傷力を数値化するのは不可能だ。
一瞬で私は再起不能、即死、やられた。
「俺の前でなら別に飲んでもいいよ?」
ギシッとベッドが揺れて、乾いたシーツの音が擦れる音が室内に響くと夢じゃないのだと気付かされる。
上体を起こしたジルが手を伸ばしてくる。その手が私の顔横をすり抜けてそのまま枕元に降りてきたら上から覆い被さるように視界にジルが埋め尽くされた。もう私の目の中に天井が映らない。映るのは妖艶に微笑むジルの姿だけ。
「やっぱ可愛いな、アリシア」
ああ、お願い――夢なら覚めて。
フワフワして、ポワポワして。ドキドキしてキュンとなる。全部お酒のせいだ。体が熱くなるのも、鼓動が早まるのも。慣れないお酒が体をおかしくさせている。
そこに昨夜の寝不足が容赦なく私の脳に襲いかかってくるから……。
「アリス?」
ジルの声って……こんなに低くて甘い声だったっけ?
「なぁに?」
「……お前酒、弱すぎじゃね?」
そうかもしれない。飲まないとやっぱり弱くなるんだね、は言葉にできたのか脳内でつぶやいているのか。
「ジルは……強いねぇ?」
「……」
お酒が……強いのはお酒にも強かったんだね、またひとつジルの知らない一部を知った。そんなことを思いながら徐々に視界が狭まっていく。
「アリス」
ジルの声で名前を呼ばれるの……嫌いじゃない。でもそれは敬称で私の名前はアリシアだよ?知ってる?
「……アリシア」
知ってたんだ。なんだ、知っていてくれたんだ。そうなの、私、アリスじゃなくてアリシアなの。ああ、もうなんだかすごく気持ちよくて、どうしよう。
ユラユラ揺れるのは夢の中だから?フワフワしてポワポワしてあったかいのは夢だから?
でもこんな心地よい夢の中ならずっといたい。いられるならずっと……いてもいいならずっと……。だからこのまま夢から覚めなかったらいいのに。
「……」
これは夢?どれが夢?
眩しい光が差す部屋の中。部屋には見覚えがある。なんなら見慣れた自分の部屋だ。見慣れないのは目の前に端正なイケメン顔が眠っているから。
夢なら覚めて。
「ん……」
起き掛けの声はいつもより掠れてずっと甘い。一言だけで耳が震えた。震えたのは耳だけでもないけれど。
「……起きた?」
そう言って起きたのはジルの方。
「……寝不足で酒、飲むなよ?」
「……そ、そうする……」
真っ白になった頭で素直にそう返したらフッと微笑まれる。その破壊力、朝の光の中、ベッド上で微笑むジルの笑顔の殺傷力を数値化するのは不可能だ。
一瞬で私は再起不能、即死、やられた。
「俺の前でなら別に飲んでもいいよ?」
ギシッとベッドが揺れて、乾いたシーツの音が擦れる音が室内に響くと夢じゃないのだと気付かされる。
上体を起こしたジルが手を伸ばしてくる。その手が私の顔横をすり抜けてそのまま枕元に降りてきたら上から覆い被さるように視界にジルが埋め尽くされた。もう私の目の中に天井が映らない。映るのは妖艶に微笑むジルの姿だけ。
「やっぱ可愛いな、アリシア」
ああ、お願い――夢なら覚めて。
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