愛を知らないAランク冒険者は最愛を手に入れる

sae

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夢なら覚めて-2

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 家まで着いたら玄関先でなにか言いたそうだから嫌味ついでに言ってやった。


「エリザ、怒ってた」
「あー」

 頭をくしゃくしゃと掻きながらバツが悪そうな顔。


「約束、守れなくてごめん」

 まさか私への謝罪をしてくるとは思わなかった。


「待って。私にじゃない。エリザに謝るべきでしょ?」
「え?」
「え、じゃなくって!どこでほったからしにして討伐に向かったのかは知らないけれど。エリザは楽しみにしてたんだよ?仕方ないことだけど、本人もそれは納得してたけど!でも一言声くらいかけてからでも行けたでしょ?」
「あー」

 本当に目の前のことしか見えなくなったのだろうか。戦闘狂とは恐ろしいものだ。


「また……謝っとく」
「……待つ?」
「え?」
「お腹……空いてるんでしょ?ヴェリルさんみたいに討伐から戻って仮眠して大したもの食べずに飲んでただけ?」
「……うん」

 エリザの戻りは何時かわからないけれど、友達とご飯なら21時くらいには戻ってくるだろう。ご飯を食べていたらすぐかもしれない。


「送ってくれた……お礼」
「……」
「入って?……ジル」


 誘ったはいいけれどもてなせるほど食材も豊富でもないから本当に簡単な家庭料理を並べるだけの食事になった。そもそも流れ者の彼らの故郷なども知らない。どんな風に暮らしてきたのか、踏み込みにくいことも多いが聞きたくて聞いてしまった。


「好き嫌いない?」
「んー別に?なんでも食うよ」
「好きなものは?」
「んー……食えりゃいいよ」

 作り甲斐のない返事だ。顔に出ていたんだろう、ジルはプッと吹き出して言い訳するように弁解してきた。


「違うよ、そんな食べることに楽しみとか見出してきてないだけ。何日も食えない時だってある、食えた時に食う、そういう感覚が染み付いてるから好き嫌い言ってられないってこと」
「……じゃあ、今日は好きなもの見つけて?」

 口に合うかわからないけど……そう添えて机に並べたら「うまそうー」と愛想でもない声で言われて内心喜んでしまう自分がいた。


「お酒は?」
「アリスは飲むの?」
「うーん……たまにエリザに付き合うくらい?そんなに飲めないけど……」
「アリスが飲むなら飲む」
「ええ?」

 そんな誘い方をされたら困ってしまうがなんだか気分は高揚していた。


「じゃあ……ちょっとだけ」

 ジルの金色の眼に見つめられて、二人向かい合って食べる食事の時間に少しだけドキドキして。それでも自分の家でエリザが戻ってくるという安心感が緊張感を和らげていく。久しぶりに口にしたお酒は新鮮な味がした。今まで味わっていた味とは違う風に口の中に広がって気づいたらグラスの半分を減らしていた。

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